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IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》

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【第138話】

――風花の間――


「話を戻すぞ。……束、紅椿の調整にはどれくらいの時間がかかる?」


「「お、織斑先生!?」」


奇しくも、俺と同じように声をあげたセシリア――。


「織斑先生、親父の作戦ではなく篠ノ之博士の作戦で行くのですか!?」

「そ、そうですわ!そ、それに、わたくしとヒルトさんが組めば第一波として、必ず成功させますわ!」

「有坂なら第一波は可能だが、お前はパッケージを量子変換してあるのか?」

「そ、それは……まだですが……」


セシリアはまだパッケージインストールしていないらしく、勢いを失いその言葉が少しずつ小さくなっていった――と、入れ替わる様に篠ノ之博士が笑顔で口を開いた。


「ちなみに紅椿の調整時間は七分あれば余裕だね★」


そう言ったのを聞き、織斑先生は少し悩むように腕を組む。

――てか悩む必要ないだろ、三段構えで行く方が絶対成功率高いし。

親父をちらっと見るが、あくまでも織斑先生が責任者の為かその判断をただ見ているだけだった。

――と、結論が出たのか織斑先生が決めた作戦は……。



「よし。では本作戦では織斑・篠ノ之の両名による追跡及び撃墜を目的とする」

「お、織斑先生!?本気ですか!?まだ専用機持ちの皆ならいざ知らず、俺と同じど素人も良いところな一夏と篠ノ之の二人だけに任せるって!」


流石に俺の言葉に、怪訝そうに表情を変える篠ノ之。

織斑先生は――。


「もう決めた事だ、有坂。お前も準――」

「なら、俺も作戦参加を希望します。俺が入っても大した足しにはならないかもしれませんが、二人よりかは三人の方が確実です」


そう言った俺に対して、真っ向から否定するのは篠ノ之だった。


「私は反対です。有坂等居るだけ邪魔です。私と一夏の二人だけでこの作戦、やり遂げます」

「……邪魔でも、弾除けぐらいにはなる――織斑先生がダメだと言うのなら自分は辞退します」


それだけを告げ、俺は目を閉じた。

――篠ノ之、俺に勝ったからか増長してないか?

……負けたのが裏目に出たのか…でも、避けていたら今頃怪我人出ていたかもしれないし。


――結論ついたのか、織斑先生が口を開いた。


「……わかった。では有坂・織斑・篠ノ之の三名で本作戦を決行する。作戦開始は三十分後。各員、直ちに準備にかかれ」


言うや、手を叩く織斑先生。

それを皮切りに、場に居た教師陣はバックアップ用の機材の設営を始める。

親父も、その叩く音を聞いて直ぐ様母さんの元へと向かい、何か話をしてから親父は風花の間を出ていった。

……怒ってはいないだろうが…気分はよくないだろうしな…。


篠ノ之は、織斑先生の判断に不服なのか、不機嫌そうな表情を浮かべるも、直ぐに元の篠ノ之の表情に戻った。



「手が空いている者はそれぞれ運搬など手伝える範囲で行動しろ。作戦要員はISの調整を行え。もたもたするな!」


そう怒鳴る織斑先生――と、母さんが俺に近づいてきて。


「ヒルト、村雲の調整しましょうかぁ~」

「あ、あぁ。――母さん、親父は…?」

「うふふ、あの人ならトイレに行くって言ってたわよ」


トイレ…?

怒っていないならいいが。

とりあえず村雲を展開し、セットアップとエネルギー残量を調べる。

……エネルギーはさっきの模擬のままだから補給しないと、セットアップも――。


「美冬ちゃん、未来ちゃん、手伝ってくれるかしらぁ?」

「あ、うん」

「わ、わかりました」


そう言って此方に近付く二人。


「村雲の背部にプロペラント・タンクを二本増設するから、良いかしらぁ?お母さんは――村雲のリミッター上限を上げる作業を先にするから♪」


言うや、村雲の装甲を開き、ケーブルを繋ぐ母さん。

美冬と未来は、量子化された母さんの機材から補助アームを取り出し、風花の間を後にした。

――外にプロペラント・タンクがあるのだろう。


「ヒルト、村雲の事は母さんに任せて、セシリアちゃんやシャルちゃん、ラウラちゃんに高速戦闘のレクチャーを受けてきなさい」

「わかった。母さん、村雲の事任せたよ」


前面装甲を開き、村雲から出ると落ち込み気味のセシリアに声をかける。


「うぅ……せっかくヒルトさんと一緒に作戦要員に選ばれると思いましたのに……ですが、ヒルトさんのお母様にブルー・ティアーズを見ていただけたのだけは一歩リードですわ…♪」



