IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》
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【第403話】
前書き
とりあえずエムと決着がつきます( ´艸`)
セシリアの射撃がことごとくシールド・ビットにより阻まれ、ダメージを与えられず、更に俺も攻撃を加えるがギガント・マグナムの一撃が遅い為、有効打にならずに回避されていた。
「くっ……やはり、この方は強いですわ……!」
「確かにな。 此方はエネルギーが半分ぐらいしか無いのに……向こうはまだまだある」
ごちりつつも一旦ギガント・マグナムを粒子化させ、収納すると俺は北落師門を呼び出す。
この状況で確実に一撃を浴びせられるのはこの刀のみだろう、他のハンマーや対艦刀では当てることすら難しい。
「………………」
沈黙した状態のまま、襲撃者は俺とセシリアの二人に対して、フレキシブルによる執拗な攻撃続けていく。
広いアリーナを駆け巡る様に避け、致命傷だけは避けつつも接近戦を行おうと近付けば襲撃者はシールド・ビットで俺を遮る。
セシリアがシールド・ビットを引き付けてる間に攻撃もしたが、此方は完全に引き撃ちに切り替え、機体の性能差で離されて一撃を加えられずにいた。
「ちっ……離脱速度が速いな……。 だからといって、瞬時加速の多用は出来ないし、セシリアだって消耗してるんだからあまり撃たせる訳にはいかない……!」
ライフルの連射を回避しつつ、常に空を動き回ってる為精神的に疲弊してくる。
地上も使えば良いのだが、下手に流れ弾が皆に当たるのは避けたい。
――と、ここでセシリアがあろうことか突撃をかけた。
手にはインターセプターが握られており、格闘戦に持ち込むつもりなのだろう。
接近戦で援護したいものの、二人の速度の速さに追い付けず、俺は唇を噛み締める。
機体性能が低いからとかではない、ただ……こんな時にも殆ど何も援護が出来ない自分の力の無さが悔しい。
嫌でも痛感するその思いとは裏腹に、格闘戦は続いていく。
「もらいましてよ!」
「ふん……その程度の技術か」
交差する刃、鳴り響く鋭利な音、互いに何度も切り結び、拮抗状態になったその瞬間を狙って、襲撃者はセシリアの腹部に膝蹴りの一撃を浴びせる。
「か……はっ……!?」
「……!!」
身体がくの字に折れるセシリアを、満足そうに笑みを浮かべながら更に横に回転させ、回し蹴りによる一撃を浴びせた。
きりもみする様に落ちていくセシリアを、何とか抱き抱えて救助する。
「あ、ありがとうございます、ヒルトさん」
「……今の俺には、これぐらいしか出来ないからな。 大丈夫か、セシリア?」
「えぇ……。 ですが、このままだとじり貧になるのは確実ですわね……」
セシリアの言葉通り、確かにこのままだとじり貧で此方がやられるだろう。
抱き抱えたセシリアを下ろした瞬間を狙ってか、またもフレキシブルによる偏向射撃が行われる。
執拗なその攻撃に、セシリアの持っていたライフルにフレキシブルの偏向射撃が当たる、バチバチと紫電を放出させる。
直ぐに手放すとそれは空中爆散し、残骸がアリーナへと落ちていく。
「くっ……! これでは射撃が行えませんわ……!」
ライフルの爆発に巻き込まれないように、緊急離脱をするセシリアだったが、その先に待ち受けていたのは襲撃者だった。
「あっ!?」
「……お前はもう死ね」
絶対零度を感じさせる冷たい言葉と共に、周囲に展開していたビットからの集中砲火に晒されるセシリア。
