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IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》

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【第210話】

 
前書き
オ・リ・ジ・ナ・ル(b^ー゜) 

 
 白猫シャルと黒猫ラウラと戯れた次の日。

 ちらほらと帰省中だった学生も戻りつつあるのか、少しずつ活気を取り戻していた。

 だが夏の暑さだけは変わらず、更に雨が降ってるせいもあり、湿気の不快さも加わって正直部屋に引きこもりたい気分なのだがそういう訳にはいかず、現在整備室へと向かっていた――と。


「よ、よぉ。 有坂じゃねぇか。 ひ、久しぶり……だな」

「ん?」


 可愛らしい傘を差していたのは帰省中だった栗原理央だった。

 服装は上から見ると、白のベレー帽を被り、何やら英語がプリントされている夏物の白いTシャツ、スカートは青のチェック柄のミニで、オーバーニーと呼ばれる靴下を穿き、靴は手軽さからかスポーツシューズを履いていた。

 荷物自体は少なく、肩に下げたバッグのみという手軽さは鈴音に通じる所があった。


「おっす。 帰って来たんだな、栗原」

「お、おぅ……。 家にいると居心地悪くてな、ははっ」


 そんな乾いた様な笑みを浮かべる栗原に、少し疑問に思いつつも――。


「そっか。 ……ほら、荷物貸せよ」

「え?」

「ここで会ったのも何かの縁だろ? 部屋まで持っていくから」


 驚きの表情を浮かべる栗原に、俺は近付いて手を出す。


「やっ、わ、悪いからいいって――」

「遠慮するなよ、ほら」


 一度は遠慮した栗原も、俺がもう一度催促すると申し訳なさそうにバッグを差し出す。

 それを受け取ると、俺はすぐに肩に担ぐ――と、栗原が。


「お、お前さ。 どこか向かう途中だったんじゃないのか?」


 そんな言葉かける栗原の顔は、眉を下げていつもの彼女らしさが全く感じられなかった。


「ん? ちょっと整備室に行こうって思ってな」

「だ、だったら――」

「別に急ぐほどの用事じゃないから、栗原は気にするなよ」


 そう言って栗原を見ると、慌てて視線を逸らされた。

 そんな栗原を不思議そうに思いつつも――。


「ほら、行こうぜ? 雨降ってるし、湿気のせいで不快指数全開だしな」

「そ、そうだな。 ……有坂、ありがとな……」


 雨が傘を叩くなか、聞こえてきたありがとうという言葉に――。


「気にするなよ、クラスメイト何だし、仲間だろ?」

「……お、おぅ。 ……お前、耳よすぎだ……バカ……」

「ははっ、難聴の方がいいか? 一夏みたいな」

「あ、あれは病気の一種だろ! そ、それに……あんだけ何か言われていつも【なんだって?】って返されたら……誰だってイヤになるし……」

「まあな、リアルに耳鼻科行けよって思うよな。 ははっ」


 そんな笑い声に、栗原も釣られて笑った。


「あははっ、そうだな♪ 絶対あいつは耳鼻科受診すべきだよな!」

「あぁ。 又は補聴器するかしないとな。 ……じゃあ寮に行こうぜ?」

「あ……ぅ、ぅん、そぅだ……な」


 さっきとは一転、急にしおらしくなった栗原は俺の一歩後ろから着いてくる形で一緒に寮へと向かって行った――。


――寮の玄関――


 到着すると、傘についた水滴を落としてから寮に俺も栗原も入る。


「しかし……久しぶりに雨が降ったな、ここ」

「……だな。 俺、雨女じゃなかったはずなんだけどなぁ……」


 玄関から外を見ると、雨が本降りになったのかザァザァと激しく雨音を立てていた。

 雨音が奏でる旋律――と言えば聞こえはいいが、残念ながら不快指数が上昇するだけで有り難くはない。


「な、なあ有坂」

「ん? どうした?」


 急に呼ばれて何事かと思い、隣に居た栗原へと視線を移すと、後ろに手を組みながら――。


「き、今日の俺の格好……に、似合わないよな? ……女の子過ぎて」

「……何でそう思うんだ?」

「ほ、ほら……俺って、言葉遣い男みたいだろ? そ、それなのにこんな格好――」


 そんな卑下する言葉を遮る様に、俺は言葉を口にする。


「関係無いだろ? 言葉遣い何か気にするなよ。 栗原、似合ってるし可愛いぞ?」

「……ッ!? か、かわっ……!?」


 ボシュッという音と共に顔が真っ赤に染まる栗原は、ころころと目まぐるしく表情が変化していった。


「おいおい、聞いててそれかよ? ……あまり言われないのか、地元の男の同級生とかに」

「あ……お、俺の居た中学校は女子校だったから……。 あ、兄貴には可愛いって言われるけど……他の男の人に言われたのは……お、お前が初めて……かも……」


 気恥ずかしさからか、後ろを向くと栗原はスカートの裾を掴んで落ち着かなさそうにするが――。


「~~~~っ! ほ、ほら! 早く部屋に行くぞ、バカヒルトッ!! ……そ、それと、これからは俺の事は理央って呼べよなッ!!」


 くるりと振り返ると、ふわりと舞うスカート。

 残念ながら下着が見えないのはそういうものだと思いつつも、栗原が俺の事をヒルトって呼んだのも気になり――。


「き、急にどうした?」

「な、なんだよ? 俺だって下の名前で呼びたかったんだ! 文句あるのかッ!!」


 ビシッ!と指を指す栗原は、顔を赤くしたまま目を吊り上げていた。


「いや、文句はないが――……まあいいか、じゃあ気軽に理央って呼ぶよ」

「ぉ、ぉぅ。 ……へへっ。 ほら、ヒルト。 ちゃんと最後まで手伝えよなっ」

 嬉しそうな表情を浮かべる栗原――じゃなく、理央は、先導する様に前に立ち、行く先を指差しながら歩いていく。

 そんな理央を見ながら、俺は荷物を持って着いていった――。

 ――部屋の前まで到着すると。


「ヒルト、荷物持ってくれてありがとな? ……ははっ、悪かったな、整備室に行くんだろ?」

「気にするなって、さっきも言ったがあそこで出会ったのも何かの縁だろ? それに、そんなに重い荷物じゃないんだし」

「ま、まあな。 家から持ってきたのは必要なものだけだし――な、なあヒルト?」

「ん? どうした?」

「せ、整備室行ったあと時間あったらさ……。 め、飯一緒に食わねぇかっ!? 良いだろッ!?」


 荷物を受け取った理央は、迫る勢いで言ってきた。

 まあ昼は特に誰かとって事はないから構わないかな……。


「ん、わかった。 なら終わったら連絡――って、よく考えたら理央の番号知らなかったな」

「な、なら交換しようぜッ!? うんうん、ナイスアイディアだな、俺!!」


 何度も頷き、スカートのポケットから携帯を素早く取り出す様は鮮やかで、慣れてる気がした。


「んじゃ、赤外線で――――ん、これで大丈夫かな?」

「お、おう! ……じ、じゃあ連絡待ってるからな! 連絡なかったら……お、怒る……からね……」

「へ?」

「な、何でもねぇよ! じ、じゃあな!」


 そう言って部屋の中に入る理央は、激しい足音を立てながらベッドに飛び込んだようで、ルームメイトに何事と言われていたのが聞こえた。

 ……てか一瞬、言葉遣いが女になってた気がするが――気にしても答えは見つからず、俺は来た道を戻ることにした――。 
 

 
後書き
オリジナル話は暫く続きますん

 
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