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IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》

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【第132話】

――IS試験用ビーチ――


まだ少し痛む腹部を撫でながら、俺はセシリアが何をしに向かったのかが気になり、様子を見た。

――さっき、俺がやられたのをセシリアは知らない。

何故知らないかと言うと、ラファール・リヴァイヴ用のパッケージが満載な各種コンテナが死角となり、上手くセシリアの視界には入らなかったようだ。

それでも、何かがあったという事には気づいているような素振りを見せていたが、先に用事の方を優先しようとしてる風に見える。

――何だろうか?

距離はそれほど離れていないため、言葉が聞こえてくる――。


「あ、あのっ!篠ノ之博士のご高名はかねがね承っておりますっ。もし良ければ私のISを見ていただけないでしょうか…!?」


離れた場所からでもわかるぐらい、セシリアは篠ノ之博士を前に興奮していた。

目もキラキラと輝かせ、まさに憧れの人を見るような眼差しで――だが、そんなセシリアに対して言った言葉は辛辣だった。


「はあ?誰だよ君は。さっきの銀髪といい…金髪は私の知り合いにいないんだよ。そもそも今は箒ちゃんとちーちゃんといっくんと数年ぶりの再会なんだよ。そういうシーンなんだよ。どういう了見で君はしゃしゃり出てくるのか理解不能だよ。っていう誰だよ君は」


冷たい口調に冷たい視線――いきなりの口調の変化に、セシリアもたじろいでいた。


「え、あの……」

「うるさいなあ。あっちいきな――」

「おい、そこの馬鹿。ちょっといいか?」

「あ……ヒルト、さん…」


流石に、あの断り方にイラッとした俺は思わず口を挟んだ。

――今回に関しては、セシリアも空気を読まずに話しかけたのも悪いが、それ以上に人としてあしらい方が悪すぎる。


「……銀髪か。君もしつこいね。まだ痛い目みないとわからないかなぁ?それと、【天才】の束ちゃんに向かって馬鹿っていうのは笑えちゃうな」

「天才か知らんが、俺には馬鹿にしか見えん。――今回は確かにセシリアが悪いが、幾らなんでもその断り方は無いだろ?見てやる事が出来ないなら、出来ないなりに断り方ってものがあるはずだ」


俺の言葉に表情を変える篠ノ之博士。

俺がこいつに嫌われるのは別に何の問題も無いが――てか普通、一夏が咎めないか?

まがりなりにも一夏もセシリアから操縦を学んだ筈だ、篠ノ之博士に頼むことは出来なくても今の言葉を咎めることぐらいしてもいい筈だ。


「……さっきから君は一体、何なんだい?箒ちゃんに専用機を渡せば文句を言い。今の金髪をあしらえば文句を言い――何様のつもりだい?」

「言っただろ?一年一組、クラス代表の有坂ヒルトだ。例えあんたがIS開発者で有名人だろうが、俺にとってはそんなこと【どうでもいい】。この場に来るのに許可も取らない、代表候補生でもない篠ノ之に専用機を渡す。例え、篠ノ之があんたにおねだりしたとしてもそこは断るべきだ。そしてセシリアへの断り方だって――」


喋ってる途中、突然横やりを入れられた。


「有坂、もうそこまででいいだろ」


――横やりを入れたのは織斑先生だった。

口調はいつも通りで、腕組みをしながら真っ直ぐ俺を見ていた。

――これ以上言っても無駄だと、織斑先生の目が語っていたので、俺も言葉を続けることを止めにした。


「……わかりました。セシリア、行くぞ?」

「え、えぇ……」


俺は促すと、セシリアの手首を掴み、その場を離れる――。

と、後ろからわざわざ聞こえるように。


「ふー、変な金髪と銀髪だった。居なくなって清々したよ。それよりさー、いっくん――」


そんな感じで会話が聞こえたが、無視して進んでいく――と。


「あ、あの……ヒルトさん?」

「悪いなセシリア。母さんに見てもらえ。あいつなんかよりも、母さんの方が丁寧に見てくれるし、な?」

「あ――は、はいっ」


そう俺が伝えると、少し困惑していたセシリアの表情が明るくなった事に安堵した。

ISを作った篠ノ之博士とは違うが、母さんだってISの開発者なんだ。

そんな風に考え、母さんの元へと着くと――。


「ふふっ、ヒルト。派手に口喧嘩してたわねぇ」


来るのは見えていたので、柔らかな笑みで出迎える母さん。


「……いや、だってあれは許せないだろ?特に篠ノ之の専用機……何の努力もしてない奴がいきなり最新型の専用機――誰も納得出来ないし、余計アイツが孤立するって」


――篠ノ之に厳しい事を言ったが、正直これは起こりうる事態だ。

しかも、アイツ本人がおねだりしたのだから一段と質が悪い。


「そうねぇ……。ヒルトと織斑君は特例だから皆もそこそこ納得はしたと思うけどあの子はねぇ……。どうしても467機しか存在しないし、しかも内訳最低150機は打鉄、またはラファール・リヴァイヴですから…篠ノ之博士には、もう少しコアを学園用に作ってくれるといいんだけどねぇ…」


