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IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》

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【第404話】

 
前書き
お待たせた

期待できるかどうか 

 
 繰り広げられる空中戦、まだ始まったばかり――。

 身を守る術の無い俺は、セシリアを抱き抱えて皆の居る場所へと走って向かった。


「お兄ちゃん、セシリアは大丈夫なの!?」


 気絶したセシリアを見て声を荒げる美冬、さっきの貫通した刃の一撃を見ての慌てぶりだろう。


「あぁ、だが出来るだけ早く学園の医療施設か近くの病院で活性化再生治療を受けないと、腕に傷が残るな……。 鈴音の方はどうだ?」

「鈴は意識を失ってるけど、呼吸は正常よ。 ……でも、出来るだけ早く連れ出さないと。 本当なら担架が欲しいけど、多分今の状態だと担架は望めないかも……」


 未来のその声に、何とかして俺以外のメンバーの脱出はさせないとと思うが……一夏と篠ノ之の二人が、上手く目隠しにならないかと期待して空を見上げる。


「うぉぉおおおおッ!!」



 輝きを放つ零落白夜の光刃による二刀流の攻撃、左右交互に攻撃を行うが、それは簡単に捌かれてしまう。


「あぎゃぎゃ、二刀流になったからといってお前が強くなる訳じゃねぇんだぜ? 大抵の人間は刀二本持てば強いって考えるが、浅はかって奴さ」

「ッ……! てめぇ……ッ!!」


 雪片の一撃を、大剣で抑え込むとそのまま蹴りあげて叩き落とすと同時に一夏の左腕をAICで固定し、防ぐ。

 そして、その男の隙を狙い、篠ノ之はサイドからの突きによる一撃を放つ。


「もらったぞ!」

「あぎゃ? そう簡単に食らうかよ」


 切っ先がAICによって固定され、その刃が届く事はなかった――だが、刃が紅く発光し始める。



「ふん! この紅椿……そうそうテロリスト等のクズが乗るISに後れをとらん!」


 紅く発光した刃から放たれる無数の光弾が男を襲う――必殺の間合いによる一撃だが、男はその攻撃を前回見せた盾の機能で粒子エネルギーを吸収した。


「あぎゃぎゃ、その程度かい? クズのテロリストである俺様に防がれるんじゃぁな。 やはりてめぇじゃ、最新機何か使いこなせねえんじゃねぇのか?」

「抜かせッ! 紅椿は私専用の機体だ! 使いこなしてみせる! 絢爛舞踏!!」


 機体から金色の粒子を放出され、エネルギーが回復すると共に白式にもエネルギーを回復させた篠ノ之。

 一夏と篠ノ之の左右同時攻撃――だが、AICにより阻まれ、決してその一撃が届く事はなかった。


「っ……ラウラのAICより強力じゃねぇか……ッ!」

「クッ……何て卑怯な……。 正々堂々と戦えないのか、貴様はッ!」


 篠ノ之の言葉に、思わず吹き出す男――本当に可笑しいらしく、戦闘中なのに腹を抱える始末だ。


「ぷっ! ぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃっ♪ ――戦いに卑怯だ正々堂々だ何て言うなら、てめぇが今やってる二対一は一体どう説明するって言うんだよ?」

「白式と紅椿は対となって作られた存在だ! 卑怯も何も無いッ!」

「あぎゃ? ――ククッ! まさに餓鬼の理屈だな! そんな理由で二対一を正当化しようってのか? 正々堂々と戦えだ? 笑わせるんじゃねぇよッ!」


 ビリビリと空気が震える怒鳴り声と共に、動きが止まった二人に対して連続で切りつけ、距離を離す。


「テロリストに何を言っても無駄な様だな……一夏! 二人で仕留めるぞ!」

「おぅッ! 月穿ィッ!」


 最大出力で放つ荷電粒子砲――真っ直ぐ突き進むその一撃はやはり盾の機能によって吸収されてしまった。

 現状、流れ弾が来てない今の内に、俺は美冬達にアイコンタクトで指示を送る。

 殆どがエネルギー切れとはいえ、美冬達はまだかろうじて一撃は耐えられる。

 隙があれば俺以外のエネルギー切れのメンバーはアリーナに一旦退避、セシリアと鈴音を教師かクラスメイトに預けてから補給って形が理想だが――。


「あぎゃ、無駄って言うよりかはお前が自分ルール押し付けて更に聞く耳持たねぇだけじゃねぇか……。 まあいい、仮に通じたとしても平行線なのは明白だってのは分かってるんだよ、これがな」


