IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
【第402話】
前書き
何か楯無さんが変な気がする('A`)
時間は少し遡る、場所は市営アリーナ観客席。
「ふふ、流石はエムね。 流石に数は多いものの、先ずは二機を戦闘不能にしてから徐々に戦力を削っていくなんて。 あれだけの数を相手に、よく立ち回るものだわ」
サングラスをかけ直すと、観客席から襲撃者の立ち回りを悠々と観戦する女性がそこに居た。
既に観客の殆どが避難の為に通路へと駆け込んでいて、周囲に散らばるのは食べ掛けのポップコーンの残骸や、他にも織斑一夏や篠ノ之箒の応援グッズ等様々な物が観客席の椅子やら階段に散乱している。
「しかし、織斑一夏も大したことないわねぇ。 有坂真理亜が設計した機体も、確かにあの迎撃機能は厄介だけど、それだけの様だし……。 他だと、有坂ヒルトだけど……彼も論外かしら、乗ってる機体も第二世代のアンティーク改修機だし」
軽くため息を漏らす女性、柱に背を凭れさせると同時に声をかけられた。
「あら、無理矢理イベントに参加しておいて、貴女は高みの見物かしら?」
片手に扇子を持ち、現れたのはIS学園生徒会長、更識楯無その人だった。
「えぇ。 私は高みの見物よ。 ――IS【モスクワの深い霧(グストーイ・トウマン・モスクヴェ)】だったかしら? 貴女の機体は」
女性は振り向かず、現れた更識楯無に対してそう聞くのだった。
「残念。 それは前の名前よ。 今は【ミステリアス・レイディ】と言うの」
口元を隠すように扇子を開くと、目を細めて微笑む更識楯無。
「そう」
短くそう返事をし、振り向くと同時にナイフを更識楯無に向かって投げた。
刃が空を切り、真っ直ぐ更識楯無へと迫ったその時だった。
別方向からのナイフが、その一撃を阻む――更識楯無が、ナイフを叩き落とそうと蛇腹剣【ラスティー・ネイル】を展開した時だった。
「……無粋ね、女性同士の会話に入るだなんて」
「ワハハハハッ、昔っから俺は女心に疎くてな。 そんな俺だが、一応嫁さんは居るんだぜ、スコール・ミューゼル」
通路の奥から姿を表したのは有坂陽人だった――更識楯無とは違った通路から現れたのは、彼自身がヒルトの友人を安全な場所に案内しての事だった。
「かぁーっ、せっかくの息子と娘の晴れ舞台だってのにお前らは邪魔しやがって……。 マスコミもいち早く機材片付けて逃げるし、これじゃあヒルトの活躍が報道されねぇじゃねぇか……」
頭を掻き、新たに取り出したナイフを構える有坂陽人は、更識楯無の方へと視線を向けるとニッと笑顔で――。
「お嬢ちゃん、悪いがここは俺に任せてくれないか? お嬢ちゃんが学園生徒会長で最強なのは知ってるが、正直……ここは俺の領分だ。 ……息子達の晴れ舞台は所か、息子の友人、それに来ていた来賓に観客全員を危険な目に合わせた奴等だからな」
ナイフ一本でISを所持した襲撃者に立ち向かうという無謀な試みに、流石の楯無も驚きを隠せずにいた。
「で、ですが――」
「………………」
楯無は言葉を飲む、先程迄の気さくなしゃべり方とは打って変わって放たれていたプレッシャー――それを機敏に感じた楯無の背中に、冷たいものが流れるのを感じた。
「……カーマインが言ってたわね。 有坂陽人を敵に回さない方がいい……と。 でも、ISを持つ私にナイフ一本で私に敵うと――」
言葉の途中、一瞬だった。
喉元を狙う刃の一閃、離れていたと思っていたスコールが気付いた時には、既にその刃がスコールの命を刈り取ろうとしていた。
「…………ッ!?」
反応の遅れたスコールだったが、その一閃を薄皮一枚で避けると、喉元から血が首筋を伝って落ちていく。
もう少し反応が遅ければ、確実に命が奪われていたであろうその一撃に戦慄したスコールは、直ぐ様ISを展開する。
輝きを放つ黄金の装甲が、妙な神々しさを感じさせるも、有坂陽人は余計な考えをせずに足元に落ちていたナイフを蹴り上げる。
蹴りあげたナイフは真っ直ぐとスコールを捉えた――だが、その機体の周囲に薄く張られた金色の糸――否、糸に見える熱線がその刃を阻んだ。
「ふふっ。 ISを持たないただの男に、私のISを倒せる筈がないわ」
スコールは笑みを浮かべる――表情はバイザーに隠されていても、有坂陽人にはその様子が見てとれた。
「おじさん! 無茶しないでください! あの女性の相手は私が!」
そう言って、楯無もISを展開するが陽人は遮りように左手で制止させると。
「お嬢ちゃん、さっきも言ったがここは俺の領分だ。 ……どうしても戦いたいのなら、俺が倒れた後にしな。 まあおじさんは簡単には倒れないけどな」
言ってから真っ直ぐ突撃をかける陽人の瞬発力は、ISの初速を遥かに上回っていた。
