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IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》

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【第197話】

 着替えを終えた俺は、現在寮近くの駅前の日陰にいた。

 私服に着替えたのだが、この私服は実は美冬と未来のチョイスだったりする。

 遡る事昨日――。


――回想中――


『お兄ちゃん! お兄ちゃんはもっとおしゃれしなきゃダメだよ!!』

『な、なんだ? 藪から棒に――しかも未来まで来てさ』

『んと、部屋でヒルトの服の事を話しててね。 ヒルトって基本無地の服装が多いじゃない? シンプルなのが好きって言って』

『うん、シンプルイズベストってね』

『……美冬はもっとお兄ちゃんには格好よくいてほしいって言ってたの。 ……ま、まあ私も同感なんだけどね?』

『みぃちゃん! それ言っちゃダメだよ! ……と、とにかく! 今日一日私とみぃちゃんで見立ててあげるから、付き合ってよね!?』

『……わ、わかった――』

『ふふっ、じゃあこのまま連れ去っちゃうからね。 私は明日から家族で旅行だし――』


――回想終了――


 ……という訳でロズウェル事件よろしく、美冬と未来二人に腕を組まれてレゾナンスへと連行され、一日着せ替え人形みたいに着替えさせられた。

 ……センスがいいのかわからないが、背中に逆十字架がデザインされた白いシャツと、同じく右股部分に逆十字架がデザインされたジーンズを穿いてるのだが――このジーンズ、チェーンがじゃらじゃら付きすぎて調子にのってる気がしないでもない。

 ベルトも黒と赤の派手な――というか、俺の好きな色なのだが、これも派手な気がする。

 ……といっても、シャルからの誕生日プレゼントにもらったブレスレットと合わせたのだと思う――そう思った方がいいかもしれない。

 次、連行されたら今度はどうなるか……少し恐ろしい。


「ヒルト、お待たせっ」

「ふむ、少し待たせたようだな」


 考え事をしてる間に、シャルとラウラがやって来た。

 ……シャルは私服だがラウラは制服という罠――というか、確か私服無いって言ってた気がする。

 シャルの私服だが、白を基調としたワンピースに、淡い水色を加えて涼しさと軽快さを醸し出していた。


「ん、早かったな、二人とも」

「うん、ラウラの着替えが早かったからね」

「……うむ。 ……ヒルト、その服だが……に、似合ってるぞ」


 顔を赤くし、俺を見るラウラ――と、シャルも。


「そうだね。 ……ぅん、カッコいい……」


 シャルも同じように褒めつつ、顔を赤く染めていた。

 二人とも共通してるのが、熱い眼差しでじっと見とれてる様な――うーん、恋は盲目というが……まぁ、似合うカッコいいと言われて嫌な気分にはならないのは、少なからずも俺も彼女たちに好意があるのかもしれない。


「ん……二人にそう言われるのは嫌じゃないな。 ……でも、派手じゃないか?」

「……ううん、ヒルトはこれぐらいおしゃれした方がいいよ?」

「……そうだな。 嫁として、常に格好よくあってほしいものだと私は思うぞ」

「……そっか。 まあ変じゃないなら良いんだ。 ……じゃあ行くか?」

「そうだね。 ふふっ、楽しみだなぁ」

「うむ。 ヒルトと共に出掛けられるのは私も楽しみだ」


 二人ともそう言いながら笑顔で見つめてくると、俺も自然と顔に熱を帯びるのを感じた。

 そのまま駅構内に入り、モノレールに乗り込むと何処の座席も空席ばかりだった。
 車内は当たり前だが冷房が効いている。

 俺達三人は座席に座ると俺を真ん中にして右にラウラ、左にシャルと挟まれ、簡易ハーレム状態に――。


「……これはこれでいいな、両手に華で」

「ふぁっ!? い、いきなり何!? び、ビックリしちゃうよ……僕……」

「ぅ、ぅむ……。 だが、ヒルトに言われてイヤな気分ではないな……」

「ふふっ、いきなり悪かったな。 ……さて、着くまでどうするかな。 何か話でもするか?」


 交互に俺は二人を見ると、そのままこくんっと頷いた。


「じゃあ何の話をするか……。 ん、ラウラ、前にテストしたパッケージはどうだった?」

「む? ブリッツとは違う高機動パッケージを使っての高速戦闘訓練を行ったのだが――速度がやはりアリーナ設定だといまいちな……」


 今さらだが、ISの試合で速度制限されてないと高々二〇〇メートル四方のアリーナだと皆壁に激突するため、IS設定は基本アリーナ仕様がデフォルトだ。

 それでも銃弾など回避が可能なのは、ハイパーセンサーによる察知能力の高さがあるからだろう。

 話をしてると、いつの間にかモノレールは発車し、窓から景色が流れていった。


「確かに、高機動パッケージ装着してのアリーナ設定だといまいちだよね? 第六アリーナを使えたらいいけど……あれはキャノンボールの時に開放らしいからね」

「キャノンボール・ファストか……。 確か来月だったか?」

「そうだ。 多分私たちは専用機専用のバトルレースにエントリーする事になるだろう……。 嫁といえど、手加減しないぞ?」


 腕を組み、そう静かに告げるラウラを見ながら俺は――。


「そっか。 まあそういうならライバルって奴だな」

「そうだね。 ……僕も、フランス政府から装備とかの支援はあるけど、風当たりは厳しいからね……」


 寂しそうな表情をするが、直ぐに笑顔に戻ったシャルの頭を撫でると、ゆっくり瞳を閉じてその感触を楽しんでいた。

 一方のラウラは、それを見て頬を膨らませながら――。


「ヒルト、シャルロットだけズルいぞ。 ん……」


 そう言って頭を差し出すラウラ。

 まるで甘えたい子供みたいで可愛く思えた。

ソッと髪に触れる様に手を添えると、そのままゆっくり頭を撫でた。


「……二人とも、なでなでされるの好きか?」

「え? ……ヒルト……だからかな、なでなでされるのが好きなのは」

「……無論私もだ。 これが他の男なら完全拒否する。 ……ヒルトだからこそ良いのだ」


 ……そう言われて、俺も顔に自然と熱を帯びるのを感じると、二人は――。


「ふふっ、ヒルトの顔、赤いよ?」

「ふむ、少しはドキッとさせたようだな」

「……しなかったら、俺どんな人間だよ」


 そんな風に呟くと、シャルもラウラも共に笑みを溢し、俺も釣られて笑った――。

 その後はモノレール内に他の乗客も乗ってきたので、言葉少なめに会話を楽しんだ。

 ……二人が目立つからか、乗車した女子高生グループの声が聞こえてきたが殆どが二人が可愛いだのエリートだのの言葉だった。

 ……俺の事も少し話題にはなったがやはりラウラとは兄妹に思われていた様で、聞こえていたラウラが少し膨れていたのが何だか本当に妹の様に思えた――。 
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