 新たな武装を呼び出す男――その手に握られていたのはクロスボウ型のライフルに見えた。


「……あぎゃ、食らいなッ!」


 砲口が光ると、一斉に五本もの粒子ビームを放つそのライフル、一夏は直ぐにその射撃を防ごうと霞衣を前面に展開して篠ノ之を守る形で間に割って入る。


「箒はやらせねぇよッ! 亡国機業!」

「あぎゃ? ……弱い雑魚が雑魚を守るか……。 だがな、無駄な行為って奴さ!」


 放たれた五本の粒子ビーム――それがまるで生き物の様な――軌道が読めないフレキシブル射撃を行った。


「な――こいつ!」

「あぎゃぎゃ、残念ながら俺様のBT適性値は83何でな。 この程度、造作もねぇッ!!」


 五本の粒子ビームは、霞衣を避けて完全に防御を怠っていた篠ノ之の背部に直撃を浴びせる。


「クッ……姑息な……! だが、この程度の消失で私は倒れん! 絢爛舞踏、発動!!」


 コツを掴んだのか、完全に絢爛舞踏を使う篠ノ之――また金色の粒子を放出させ、一夏にもエネルギー譲渡を行った。

 ……まるで電池だな、篠ノ之は。


「あぎゃ、何度食らわせても直ぐに全回復か……。 あぎゃぎゃ、まあ別に構わないさ。 腕は凡骨、精神的に参らせてやってもいいし……或いは……」


 何かを呟きながら一夏を見る男、一夏は一夏で、武装腕をブレードに切り替え、光刃が剣の形に形成される。


「何ぶつくさ言ってんだよ! 隙だらけだッ!」


 形成された光刃で、早速斬りにかかる一夏だが、男にはその太刀筋を見極められてるためかシールドバリアーにすら掠る事すらなかった。


「くそっ! ヒラヒラ避けやがって……!」

「あぎゃぎゃ、回避は戦闘の基本だからな。 お前程度の太刀筋避けるなんざぁ、訳ねぇってな」

「ッ……! ウォォオオッ!!」


 男の挑発じみたその言葉にのせられ、表情が険しくなると共に武装腕に形成された光刃で攻撃を続ける一夏。

 だが一撃一撃が雑になり、大振り化していた。


「一夏! 手を貸――」

「アインスッ! ツヴァイッ! 拘束しなッ!」


 背中の翼から射出された羽が、篠ノ之の機体周囲に向かうと同時にその身体をAICで固定させた。


「クッ……こんなのを使って戦うとは、男として恥ずかしくないのかッ! 貴様はッ!」

「ハッ! 恥ずかしい訳ねぇだろ馬鹿。 つか元々ユーバーファレン・フリューゲルはそれを前提に作られる予定だった機体だ。 お前だって単一仕様使ってるじゃねぇか」

「てめぇッ! 余所見してんじゃねぇッ!」


 一夏の攻撃が続く中、余裕があるのか篠ノ之との問答をした男。

 時折、一夏の隙を狙って回転ノコギリの刃を当ててシールドエネルギーを削っていく――そして遂に、雄々しく輝きを放っていた零落白夜の光刃の形成が終わってしまった。


「ッ……エネルギー切れ……。 箒、回復――」


「クッ……済まない、脱け出せそうにないッ!」


 AICにより拘束され、身動きすら出来ない篠ノ之。


「あぎゃ。 幾ら回復出来るっていってもこうして回復出来る側を拘束すればお前はただのエネルギーの無駄遣いしか出来ない餓鬼にしかならないってね」

「……ッ。 てめぇ……!」


 一夏は相手を睨み、敵意を示すが男は――。


「あぎゃ、まだヤル気かい?」

「回復出来なくても、俺はまだ戦える! まだてめぇに負けてねぇッ!」

「あぎゃぎゃ……勝ち負けねぇ。 ……前回は俺様が勝ったじゃねぇか」

「へっ! 逃げ出しただけじゃねぇか」


 一夏のその言葉を聞き、言い様の知れないプレッシャーを放つ男。

 まるで全身の血が凍り付く様なそのプレッシャーに、俺の腕には鳥肌がたち始めた。


「……なら、勝ち負けをどう決めるつもりだ? 言っとくが、お前が俺の事を逃げ出したと思うのは勝手だが……あのまま戦えば、お前は俺様に殺されてたぜ?」


 感情の隠らない冷たい言葉、全身に鳥肌が立つのを感じてしまう。


「……あぎゃぎゃ。 おい、下の戦えない女は避難しな。 ……だが有坂ヒルト、お前は男だからこの場から離れるのは許さねぇ。 あぎゃ、俺様は基本良い女には優しいからな。 戦意の無い女に危害は加えねぇ。 無論、エネルギー回復して向かって来たら別だがな、あぎゃぎゃ」


 男からの突然の発言に、目を白黒させた俺だが、同時に皆を避難させるチャンスだとも思った。


「……美冬、未来、美春。 皆をアリーナの中へ。 シャル、ラウラの二人も一旦その場から退け」

「……お兄ちゃんは?」

「女だけってアイツが言ってただろ? 俺は残る」

「……! そんなっ、ヒルトを残して僕達だけ退けないよ!」


 俺の言葉にいち早く反応したのはシャルだ――機体の各種スラスターの機能はまだ回復してないらしく、動く様子すら見せなかった。


「俺なら大丈夫だ。 ラウラ、皆を連れて中に入ってくれないか? それと……もし教師陣が機体に乗ってたら、ここに増援として派遣してほしい。 自衛隊の要請も織斑先生に頼んだが、一向に打鉄の姿が見えないからな……」