その刃が再度熱線のバリアーが覆われるスコールの機体を捉えるものの、スコールは避けようとすらせずその様子を眺めながら呟く。
「……馬鹿な男。 【ソリッド・フレア】の灼熱の炎に焼かれなさい……」
そう呟くスコールの手のひらに既に凝縮された火球。
それを放つと勢いよく有坂陽人の身を包む――激しい業火に包まれゆく陽人の様子を眺めながら再度呟く。
「ふふっ。 大人しく更識楯無に任せていれば良かったもの――」
スコールの言葉の途中、紅蓮の炎に焼かれた筈の有坂陽人の手がスコールの機体を捉える。
否、手では無くその手はまるで機械の手で、ISに近い形のマニュピレーターだった。
「こ、これは――」
「残念だったな、スコール・ミューゼル……!」
紅蓮の炎から抜け出る漆黒の機体は、その身にまとわりついた炎を吹き飛ばした。
「……!? その機体――エムから報告のあったアメリカの新型――」
「残念だが、アメリカの新型じゃないぜ!」
赤いツインアイが煌々と輝きを放つ、握られたナイフの振るうと、剣閃が易々とスコールのIS周囲に張られた熱線のバリアを切り裂いた。
「そ、そんな……!? 未だ破られた事のないプロミネンス・コートが……!?」
切り裂かれた熱線のバリアに、驚きを隠せずにいたスコールに更なる強烈な一撃が叩き込まれる。
粒子形成されたビームライフル、その砲口を切り裂いた熱線のバリアの向こう、絶対防御が必ず発動する晒された生身の箇所に押し当てられると、トリガーを引き、その砲口から何度も粒子ビームが放たれ、絶対防御を発動させた。
逃れようとスコールは動く、だが有坂陽人の機体【黒夜叉】の反応速度と言い様の知れないプレッシャーから単調な逃れ方となり、簡単に動きを読まれて逃げることが出来ずにいた。
「す、凄い。 ……これが……ヒルト君のお父さん……」
楯無は再度息を飲む、最初から有坂陽人の劣勢だと思っていたのは、襲撃者であるスコールと楯無の二人だけ――そもそも、場には二人しかいないのだから当たり前といえばそうかもしれない。
だが、仮に百人居たとしても生身の有坂陽人が勝つと信じる人間はいないだろう。
黒夜叉の激しい銃撃により、スコールの機体の金色の装甲が次第に破損し、破片を撒き散らせる。
既にビームライフルを捨て、両手に構えたナイフによる攻撃へと切り替わり、スコールの反撃すら許さず終始圧倒していた。
プロミネンス・コートによる防御膜も既に意味は為さず、何度も何度も絶対防御が発動し――。
「くっ……このままじゃ……!」
焦りの表情と共にそう呟くと、閃光手榴弾を自身の機体の足元に落とす。
それが破裂――一瞬の目映い光が観客席を包むが、それはほんの一瞬でアリーナのバリアーの向こう側のヒルト達は全く気付かなかった。
そもそも、この場所が皆の居るアリーナから離れていることもあって、戦闘に気づく者はいないだろう。
「……逃げられたか。 まあ逃走に力を注いだ様だし、追っても無駄だな。 お嬢ちゃん、無事か?」
「え、えぇ。 すみません……え、援護出来なくて」
萎縮した楯無は、深々と頭を下げた。
それを見た陽人は、きょとんとするも――。
「気にするなよお嬢ちゃん。 それに、この狭い観客席で援護なんざしたら下手するとかえって邪魔になる可能性もあるからな」
「う……そうですね……」
更に萎縮し、心なしか小さく見える楯無に、陽人は更に声をかける。
「お嬢ちゃん、もう気にしなさんな。 ……それよりもだお嬢ちゃん。 まだ逃げ遅れた迷子の子とかいないか調べてくれるか? 俺は……息子達がもし危機に陥ったら直ぐに助けないといけない」
言ってからアリーナを見る陽人、其所には空中戦を繰り広げるセシリアの姿があった。
「え、えぇ。 ですけど……私も援護した方が――」
「無論迷子が居なければな? 数が多ければ多いほど優位にたてる。 卑怯だなんて言うやつもいるかもしれないが、これはスポーツじゃないからな……下手すると誰かが死ぬ可能性だってある」
陽人の言葉に何処か冷たさを感じた楯無――だが、言ってる意味はわかっているので――。
「……わかりました。 じゃあおじさん、皆の事……生徒会長としてよろしくお願いします」
「おう! 安心しな、あそこにはヒルトのお嫁さん候補が無数に居るんだ! 誰一人死なせねぇさ、ワハハハハッ」
最初の印象の気さくな感じの声に戻る陽人に、心なしか安堵してその場を走ってアリーナ内部へと消えていく楯無。
残された陽人は一人ごちる。
「……さて、俺が出るのは上空の奴が介入してからだな……」
赤いツインアイが上空の機体を捉える――僅かに微笑が溢れた有坂陽人は、今のうちに簡単な調整に移った。
後書き
そして陽人登場(* >ω<)=зハックション!
生身でスコールのISを倒しそうな勢い( ´艸`)
いや、実際倒そうかと思ったり(-_- )(ぇ
遅れたりするかもですが、気長にお待ちくだちい
ページ上へ戻る