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IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》

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【第460話】

 
前書き
○○の場合編そろそろ終わりかもーっ

取り敢えず原作進めないと 

 
 翌日の放課後、今朝のシャルはいつもと違って朝は大人しくもじもじしていたものの、昼休みにはいつも通りの彼女に戻っていた。

 ――美冬や美春には怪訝な表情をされたが、敢えて気づかないふりをして難を逃れた……筈。

 それはそうと、当初の予定通り美冬は美春とタッグを組んだらしく、二人して優勝を目指すらしい。

 ――村雲&村雲・弐式の揃い踏み、実弾には圧倒的防御力で対応可能だからシャルは苦戦するだろう。

 とはいえ、シャルもシャルでラウラと組むらしいから勝敗はわからないが。

 そんな考えはさておき、俺は現在忘れ物をしたためロッカールームへと移動中だ。

 着替えなどのロッカーというよりは、何かしらの私物等を入れる為のロッカーだが。

 曲がり角を曲がり、ロッカールームへと到着――中からは何かを研ぐ音が聴こえてくる。

 一定感覚で聴こえてくるその音が気になり、中へとこっそり侵入してみるとそこにはラウラが居た。

 彼女は真剣な眼差しでナイフを研ぎ、一通り研ぎ終えたのかそれを翳して仕上がりを確認していた。


「………………ふ」


 ナイフの研ぎ具合に満足しての笑みなのか、はたまた違う思惑があるのかわからないがラウラの口から笑いが溢れていた。

 そして、目付き鋭く自身のロッカーを睨み付けるや研ぎ澄まされたナイフを投擲、空気を切り裂く音が聴こえた後、それが突き刺さる音が響き渡る。

 ……因にだが、ここのロッカーは普通のロッカーだ、アリーナにあるロッカーが特別製で、ISの攻撃でも壊れない優れものらしい。

 一体何で出来てるのやら……と、突如ラウラの大声が響き渡り、心臓が跳ね上がった。


「私は勝つ! 勝って、完全にヒルトの心も身体も私のモノにしてみせる!」

「………………」


 勢いよく立ち上がり、握り拳を作るラウラ――それを陰ながら覗き見る俺の心境は複雑だった。

 正直いえば、ラウラは好きだ――だが、他の好意を寄せてくれる子も好きな気持ちにはかわりない。

 この【好き】という想いが曖昧で、俺自身がどう好きなのかがわからない。

 皆いとおしく思うし、大事だが――曖昧な自分自身が嫌になる。

 誰か一人に決めないといけないと思っていても、決めずにいる俺自身に嫌悪感を感じてしまう、その癖、女の子とキスはするしえっちな関係にもなってしまう弱い心にもうんざりしてしまう。

 ――と、突然ラウラの叫ぶ声が響き渡り、木霊した。


「あああああああ~っ!?」


 その声に心臓が跳ね上がり、何事かと思いながら様子を伺うとロッカーに貼り付けてあった写真の一枚、ラウラのナイフが見事に命中した写真を慌てた様子を見せながら抜くラウラの姿があった。