 正直、既に織斑先生に連絡してからかなりの時間が立つのだが上空には全く何も姿を現さない。

 それならアリーナ内にいる教師陣達に援護を望む方が一番ましだろう……。


「……わかった。 皆、中に入って退避するぞ。 この場にこれ以上居れば、下手すると流れ弾に当たって負傷の可能性もあるからな……」


「そんなっ、ラウラ! ヒルトを残していいのっ!?」


 シャルの言葉に、ラウラは振り向くと言葉を口にする。


「……良いわけない。 だが、ヒルトまで避難を許された訳じゃない……それに、セシリアと鈴は出来るだけ早く医療施設へと送らねばならない。 ……シャルロット、この場にいる皆、ヒルトを置いていきたい訳じゃない。 それだけはわかってくれ」

「……っ。 ……ぅん」


 ラウラの悔しそうな表情に、小さく頷くシャル。


「大丈夫だ、俺は不死身だからな。 危険には変わり無いが、まあ大丈夫さ」


 ニッと笑顔でそう伝えると、あまり納得した様には見えないが、シャルは頷く。

 ――と、ここで美春が村雲・弐式から降り、機体をその場に残すと。


「……ヒルト、エネルギー少ないけど……。 村雲を使って?」

「良いのか? 確かに元は俺の専用機だが――」

「だからだよ。 今ヒルトの打鉄はエネルギーが切れてる。 仮に助けに入るなら村雲の方が確実だもん。 助けに入らなくても、織斑一夏や篠ノ之箒を背負って離脱するだけのエネルギーはあるから。 まあ二人にはキツいGが待ってるけどね」

「……わかった。 なら暫くは俺が運用するよ。 じゃあ皆、セシリアと鈴音を頼んだぞ」


 そう俺が言うと、皆力強く頷く。

 未来と美冬の二人がセシリアと鈴音を抱えて、先頭に立ってアリーナ内へ移動し、残りの三人が後に続く形で避難した。


「あぎゃ、有坂ヒルトは村雲を使うか……。 面白れぇッ! 三対一なら少しはお前ら二人よりかは勝率は上がるぜッ!!」


 冷たいプレッシャーはそのままだが、言葉の端々からは熱い感情が感じ取れる。

 村雲を纏う俺だが、篠ノ之は――。


「有坂等必要無いッ! お前は――私と一夏の二人で十分だ! ハァァアアアアッ!」


 絢爛舞踏の無限エネルギーを利用した力業でのAIC離脱、それと共に素早く一夏に触れ、エネルギー譲渡を行った。


「す、すまねぇ箒。 ……でも、ヒルトにも加勢してもらった方が良いんじゃねぇか?」

「要らんッ! 私のサポートがあれば、必ずアイツに勝てる! 行くぞッ! 男なら……そのくらいの敵に勝てなくてなんとする!!」


 活を入れるための言葉なのか、どちらにせよ俺が入るのは篠ノ之からすれば好ましくない様だ。


「……わかった。 わりぃがヒルト、そこで見物しててくれよなッ!!」


 一夏も結局篠ノ之に言い負かされた形で、再度二人で突撃を掛けていく。


「……あぎゃぎゃ、馬鹿な餓鬼どもが。 ――ワンオフ・アビリティー、起動!」


 背中の対となる翼から、莫大な粒子エネルギーの奔流が溢れ出す。

 それと同時に、突撃を掛けた二人の機体がピタリと静止――まるで、時が止まったかのように。

 其処からは一瞬だった、二人に対して、まるで閃光が駆け巡る様な連撃、なす統べなく一気に機体のシールドエネルギーを削り、回復させるエネルギーを根こそぎ紅椿から奪い去り、白式も同様にエネルギーが無くなる。


「クッ……! 馬鹿なッ! 紅椿が……!」

「ッ……」

「あぎゃぎゃ。 シールドエネルギーが無くなりゃ、お前ら二人はただの粋がる餓鬼ってだけだ」


 装甲が開くと、中から熱の隠った空気と余剰粒子が放出された――。


「……テロリストが単一仕様……! クッ……卑怯――」

「卑怯ならお前ら二人の方がだろ? 自分が良くて相手が駄目だなんて自分ルール、いつまでも通用すると思うなよ」


 その言葉に、篠ノ之は口を真一文字に結び、奥歯を噛み締める様な表情を見せたその時、フッと意識が無くなり、その場に倒れ込む。

 更に一夏も同様に、アリーナ地表に倒れ込んだ。


「……あぎゃ、まあ軽い気絶だな。 手加減してやったから、この程度で済んだんだぜ? ……手加減しなきゃ、今頃二人とも意識不明になってただろうがな、あぎゃ。 ……さて、時間は稼いだが、まだ遊び足りねぇな」


 そう言って俺を一瞥する男に、俺は村雲の武装、天狼を呼び出した――その時、観客席バリアーの一部から飛び出す黒い機体が現れた――あれは。


「……親父」 
 

 
後書き
久しぶりに風来のシレン5で遊んでた

ムズいぜ

運命の地下がまだ二回しかクリア出来ん

また更新遅れるかも 
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