IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》
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【第九十五話】
――1025室――
手を引かれ、シャルルと共に部屋へと戻った俺を、シャルルは早速――。
「ヒルト、僕が制服の上着、脱がしてあげるね?」
「……いや、流石にそれぐらいは出来るんだが」
そう言って断ろうとすると、シャルルが迫って――。
「だ、ダメだよ!?もし腕の筋肉傷めてたり、肩が故障してたりとかしてるかもしれないじゃん!?」
――高校球児じゃないんだが、てか肩故障してたら上がらないし。
――だが、有無を言わさないシャルルの力強い眼差しに何故だか断るに断りきれず――。
「わ、わかったって。大人しくするから……シャルルと付き合ったら、尻に敷かれそうだな、俺」
「ふぇ!?――い、いきなりそんな事言わないでよ!う、うまく脱がせなくなるよ…僕」
特別変なことを言ったつもりも無いのだが、制服のベルトを外していくシャルルの頬はいつものように紅く染まっていた。
しかし――制服の上着にベルトを巻くこのスタイルはなんだ?
中学の時はブレザーだったから脱ぐのも着るのも楽だが、この制服は色々特殊過ぎる気がする。
ベルトを外され、上着を脱がせようとシャルルは背後に回る。
そして手際よく脱がせると制服の上着をハンガーへとかけた。
「ん、これでいいだろ?」
「ま、まだダメだよ!?……上全部脱がなきゃわからないし…」
「…わかったよ。流石に脱ぐことは出来るからここは手伝わなくていいからな?」
言うや、下に着ていたシャツを脱ぐと――。
「……ぅわぁ…凄い筋肉…」
「……凄いか?普通ぐらいだろ?」
程好く筋肉がついてるだけだと思うのだが、シャルルはまじまじと上半身の筋肉を見ていく。
流石に、じっと見られるのは俺も少し恥ずかしくなり――。
「も、もういいだろシャルル?ほら、どこも怪我も無きゃ、筋肉も筋も痛めてないし、肩ももちろんあがる。それに青アザもないし傷も無いだろ?」
片腕をぐるっと一回回して見せ、もう片方の腕も同じように回して見せる。
「で、でもヒルトが実はやせ我慢してるだけで痛いかもしれないじゃん!?」
……いや、本人が痛くないって言ってるんだけどなぁ…。
しかし、何故そこまで必至に言うのだろうか?
筋肉見たいとか?
……いや、特別今初めて見せた訳じゃないしなぁ…。
わからん、こればかりは俺にもわからん。
――と、控えめにドアを叩く音が聞こえた。
「ん?こんな時間に誰か来るって珍しいよな…誰だろうか?」
「う?――そ、そうだね、とりあえず出るとわかるよ、ヒルト?」
「それもそうだな」
そう言うや、ドアノブを回し、ドアを開けるとそこに居たのは――。
「……ひゃっ!?ご、ごめんなさい~」
「は?……山田先生、何で謝るんですか?」
居たのは山田先生だった、ドアを開けて俺を見るや、慌てて視線を反らして赤くなった顔を両手で覆うように隠した。
「あ、有坂君、出来れば上着を着ていただけると……」
「……成る程、シャルル?適当にシャツをくれないか?」
「あ、う、うん――これでいいかな?」
そう言って投げ渡されたシャツは先ほどまで着ていたシャツだった。
――てかえらく早かったな、取ってから渡すの。
まるで今持ってたぐらいに――まあ元からシャルルは俺に渡そうと思っていて、手に持っていたと思う。
渡されたシャツを着るとホッと胸を撫で下ろす山田先生――そして。
「そういえば山田先生、事情聴取お疲れ様でした。ピット口破壊したのが何故俺になったのかだけは非常に疑問ですが…」
「お疲れ様です。えーっと…学園上層部判断ですね。…織斑君が壊したとなれば、姉である織斑先生の評価が下がることを懸念した結果です。ごめんなさい、有坂君」
「……わかりました。まあ今さら俺の評価が下がっても大したこと無いですし」
――この理由は、アリーナの使用時間ギリギリまで使ってる俺が悪いのだから仕方がないのだが、そのせいで他の先生方の評価が低い…てか小言言われてる。
だから俺を庇う先生方も少なくて、学園上層部もスケープゴートにしやすいのかもしれない。
……山田先生と織斑先生は、担任と副担任だから文句は言わないのだが…多分俺のせいで主に山田先生は色々言われてるかもしれない。
――まったく関係ないのだが、ごめんなさいと山田先生が謝ったときにちらりと胸の谷間が見えたのは正直ラッキーだと思った。
いつものようにゆったりとした服を着ているのだが、やはり前に屈む行為や頭を下げるといった事をすると見れるようだ。
――と、そんな俺の考えを察知したのかシャルルが。
「……ヒルトのスケベ…えっち……」
そう俺にだけ聞こえるように呟き、右脇腹をつねられてしまった。
「……ぎゃ…!?」
「?…有坂君、どうかしました?」
いきなり小さく悲鳴を上げた俺を見て不思議に思ったのか、聞いてきた。
「な、何でもないです。山田先生、気になさらずに」
「そうですか。それよりも有坂君、デュノア君、朗報です!」
小さくガッツポーズをする山田先生、その時に豊満な乳房がぶるん……っと揺れたのを見逃さず、心の中でガッツポーズした。
もうその『揺れるおっぱいが一番の朗報です!』――と思えるぐらい眼福だった。