 此方から少し様子が見える――僅かながらに涙目を浮かべ、おろおろしはじめる。


「て、テープ……テープで留めれば、まだ……」


 落ち着かせようと呼吸するラウラだが、落ち着きを取り戻せなかったのが誰の目にも明らかだった。

 ロッカーを漁るラウラ――中からまず出てきたのは軍用携帯食、レーションと呼ばれるものだ。

 ――そういえば、まだレーションは食べたことがないなと思うと自然とお腹が空いてくる。

 そして次に出てきたのは、予備のISスーツ――普段ラウラが着てる灰色の奴だ、大体の子は予備のスーツを何着かは購入している。

 その後、ロッカーから現れるのは様々な古今東西のナイフだ――ククリナイフやコンバットナイフ、サバイバルナイフ、果ては十徳ナイフまで出てくる。

 幾ら漁ってもテープは出てこず、ロッカーから顔を出したラウラは再度おおきな声で叫んだ。


「衛生兵! 衛生兵~~~~~~ッ!!」


 取り乱し様が半端じゃなく、当初のラウラとのギャップに凄まじさを感じさせる一面だった。

 ――取り敢えず、今来た風に装って何があったのかを訊いてみるかな。

 思い立ったが吉日、俺は少しだけ後退りしてからロッカールームのドアを開ける開閉音を響かせた。


「……っ! だ、誰だ!?」

「おっす、何か衛生兵って声が聞こえてきたから気になってな」

「……ヒルト!? ――ぁ!」


 慌てた様子で持っていた写真を後ろへと隠したラウラ、涙目を浮かべてるのは変わらないが、それに気づかないふりをして俺は――。


「……えらい散らかり様だな、しかもナイフばかり……」

「む……ぅぅ……」


 頬を朱色に染めるラウラ――取り敢えず抜き身のナイフ以外を回収し、それを近くの箱に納めていく。


「……ラウラ」

「な、なんだ?」

「後ろに何を隠したんだ?」

「うぅ……」


 俺の指摘に、ぎくりといった表情を見せたラウラ――一通りナイフを回収し、予備のスーツ、そしてコンバットレーションを回収してラウラの座るベンチへと置いた。


「ほら、これで片付けは終わりだな」

「ぅ、ぅむ。 ……さ、流石は、我が嫁、だ。 え、衛生兵と叫んだ甲斐があるというものだ、うむ」


 若干歯切れが悪い言葉に、どうしても後ろに隠してる写真を見せる気はないようだ。


「嫁はわかったから、取り敢えず……後ろに隠してるやつ、見せてくれないか?」

「……!! こ、これだけはダメだ! い、幾ら嫁とはいぇ……」

「……ふーん」


 声質を明らかに落として返事をし、若干不機嫌そうな表情を見せてみた――もちろん、わざとだ。

 それを見たラウラの表情が一変し、観念したかのように隠していた写真を俺に見せた。

 写真の内容は俺だった――それも、わりかし爽やかな笑顔の俺だ、一体いつ撮られた物だろうか?

 そして、そんな写真には綺麗に俺の額を貫いた後が残っている。


「……見事に額を貫いた後が見えるな」

「ぅぅ……」


 身体の小さなラウラだが、何だか異様に小さく見えた気がした。


「ラウラ」


 ラウラの名前を呼ぶ、すると明らかに狼狽え始めるラウラが――。


「……っ、わ、わざとではないのだ! ひ、ヒルトが嫌いだからとかではなく、そ、その……! おろおろ……」


 ラウラの一挙一動全てが可愛く見える、意地悪するつもりもないのだが、何となく意地悪したくなる様な――そんな悪戯心が擽られた。


「ふーん、嫌いじゃないのに写真の俺の額に傷が?」

「はぅ……ぉろぉろ、わ、わざとではなぃ、のだ……」

「成る程……じゃあ何で額に傷が?」

「ぅぅ……」


 意気消沈するラウラ、声に覇気がなくなり、わりと本気で泣きそうな気がしたので此処等で悪戯心を抑えた。


「ふふっ、まあ写真がダメになったなら今度は二人で撮れば良いだろ? プリクラとかもあるんだし、な?」


 言いながら頭を軽く撫でる、恐る恐る上目遣いで見上げたラウラは――。


「ぉ、怒って……なぃ、の……か?」

「ん? 最初から怒ってないさ、これがな。 ――ちょっとした悪戯心って奴だな」


 ニッと俺は笑う――安心したように一息吐くラウラ。


「……我が嫁は時々意地悪、だ……」


 ジトーっと見つめてくるラウラ、そんなラウラを黙らせるように額に唇を落とす。


「うぅ……。 ず、ズルい、ぞ。 こ、こうやって黙らせるのは……」

「ははっ。 ……まあ何にしても、写真ダメにしたぐらいで気にするなよ? 今度二人で撮れば良いんだしな」

「う、うむ。 ……や、約束、だからな?」


 ラウラの柔らかな笑みに、ドキッとさせられてしまう。

 頬を小さく指で掻きながら、他の子には黙ってようと思う事にした。 
 

 
後書き
そういや、四月も五月も十巻は出ないそうな

もう打ち切りかな、てか十巻ってのが区切りいいし、次の修学旅行編で終わりでいいかもね 
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