「チィッ……! ギガント・マグナム! いけぇっ!!」
左拳だけを粒子形成させると同時に放つ、その一撃が真っ直ぐと進むのだが重ねられたシールド・ビットの妨害により阻まれ、勢いを失って拳がアリーナ地表へと落ちていく。
「ふん。 所詮は低ランク……といった所か。 終わりだ」
俺を一瞥後、ライフル先端に取り付けられた銃剣の刃が青い輝きを放ち始めた。
「……まだですわよ。 劇の終幕には……まだ早いですわ……!」
小さく叫ぶセシリアに、怪訝な表情を浮かべる襲撃者。
次の瞬間、砲口が閉じられた筈のビットがそのパーツを吹き飛ばし、一斉に四門の砲口から光が放たれる。
「ブルー・ティアーズ・フルバースト!! とくと味わいなさいな!!」
至近距離からの四門同時砲撃、だがそんな一撃を一瞬で見極めた襲撃者はその射撃を避け、背後に回ると同時に――。
「ふん。 やはり終幕だな……この程度の技で勝ち誇るとは、やはりイギリスは大した事はないな」
笑い声と共に、ライフル先端の銃剣が更なる輝きを放つ――それと同時に、雅からの声が届く。
『主君! ブルー・ティアーズのあの技発動後、不具合で一時的に絶対防御が発動しなくなる!』
『何!? セシリアはそれを知ってるのか!?』
『いや、知らない筈だ。 コアであるブルー・ティアーズがネットワークを通じて私に知らせたのだ! 主君!!』
「チィッ……! セシリアァァァッ! 避けろぉぉぉッ!!」
喉が張り裂けぶ程の叫び声、アリーナに響き渡る俺の声とは裏腹に下ろされる銃剣の刃。
間に合わないとわかっていても、俺は全身のスラスターを点火させ、直ぐ様セシリアの救援に向かう。
「死ね」
そんな冷たい言葉と共に、一撃がセシリアの二の腕を貫通する。
「あああああっ!!」
「セシリアァァァッ!!」
貫通された腕から舞い散る鮮血は赤く、アリーナ地表に落ちていき、二の腕から流れ出る流血がセシリアの腕を徐々に赤く染め上げる。
耐え難い苦痛の叫び、セシリアを呼ぶ俺の声を聞き、襲撃者は口元を邪悪に歪めた。
その瞬間、俺の怒りの沸点が限界突破すると同時に、咆哮がアリーナ全体に轟きを上げる。
「……ォォォォオオオオッ!! 俺に呼応しろ!! 打鉄ッ!!」
キンッ!と甲高い高周波音と共に、目映い光が機体から放たれる。
各スラスターの加速力が増し、激しい体当たりの一撃を襲撃者に食らわせた。
「なっ……!?」
衝撃に、アリーナバリアーへと叩き付けられる襲撃者、だが俺は攻撃の手を休めない。
左拳のギガント・マグナムを再度粒子形成させ、それをアリーナバリアーへと叩き付けられた襲撃者に対して放つ。
「く……だが……。 その程度の遅い攻撃、無駄に等しいという事を知れ」
バリアーから抜け出し、回避行動をとろうとする襲撃者――【遅い攻撃なら、その一撃を加速させればいいだけの事】。
「……イグニッションッ!!」
言葉に応えるかの様に、ギガント・マグナムが【瞬時加速】を行い、加速力が増した。
「なっ……! ガハッ!?」
加速力の増した強烈な一撃が襲撃者の機体、サイレント・ゼフィルスを捉える。
更にもう一撃――ギガント・マグナムを放つ。
それも最初から瞬時加速を使っての一撃、左拳のギガント・マグナムが粒子化して消えた次の瞬間には、巨大な右拳がサイレント・ゼフィルスの腹部に直撃を食らわせる。
「グゥッ……!? 馬鹿な……! 武装に備わったスラスターで瞬時加速だと……!?」
「それがどうしたッ! 鈴音だけじゃなく、セシリアまで……覚悟しろよ!!」
「ッ……貴様ァァァッ!!」
