IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》
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【第139話】
――砂浜――
作戦決行時刻の午前十一時半。
陽は高く、燦々と降り注ぐ陽光と夏の日差しに汗が吹き出る。
篠ノ之は、まだ俺が来るのが嫌なのか目も合わせようともせず、一夏の方ばかりを気にしている様子だった。
「来い、白式」
「行くぞ、紅椿」
「……村雲、展開!」
俺を含めた三人の身体は光に包まれ、その光が徐々に収束――消える頃には三人ともISを纏っていた。
「じゃあ、箒。よろしく頼む」
「本来なら女の上に男が乗るなど私のプライドが許さないが、今回だけは特別だぞ」
――じゃあえっちするとき、その胸を使ってやれないんだな……プライドの為に。
何て、バカな考えはやめて空を眺める――と。
「ヒルト、少しいいかな…?」
「ん?どうした、シャル?」
振り向くと、シャルの手に握られていたのはいつもシャルが使うアサルトライフル《ヴェント》と弾装だった。
「僕も一緒に生きたいけど、三人には追い付けないから――せめて、これだけでもヒルト、使ってくれる?」
「あぁ、なら借りるから腰のアーマーに附けてくれるか?弾装はこっちの腕部装甲に附けるから」
「う、うん!」
弾装を合計4つ受けとると、腕部装甲に装着していく。
背部腰アーマーにシャルがアサルトライフルを附けていると――。
「こほん。わ、わたくしからもこれをお貸しいたしますわ」
言うや、粒子が収束されて出てきたのは《スターライトmkⅢ》だった。
「良いのか?」
「え、えぇ。――牽制射撃に使ってくださいな」
「了解、こっちは手持ちで行くか」
受けとると、左肩に担ぐ――と、今度はラウラが。
「す、すまないヒルト…。私には渡せる武器がない……肝心な時に役に立たない私は、夫として失格だな…」
明らかに表情が暗くなるラウラ――。
「気にするなラウラ。――まあ無事に帰ってくるさ」
空いた右手でわしゃわしゃと頭を撫でると、落ち込んでいたラウラも少し表情が和らいだ。
――と、篠ノ之と一夏の会話が聞こえてきた。
「それにしても、たまたま私たちが居たことが幸いしたな。私と一夏、二人が力を合わせれば出来ないことなどない。そうだろう?」
「箒、ヒルトも居るんだ。それに、これは訓練じゃない。実戦なんだ。――皆に何が起きるかわからない。だから箒も十分に注意をして――」
「無論、わかっているさ。だが有坂が居なくても私たち二人がいれば十分だろ?――ふふ、ヒルトが居ないと怖いのか?」
「そうじゃねえって。あのな、箒――」
「ははっ、心配するな。お前には私がついている。そして、ちゃんと私が運んでやる。大船に乗ったつもりでいればいいさ」
「……………」
流石の一夏も、今の篠ノ之の浮かれ具合に危惧してか何とかしようとするも、篠ノ之自身の耳には届いていなかった。
……俺が言えば、直ぐに機嫌が悪くなり――『私に負けた負け犬が、偉そうに語るなっ!!』――とドMなら喜びそうな言葉をありがたく頂戴した。
――まあ、負けたのは事実だから……後は周りの大人の指摘(織斑先生や山田先生)するか、自分で気付くかだが……難しいだろうな。
これじゃあ、篠ノ之が修羅公に……っ!