そんな感じで途中、嬉しいのか表情が緩むセシリア。


「よう、少し良いか?」

「はい……?――きゃあっ!?」

「……!?」


俺がいきなり声をかけたのが原因か、びっくりしたセシリアは小さく飛び上がる。

――その拍子に、運搬していた小型のモニターが腕から抜け落ちた。


「……っと、セシリア危なかったな、落としてたら怪我してたぞ?」


女子には少し重い機材だが、俺にとっては軽い小型モニターを抱えたままセシリアの身を案じる。


「ど、ど、どうなさいました?わ、わたくしに用かしら……?」

「あぁ、母さんに言われてな。確かさっきセシリアが言ってたが高速戦闘の経験あるんだろ?教えてくれないか?」

「そ、そうですか!」


そう言ったセシリアの表情は明るくなり、まるで蕾が花開く様な――そんな華やかな笑顔を見せた。

――一夏の方も、鈴音が高速戦闘のレクチャーをしているようだった。


「こ、こほん。それでは高速戦闘のアドバイスをします。ヒルトさん、超高感度ハイパーセンサーを使用した事は?」

「んー、確か使った事はないはずだ」


正直に告げる、嘘をついても仕方がないのだから――。


「そうですか。ではまずその注意からさせていただきますわね?高速戦闘用に調整された超高感度ハイパーセンサーというのは、ご使用なされれば解りますがまるで世界がスローモーションに感じますの――とは言いましても、最初の方だけですが――」


いつものように腰に手を当て、様になるポーズで説明し始めたセシリア。


「――何故、スローモーションになるかと申しますと――」


そう説明を続けるセシリアの横から、シャルが――。


「ハイパーセンサーが操縦者に対して詳細な情報を送るために、感覚を鋭敏化させるんだよ。だから、逆に世界が遅くなった様に感じるって仕組みだね。でも、最初だけだからヒルトも直ぐに慣れるよ」


「しゃ、シャルロットさん……?わたくしの説明の途中で――」


そう言うセシリアの言葉を遮るように今度は――。


「それよりも注意するべきはブーストの残量だな。ヒルトは瞬時加速は使えないが、基本姿勢制御によく使うからな。――高速戦闘状態ではブースト残量にいつも目をやるんだ。普段の倍近い速度で減っていくからな」

「ら、ラウラ、さん?わたく――」


何か言おうとするが、それもまた横やりが入り――。


「後は通常時よりも相対的な速度があがっているために、射撃武器のダメージが大きいんですよ。当たり所が悪いと、一発でアーマーブレイクしますので、気をつけてください――って、有坂君のISの装甲は硬いですから無用な心配ですね」

「山田先生まで……っ。――あぁもぅっ!どうして皆さんわたくしの邪魔をしますの!?」


何度も横やりが入り、遂に怒りを表すセシリア。

少しプルプル震えていた。


「そんなに怒るなってセシリア」

「お、怒りたくもなりますっ!」

「ははっ、何にせよセシリア。色々教えてくれてありがとう。まだ何か注意する点や、何処か気になる所があるなら教えてくれると助かるよ」


そう告げると、怒っていたセシリアも目をぱちくりさせ、次第に表情が和らいでいった――。



「え、えぇ。――このくらいはお安いご用ですわよ?わたくしはイギリス代表候補生セシリア・オルコット。わからないことがあればいつでもヒルトさんに教えてあげますわ」


そんな感じでいつものセシリアに戻る。

――セシリアって何だかんだど俺が言えば機嫌良くなるな。


「……とりあえず、要は俺、または一夏だな。……本当なら俺ら何かよりは皆が対応する方が確率高いんだが」

「……そんなことないよ、ヒルト?まだヒルトと出会って一月と少しだけど、ヒルトは凄く上達してるよ。現に……さっきの模擬戦だって、僕達に気を使わなければ勝てたよ?」

「そうだな。――私と初めて対峙した時と比べても、反応速度、周辺視野等が遥かに上がっている――自信をもっていいだろう」


そんな感じでシャル、ラウラが誉めてくるのに何だか気恥ずかしくなる。

――お世辞だとは思うが、言われて嫌な気分にならないのは……何でだろうな。

ただ、こうして皆が俺の周りに集まるのは凄く嬉しく思う。

絆――っていうのかな。

村雲の方を眺めると、既に帰って来ていたのか美冬と未来がプロペラント・タンクの増設を始めていた。

――不安な気持ちはあるが、やるだけやって……助けないと、暴走するISからパイロットを。 
 

 
後書き
三段構えじゃないΣ(゜∀゜ノ)ノ

だから警備がザルになるのだ

 
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