そんな俺の考えを他所に、山田先生は言葉を続けていく。
「なんとですね!遂に遂に今日から男子の大浴場使用が解禁です!」
そうオーバーアクション気味に言った山田先生を他所に、俺とシャルルは互いに顔を見合わせるだけだった。
「あ、あれれ?おかしいですねぇ…。織斑君は凄く喜んでいましたのに……はぅ」
オーバーアクション気味に言ったのが今更恥ずかしくなったのか、心なしか山田先生が小さくなったように見えた。
それはさておき、風呂が解禁か…。
「何で急に大浴場が解禁になったのですか?」
若干涙目でおろおろしながら小さくなっていた山田先生に聞いてみると――。
「え、えーっとですねー。本来なら昨日が大浴場のボイラー点検だったのですが業者の手違いで今日、点検になったのですよ。それで点検は既に終わりましたので、それなら男子の三人に使ってもらおうっていう上層部の粋な計らいってやつなんですよー」
……粋な計らいねぇ…まあどっちにしろ今日は風呂って気分じゃないな。
「山田先生、せっかくですが俺は今回遠慮しておきます」
「あ、あの…僕も遠慮します。お風呂って苦手なので…」
――と、シャルルも風呂を断った。
当たり前だがシャルルは『女の子』、風呂に入る=一夏にバレるの構図が出来、強制送還だからな…。
「えぇっ!?こ、困りましたねぇ…。織斑君が入るからてっきりお二人も入るものだと思ったのですが…」
「すみません山田先生…って事で一夏にもそう伝えてください。後、『わざわざ誘いに来るなよ』ともお願いします」
「わかりました、では今日は織斑君だけがお風呂ということで」
「はい、山田先生すみません。わざわざ部屋まで来ていただいたのに…」
「ごめんなさい、山田先生…」
「気にしないでください有坂君、デュノア君。これも先生の役目ですから、えっへん」
そう胸を張る山田先生、またも胸が揺れたのを見られて俺はそれだけでも満足だった。
それはそうと、まだ一つ気になることがあるので山田先生に訊いてみる事にした。
「山田先生、ラウラの処遇はどうなるのですか?」
「それについては答える事が出来ないので……一応重要案件で、その上機密事項扱いですから――ですが、ボーデヴィッヒさんの処遇は軽くなると思いますよ?」
「そうですか…。もし、問題が大きくて退学ってことになるのだったらその罪を俺に被せてと思ったのですが…」
「……有坂君は本当に優しいんですね。先生は感心しちゃいます」
「……優しい訳じゃないですよ、彼女には仲間だ友達だと言って結局助けになれなきゃ意味がないと思いますし…」
そう言う俺を、柔らかな微笑みで見つめる山田先生。
「あ、すみません山田先生、引き留めてしまって…おやすみなさい」
「いえいえ…では有坂君、デュノア君。今日はお疲れ様でした、おやすみなさい」
「はい、山田先生も遅くまでご苦労様でした」
折り目正しく、ぺこりと頭を下げた山田先生を見送ると俺とシャルルはドアを閉めた――と、シャルルが。
「ヒルト、よかったの…お風呂?」
「ん?あぁ、別に風呂に入らなきゃ死んじゃうって訳じゃないからな。シャワーで汗を流せれば問題ないし」
――まあサウナが気になる所だが、入る機会があればでいいしな。
後は…一夏のホモ疑惑もとい、もしかしたら二刀流というバイセクシャルな可能性もあるのだから身の危険を感じるのも事実。
――いや、そんな風に迫ったら流石にISを私的に使って展開して殴るが、罪に問われるより貞操の危機を守る方が大事だし。
俺の周りの男友達でそんな奴はいないからな…一緒に銭湯に行ったこともあるが、普通にゲームの話やらあの子のおっぱいでかくね?的な話とかその他色々。
そんな会話だけなら何ら問題ないんだがな、これが。
「さて、親父や母さんにメール打ってからシャワー浴びるかな。いつまで居るのかちゃんと聞かないといけないし」
「そうだね。せっかく家族が揃ったんだもんね?」
「おぅ、まあ多分美冬や未来の誕生日まではこっちに居ると思うがな――と」
ぱぱっとメールを打つと、そのまま送信してシャワーを浴びる準備を始める。
――と、シャルルが口を開く。
「そ、そういえばヒルトと美冬さんって双子だよね?――た、誕生日っていつ?」
「ん?俺の資料見てなかったのか、シャルル?」
「み、見たけどほとんど黒く塗り潰されてる箇所ばかりで――家族構成とかは潰されてなかったけど身長や体重とか、誕生日は真っ黒だったんだよ」
――秘匿されてるのか、俺の情報…。
てか家族構成塗り潰せよ、体重とか秘密じゃないんだし。
「まあ別に秘密じゃないから言ってもいいか。俺と美冬、未来は同じ誕生日で七月八日さ、七夕の次の日だな」
「そ、そうなんだ。……いつも三人で祝ってるの?」
「夜は一緒に祝ったな、夕方は互いの友達が来て祝うかメールがくるかのどっちかだったな――さて、先に使わせてもらうぞ?」
「う、うん――ごゆっくりっ」
「……?」
何故か顔が急に赤くなっていたシャルルの表情に疑問を抱きながらもそのまま俺は脱衣場兼洗面所へと入っていった――。
後書き
――シャワー室の話です。
それだけです、露骨なエロにならないようには気を付けます、自信ないですが。
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