ギガント・マグナムを払い除け、ライフルの銃剣を構えて突撃を掛けてくると同時に、無数の粒子ビームによるフレキシブルが俺に襲いかかる。
「……【桜花幻影】……ッ!」
粒子ビームが当たる直前に呟くその言葉に、打鉄が応える――そして。
「……!? 馬鹿な! 桜の花びらだけ残して消えただと……!」
機体は粒子ビームに当たると、大量の桜の花びらを撒き散らし、消えてなくなる――だが、完全に消えてなくなるのではなく、ハイパーセンサーも、コア・ネットワークすら騙す【単一仕様】――。
「オラァアアアッ!」
「ッ!? 後ろ――」
言葉の途中、ギガント・マグナムの拳によりダメージを負う襲撃者。
格闘戦による怒濤のラッシュ攻撃が、徐々に、徐々にその装甲を破壊していく。
「ッ……クッ……! 貴様ァァァッ!!」
後方へのクイック・ブーストで拳を避け、銃剣を構えてまた俺に対して突撃と共に振り下ろす。
鋭利な金属音が鳴るも、ギガント・マグナムには傷一つ付かず、互いに攻撃の応酬を繰り返す中、まだ機体がかろうじて維持しているセシリアにプライベート・チャネル通信を開く。
『セシリア、無茶は承知で頼む。 残ったエネルギーで……フレキシブル攻撃を行ってくれ!』
『……っ、で、ですが……。 ず、ずっとわたくしは成功していませんのよ……? 失敗すれば……ヒルトさんに当たります……っ』
今の立ち位置の関係で、フレキシブルが出来ないと俺に攻撃が直撃するのは明白だ、だが――。
『大丈夫。 セシリアなら俺に当てる何て事はしないだろ。 ――何てったって……お前は【セシリア・オルコット】だろ?』
『……ぁ……』
普段から口癖の様に、セシリアはそう言う。
プレッシャーになるかもしれないが、俺にはわかっている――セシリアは必ず俺の期待に応えてくれると。
『頼んだぞ! 仮に機体崩壊しても俺が助ける!』
『……うふふ。 なら……お姫様抱っこで助けてくださいまし』
そう言って通信が切れると、既に腕の傷はISの機能で止血されたのか、流血は止まっていた。
尚も続く互いの削りあいは、まさに死闘――銃剣の攻撃が当たれば、倍返しといわんばかりに瞬時加速を利用したギガント・マグナムによる一撃を食らわせ、その攻撃に対して更に腹部に蹴りを食らわせる襲撃者。
いつ終わるともしれないその死闘――俺の後ろにいたセシリアは、さっきの俺の言葉で吹っ切れたのか左手でピストルの形を作ると――。
「バーン」
その言葉と共に、ブルー・ティアーズのビットは応える。
砲口から放たれた四本の粒子ビームが真っ直ぐ俺に突き進む。
「フッ……仲間に撃たれてるとは、貴様も信用されてないようだな」
「……果たしてそうかな!」
「ッ!!」
確実に逃げないように、ギガント・マグナムを装着した両手で腕を掴んで拘束。
抜け出そうともがく襲撃者――俺に迫る四本の粒子ビーム――だが、その粒子ビームは俺の背後で偏向し、ビームがくの字に曲がると俺を綺麗に避けて襲撃者の機体に当たった。
「!? クッ……フレキシブル射撃……!」
「これで――終わりだァァァッ!!!!」
拘束した両手を離すと、右ストレート、左フックと決め、襲撃者の両肩を固定する様に両手で掴むと、残ったエネルギー全てを使いきるつもりで全身のスラスターを点火、アリーナ地表に叩きつける様に押し込んでいく。
「グゥッ! くっ……約80%のスラスターオフライン……!」
「まだだッ!」
「ッ……!?」
その状態から高々と空へと放り投げると、空を舞う襲撃者――追い討ちと謂わんばかりに、上空へ急上昇していくのだが、最後の抵抗か、それを避けようと残ったスラスターで全力回避を行う襲撃者だったが――一発の射撃が、その動きを制止させた。