「お兄ちゃん…ちょっといい?」
「ん?どうした?」
美冬が目の前まで来て、ちらりと篠ノ之の方を見てからまた此方に視線を移すと。
「……篠ノ之さん、明らかに浮かれてるからお兄ちゃんの方でも気にかけてね?」
「……あぁ、それは後で一夏にも連絡して俺達二人で何とかしてみる」
――気を使う事が多いな…。
銀の福音パイロットも気にかけて、篠ノ之も気にかけて――。
――と、織斑先生からの通信が届く。
『有坂、オルコット、デュノア、ボーデヴィッヒ。やることが終わったのなら風花の間に戻れ』
「「「「わ、わかりました」」」」
そう返事をする四人、そして――。
「お兄ちゃん、頑張ってね?織斑君も篠ノ之さんも、無事帰ってきてね?」
「ヒルトさん、無事に帰ってくるのをここでお待ちしてますわね?――篠ノ之さん、あまり浮かれすぎないように……」
「ヒルト、僕も待ってるよ。――怪我しないでね?……一夏、篠ノ之さんの事、気にかけてね?」
「ヒルト、私は心配などしない。お前が無事に戻ってくるのは必然だからな。それに、私の嫁だ。そうそう怪我などしないだろう。――織斑、私はまだ貴様の事を許せないが……篠ノ之の事、気にかけてやってくれ」
各々がそう言い、花月荘へ戻るや篠ノ之は――。
「ふん。お節介だな、あいつら……。私の何処が浮かれているというのだ」
「「…………」」
……もう、言葉も届かないし周りも見えてないのか。
『有坂、織斑、篠ノ之、聞こえるか?』
再度オープン・チャネルから織斑先生の声が聞こえ、俺達三人は頷く。
『今回の作戦の要は一撃必殺だ。短時間での決着を心掛けろ』
――結局、最初の『ワンアプローチ・ワンダウン』という一撃必殺作戦、更に失敗した時用の作戦も無しときた。
ド素人三人で本当に大丈夫かと言われれば無理としか言えない。
せめて自衛隊の援護を取り付けれたらなぁ――幾ら空戦能力はISのが高いと言っても、火力は向こうのが上だし、最近は対IS用装備が施された機体もあるのだから無意味ではない筈だが。
「了解」
「OKだ、何とかやってみせますよ」
「織斑先生、私は状況に応じて一夏のサポートをすればよろしいですか?」
『篠ノ之、有坂のサポートもだ。――だが、無理はするな。お前はその専用機を使いはじめてからの実戦経験は皆無だ。突然、何かしらの問題が出るとも限らない』
「わかりました。出来る範囲で支援をします」
他の人が聞いてもわかるぐらい、口調は喜色に弾む篠ノ之。
残念だが完全に浮わついている印象しか残らなかった。
――と、織斑先生からのプライベート・チャネル回線が開いた。
『――有坂』
『……何でしょうか?』
『織斑にはいましがた伝えたが、篠ノ之は周りから見ても浮かれているのがわかる。あの状態だと必ず何か仕損じるやもしれん。……一夏と共に、ヒルト、お前も篠ノ之のサポートをしてやってくれ』
『OKだ、気にはかけますが俺はアイツから嫌われてますからね』
『それはわかっている。――あいつは、小さい頃に他の男子から苛められていてな、その時に一夏が助けてやってな。――まあお陰で私は、怪我をさせた子達の親に謝罪に行ったがな…』
『……成る程。俺も子供の頃はよく喧嘩してましたからね。それを聞くと俺も何だか申し訳ない気持ちになりますよ』
『ふふっ、それは悪かったな。――すまないな有坂、お前の父親の作戦をとらなくて』
『……まあ、織斑先生が最終判断下すのですから仕方ないですよ。――織斑先生、もし可能でしたら、自衛隊かセシリア達の増援を送ってください』
『……わかった、何とかしてみよう。頼むぞ、有坂』
そう伝え、織斑先生は直ぐにオープン・チャネルに切り替えて号令をかけた。
『では、始め!』
その言葉を合図に、一夏は篠ノ之の背に乗り、俺はスラスター及びブースターのシステムオンラインと同時に点火――。
母さんが言うには、少し過敏になったらしいが……何とかするしかないな。
まだ多少不安は残るが、俺達三人は上空300メートルまで飛翔し始めた――。
後書き
何とか書けた
だが朝五時からの始末
偉いこっちゃ
という愚痴っす
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