そんな感じで軽くため息をつく母さん。


「まあそれでさ、話は変わるが訊いていたならわかると思うけど、セシリアのブルー・ティアーズ。母さんが見てくれないか?」

「もちろん良いわよぉ?……でも、セシリアちゃん。よく考えてから…ね?一応その機体、イギリスの試験機だし」


試験機――イギリスの威信をかけた次世代機だからだろう。

よくよく考えると、部外者の母さんが触るのはまずいかもしれない――少し浅はかだったか。

そんな風に思っていたが、セシリアは全面的に母さんを信用しているようで――。


「その事でしたら、わたくしはお母様を信用致していますので――お願いします」


そう頭を下げるセシリアを見た母さんが――。


「わかりました。……じゃあセシリアちゃん、ブルー・ティアーズ…展開してねぇ?」


返事をすると、また優しく微笑む母さん――セシリアも笑みを浮かべてISを展開した。


「さて、クサナギの前に戻るか――母さん、あれ、どうやって纏えばいいんだ?」

「簡単よ?村雲で触れて、そこからハイパーセンサーにクサナギの前面装甲展開の項目出るからそれを押して、後はISに乗る感覚でやると自動的にフィッティングされる様になるわよ?――操縦方法は、わかるわね?」

「――ISと同じならわかるよ」


それだけを告げると、笑顔で応え、セシリアのISにコードを差し込むと空中投影ディスプレイが浮かぶ――。


「うふふ、一応地上戦も可能だけど少し重いから空の方が機動力は高いわよ?使ってるスラスターも背部ブースターも、出力がダンチだから――試合には使えないから、何か重機を使わないといけない時とかは役に立つわよ♪」


「成る程――でも、それだと何でマニュピレーターにビーム砲が付いてるのかがわからんようになるが」

「一応瓦礫破砕用よ?出力を絞れば破片を細かく出来るし、戦うためだけじゃなく、使い方によっては役に立つ――その為につけたのよ」



それでもやっぱり戦う用にも出来るのか……。

まあ、人間が扱うとどんなものでも人を傷つける道具になるが。


「要は使う側によって違うって事だな。――じゃあ、戻ってるよ」

「ええ、わからなかったらまた聞きに来なさい」

「ヒルトさん、また後程…」

「あぁ、もうアイツが言ってたことは気にするなよ?」


言うや、俺は砂浜を駆け足でダッシュして戻る――。

途中、嫌でも篠ノ之博士の前を通らなければいけないが――まあ別にいいか。

そんな感じでちょうどその篠ノ之博士の横を駆けていくと――。


「んじゃ、試運転も兼ねて飛んでみてよ。箒ちゃんのイメージ通りに動くはずだよ」

「ええ。それでは試してみます」


そんな感じの話を背中できき、連結されたケーブル類が外れる音が聞こえる――刹那、篠ノ之の専用機が飛び立つ音と共に、その風圧がもろに周りに被害を出した――ついでに、一夏の驚く声もおまけで。

被害は、軽い機材が落ちる程度だが――この姉妹、もう少し周りを見れないのか?

村雲を展開し、クサナギに触れるやハイパーセンサーに項目として新たに出てきた。


「どうどう?箒ちゃんが思った以上に動くでしょ?」

「え、ええ、まぁ……」


オープン・チャネルによる会話が飛んでくる。

……プライベート・チャネル使ってくれよ、これも二人が周りを見れてない結果だろう。

他の生徒は、テストしないといけないのに気になるのか皆が篠ノ之の【紅椿】を見ていた。


「じゃあ刀使ってみてよー。右のが『雨月』で左のが『空裂』ね。武器特性のデータ送るよん」


そう言い、篠ノ之博士は空中に指を踊らせる――。

武器データを受け取った篠ノ之は、二振りの刀を同時に抜き取る――。


「親切丁寧な束おねーちゃんの解説つき~♪雨月は対単一仕様の武装で打突に合わせて刃部分からエネルギー刃を放出、連続して敵を蜂の巣に!する武器だよ~。射程距離は、まあアサルトライフルくらいだね。スナイパーライフルの間合いでは届かないけど、紅椿の機動性なら大丈夫」



篠ノ之博士の解説に合わせて、篠ノ之が尽きを放つ。

そして、右腕を左肩まで持って構え――そこから突きが放たれると同時に、周囲の空間に赤色の粒子が光の球体に収束、それが順番に光の弾丸となって空に漂う雲を穴だらけにした――この辺りは航空機飛ばないからまあ多分大丈夫だろう。


「次は空裂ねー。こっちは対集団仕様の武器だよん。斬撃に合わせて帯状の攻性エネルギーをぶつけるんだよー振った範囲に自動で展開するから超便利。そいじゃこれ撃ち落としてみてね、ほーいっと」


言うなり、篠ノ之博士は迷惑を省みず、何と十六連装ミサイルポットを呼び出す――光の粒子が集まり、形成されるや一斉射撃――だがおよそ空中100メートル程の所でミサイルが爆散――破片もレーザー射撃によって全て灰になって消えていく。

篠ノ之も他の皆も何が起きたのか解らず、ぽかんとしていると篠ノ之博士が――。


「……またお前か銀髪、箒ちゃんの邪魔ばかりして!」

「……………」


そう、俺が犯人だ――というか、迎撃モードでオンラインになっていた八式・天乃御柱による自動迎撃の結果なんだが。



「どうもすみません、お邪魔して。システムはもう切っていますのでどうぞ迷惑がかからないようにテストを続けてください」


そんな感じで平謝りする俺の態度が気に入らなかったのか、突如――。


「……ふーん。お前、いい度胸だな。――箒ちゃん、今から模擬戦の準備――相手は、あの銀髪だ」
 
 

 
後書き
次回模擬戦

時間かかるかもですからまったりお待ちくださいませ 
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