ラウラの射撃だ――残った一発、シャルが射撃補正して襲撃者の回避を妨げたのだ。
「……流石だな、ラウラ、シャル! ――この一撃、届けェェェェッ!!」
「がっ……!?」
深々と突き刺さるギガント・マグナムの拳は、絶対防御を発動させると襲撃者のエネルギーがゼロになる。
ISは解除されず、何故か空中で制止したまま息を切らせたのか呼吸の粗い襲撃者――予備のエネルギーで辛うじて浮遊してるというのだろうか。
一方のセシリアも、この戦いを見届けて意識を失うと、機体は粒子となって消え、地表へと落ちていく――その寸前で、ギリギリお姫様抱っこで抱えて助けると、打鉄もエネルギーが無くなったのか強制解除された。
「……っ……こんな雑魚どもに……私が……」
茫然自失してるのか、そう呟く襲撃者――上空のバリアの割れる音が響き渡り、新たな襲撃者が来襲してきた。
「あぎゃぎゃぎゃぎゃっ♪ なかなかやるじゃねぇか、お前ら――特に、有坂ヒルト。 単一仕様の発現、見事だぜ?」
「……!? お前は……!!」
顔はフルフェイスで隠れてわからなかったが、機体は前回の襲撃で見た【ユーバーファレン・フリューゲル】だった。
「あぎゃ、エム……自力帰還は無理そうだな。 ――この地点に行きな、スコールがそこで待っている」
「……っ。 わかった……」
「あぎゃっ♪ 後詰めは俺様に任せな、きっちり時間は稼ぐぜ……って言っても、殆どエネルギー切れの機体ばかりな様だがな、あぎゃぎゃぎゃぎゃ♪」
男の高笑いと共に割れたバリアーから外へと逃げていく襲撃者――エネルギーが無い以上、追い掛けるのも無理だ。
そう思っていると、アリーナに金色の光が周囲を包む、見ると篠ノ之が――。
「【絢爛舞踏】……私に応えろ、紅椿!!」
応えたのか、紅椿が金色に発光と共に、触れた白式も同様に発光していく。
「……! 一夏、やったぞ! 絢爛舞踏が発動した!」
「ああ! これでまた俺は皆を守れる、サンキューな、箒!」
絢爛舞踏が発動し、一喜一憂する篠ノ之――これなら全員のエネルギーを回復する事が出来るかもしれない。
「あぎゃ? ……成る程、絢爛舞踏――単一仕様発動したのか。 あぎゃ、回復するなら待ってやるぜ、篠ノ之モッピー?」
馬鹿にしたようなその言葉に、表情が険しくなる篠ノ之。
「黙れ! 絢爛舞踏が発動した今、私と一夏の二人が居れば他の専用機等居なくても問題は無い!」
そう一蹴する篠ノ之の言葉に、回復は見込めないと意識のある人間は全員思った。
「あぎゃ? ……仲間にエネルギーを与えねぇのか? ……あぎゃぎゃぎゃぎゃ、まあいいさ」
そう言って前にも見せた回転ノコギリのついた大剣を呼び出す男――。
「箒……皆を回復させた方が――」
「大丈夫だ。 下手に回復するよりかは私と一夏の二人でアイツを倒せば、それだけ今この場に居る専用機持ちも被害が及ばないだろ? 行くぞ、一夏!」
「わ、わかった!」
納得したのかしてないのか、一夏は篠ノ之に続く形で男に向かって突撃をかける。
「あぎゃ、良いぜ……二人まとめと相手してやるぜ!!」
そんな言葉と共に、アリーナ上空へと上昇した男、それを追うように追撃する二人の空中戦が繰り広げられた。
後書き
そしてカーマイン対一夏、篠ノ之組( ´艸`)
果たしてどちらが勝つか……目に見えてるかな( ´艸`)
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