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IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》

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【第119話】

――旅館花月荘前――


目的地に到着し、俺達一学年生徒は皆バスから降りる――。

冷房の効いたバスとは違い、照りつける夏の陽射しが容赦なく降り注ぎ、皆が一様に暑いだの早く中に入りたいだのと言っていた。

そしてクラス順に整列すると、織斑先生から――。


「それでは、ここが今日から三日間お世話になる花月荘だ。全員、従業員の仕事を増やさないように注意しろ」

「「「よろしくお願いしまーす」」」


織斑先生の言葉の後に、一年生全員で頭を下げて挨拶する――。

そして、この旅館の若女将――だと思うのだが、その女将さんが丁寧に御辞儀をし、挨拶を返した――。


「はい、こちらこそ。今年の一年生も元気があってよろしいですわね」


そう笑顔で応える若女将さん、年齢はわからないが多分二十代後半から三十代前半といった所だろう。


「それともう一つ、今回の臨海学校に随伴していただく事になったIS関係者の二人を紹介する――有坂真理亜博士とそのボディーガードの有坂陽人さんだ。――それではお二人とも、よろしくお願いします」

「うふふ、わかりましたぁ」

「俺は関係者じゃねぇんだが――まあお嬢ちゃん達に覚えてもらえる良い機会だし、いいか!ワッハッハッ!」



そんな親父の笑い声を聞いた一年生女子一同はぽかんとしたまま、前に出てきた親父と母さんを見ていた。


「ただいまご紹介に預かりました。初めての方も初めてじゃない方も初めましてぇ。今回、無理言って臨海学校に随伴させていただく事になりました、有坂真理亜です。皆様、よろしくお願いしますねぇ」


そう言い、一礼をする母さんに続いて親父が――。


「よぉ、お嬢ちゃん達!俺は有坂陽人、有坂真理亜のボディーガード兼夫だ。短い間だがよろしく頼む!特に何か困った事があったら『お兄さん』である俺に言いな!大体は解決するぜ!ワッハッハッ!」


――親父、確かに『お兄さん』に見えるが年齢は――。


「こら、ヒルト!俺は『二十歳』だって何度言ったらわかるんだ?」


名指しで怒られた為、一年生女子一同の視線が一斉に俺へと集まり、四月の時以来、視線恐怖症になりそうになった――と。


「ねぇねぇ有坂くん?もしかしてもしかしなくても――あの二人って――」

「……親父と母さんだよ」



「えぇっ!?……有坂くんのお母さんって凄く若く見えるんだけど…」

「……若いからな、てか気になるなら悪いが母さんに直々に訊いてくれ」


そう言い、前へ向き直す――周りからは有坂くんのお母さんって若いだの、何か美容法があるのかな等と聞こえてくるが――。

親父には触れられてないせいで若干親父がクスンと今にもハンカチを噛み締めそうな感じだ――。

しかも何気に『二十歳』発言までスルーされてるし……。


まあそれはとりあえず置いておき、ふと視線を若女将さんに向けると目が合い――。


「あら、此方の御二人が噂の……?」

「ええ、まあ。今年は二人男子がいるせいで浴場分けが難しくなってしまって申し訳ありません」


そう深々と頭を下げる織斑先生――親父が入ってないが…この辺りもまた調整入ったのだろうか?


「いえいえ、そんな。それに、いい男の子達じゃありませんか。二人ともしっかりしてそうな感じを受けますよ」


本心かお世辞か、これに関してはわからないが挨拶をするために荷物を一旦地面に置こうとすると――。


「二人とも感じがするだけですよ。挨拶をしろ馬鹿者共」


今まさに挨拶をしようと頭を下げ始めた所をぐいっと物凄い力で頭を押さえられた――一夏共々。


「お、織斑一夏です。よろしくお願いします」

「自分は有坂緋琉人です。三日間の間ですが、出来るだけ迷惑をかけないように致しますのでよろしくお願い致します」


「うふふ、御二人共ご丁寧にどうも。清洲景子です」


そう俺達に言い、先程と同じように丁寧な御辞儀をする。

若女将――または女将だから作法は小さい頃から学んでいるのだろう、気品溢れてその一つ一つの動作に美しさを感じた。


「不出来の弟でご迷惑をおかけします」


そう言って再度一夏の頭を下げさせる織斑先生、それを見ながら荷物を肩にかけ直す。


「あらあら。織斑先生ったら、弟さんには随分厳しいのですね」

「いつも手を焼かされていますので、それに今年はもう一人手を焼かせる生徒もいますので」



言うや、ちらりと俺の方へと向く織斑先生に対して、俺自身申し訳なく頬を指でかくしか出来なかった。

――アリーナ使用時間ギリギリまで使ってるもんな、俺……アリーナを私物化しないようにって他の教師から怒られてるし。

……でも、それぐらいしないと皆に追い付けないし、クラス代表としてもダメすぎる……。

実際、クラス代表戦をもう一度行った上で全員が打鉄又はラファール・リヴァイヴ限定されると俺が最下位になるのは目に見えてる。

――正直、一夏が最初にIS乗った時に自由に空を飛べるのを見た時は正直悔しかった……才能の差ってやつをまざまざと見せ付けられた気持ちだった。

――勿論、自分に言い聞かせた――彼は彼、俺は俺だと。

……前にセシリアが俺の操縦技術は上達した――そうは言ってくれたのだが、何て言うか…俺は【村雲・弐式】の性能に助けられてるだけだとしか思えない。

性能で助けられるんじゃなく、自分の力で――。


そう思い、首のチョーカーに触れると淡く優しい緑の光を放ち始めた――。

だがそれも一瞬の出来事であり、気づいた人は誰もいない――。

――ラウラを助けたあの日から、時折こうして光を放つ事があるが何か意味があるのだろうか……?


勿論、考えても答えは見つからず、先生方に相談してみようかと思ったのだが、いつも忙しいor君一人に構っていられないと言われる。

織斑先生も、他の先生方や生徒からの色んな相談を受けていて話も出来ず、山田先生も右に同じく……。

……やはり女尊男卑だからなのだろうかとも思ったりするが――考えるのを止めよう、考えても答えは見つからない。


そう思い、考えるのを止めると同時に――。


「それじゃあ皆さん、お部屋の方にどうぞ。海に行かれる方は別館の方で着替えられる様になっていますから、そちらをご利用なさってくださいな。場所がわからなければいつでも従業員に訊いてくださいまし」


そう言うと、女子一同は「はーい」と返事をし、荷物を持つと直ぐ様旅館の中へと向かった。

何にしても部屋に荷物を置くのが先なのだろう……てか、そういや俺の部屋ってどうなるのかな?

多少不安に思いつつも、俺も旅館の中へと入っていった――。 
 

 
後書き
多少ネガティブなヒルト

チョーカーが光るのは次のステップへの兆し的なもの

単一とか第三世代兵装は若干チート気味だけど、そこはヒルト自身が(主に単一仕様)レギュレーション決めるときに使わなかったり、使えたとしても使わなかったりする。

――そもそも、ああいう必殺技的なものを乱発して俺は強いってのが好きじゃなかったりします

七巻の【絢爛舞踏】で無限にエネルギーを得て一夏に勝利して御満悦になる箒にも正直疑問しか抱かないし

作者がちゃんとレギュレーション決めとかして単一禁止とかやれば色々と――何て思ったりしますが、俺と同じ馬鹿でしょうからそれも難しいかもしれないです

最近の弓弦イズルを見たが――風格が横綱っぽくて思わず笑ってしまったりする 
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