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IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》

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【第194話】

 
前書き
障害物レース

原作のイベントですがよろしくお願いします 

 
 乾いた音が響くと同時に一斉にスタートする十二組の女の子ペア達。

 誰もが最初に小柄なセシリア、鈴音、シャル、ラウラに妨害を行おうと四人に迫る。


「セシリア!」


 鈴音の呼び掛けに、セシリアも頷き――。


「わかっていますわ!」


 鈴音に呼応する様に返事をするセシリア。

 先手を仕掛けてきたセシリアと鈴音の隣のペアは、足払いを試みるも二人の反応速度が上回り、華麗にジャンプしてくるりと一回転――勢いそのまま一番目の島に着地した。

 一方のシャルとラウラも――。


「甘いよ!」

「この程度で私達二人を止められると思っているのか? ふっ……!」


 小柄な二人を抱き抱えて落とそうとするも、二人ともその軌道を読み取り、身を屈めつつ横に回転しながら避ける。

 妨害を行おうとしたペアはそのままプールに落ちていき、派手な水飛沫を立ち上げていた。

 最初の方のルール説明で言われていたが、この障害物レースは妨害有りである。

 だからこその他のペア同士での結託とか色々あるのだろう……。


「さあセシリア、いくわよ!」

「ええ!」


 互いに声を掛け合い、向かってきたペアをかわしつつも余裕があれば足を引っかけて水面へ落とす二人。

 シャル、ラウラの二人も同様に回避しつつ、セシリア、鈴音の二人に遅れて一番目の島に到着した。


「僕たち小柄だから、よく狙われるね――よっと!」

「そうだな。 ――だが、この程度の妨害で私達二人を止めようとは笑止! 力の差というものを見せつけてやろう」


 何度も迫るペア相手に、まるで無双するかの如く蹴散らすシャルとラウラ。

 蹴散らすは言葉が悪いが、実際足をかける、または上手く避けて相手を落とすといった感じで赤子を相手にするかの如く無力化していく二人の姿に、観客席から歓声が巻き起こった。


「ふぅっ……きりがないね、ラウラ?」

「そうだな。 ……ここは一度先に進むとしよう――っと!」


 再度向かってきたペアに向かって跳躍する二人は、器用に相手の頭に手を起き、それを支点にして前方宙返りを行い着地した。

 その姿に、観客席が更にヒートアップした。

 その一方、セシリアと鈴音はというと――。


「ああもうっ! 何度も妨害して鬱陶しい!」

「邪魔ですわよ! ――大人しく、落ちなさいな!」


 シャル、ラウラの二人を狙わずにセシリア、鈴音を狙うペアの妨害にあい、進めずにいた。

 ……小柄な皆を先に狙う作戦は、全ペアが思っていた様だがその目論みは外れ、逆に返り討ちにあったために作戦の変更をしたのだろう。

 妨害組がセシリア、鈴音、シャル、ラウラを徹底して妨害し、先に逃げきりをかけた何組かのペアに優勝させるのが魂胆だろう。

 ……これも、作戦といえば作戦だが……。

 歯痒い思いで、俺はコース上の四人を見るだけだった。


「くっ……このままじゃ……!」

「えぇ……既に離されてますわね……」


 二人がそう呟く横を、シャルとラウラ二人が疾走しながら――。


「セシリア! 鈴! ここは僕達も協力しよう!」

「相手も勝つために妨害を行っているのだ。 少しぐらいは痛い目に合わせないとな」


 そう二人はイタズラを思い付いた様な子供の笑みを浮かべた。

 それを見たセシリア、鈴音の二人も同様に察したのか同じように笑い、応える。


「「うりゃああああっ!」」

「悪いけど、イレギュラー達は排除させてもらう!」

「貴女達四人、進ませないわよ!」


 一組はがっつりと組み合った腕でラリアットを仕掛け、もう一組はシャル、ラウラと個人を狙うように迫った。


 セシリア、鈴音二人の目付きが変わる――二人はラリアットを仕掛けてきたペアを避けると共に、一瞬相手ペアに【何か】して、プールへと二人組は落ちていった。

 一方のシャル、ラウラも目付きがISでの戦闘でも行うような眼差しで相手を見つめ、力を受け流す様にそのままプールへと落ちていくように促す。

 もちろん、二人も妨害を行ってきた女の子に【何か】を行う――。

 激しい水音と共に立ち上がる水柱――だが、直ぐ様水面へと浮上を行う四人――。


「「何度でも蘇るわよ! 私達は!」」

「ここで私達も諦める訳にはいかないのでな!」

「このまま私達と遊んでもらうわよ!」


 先に浮上した二人組の胸に着けていた筈の水着のブラが無く、まさかのもろだし――。

 残りの二人にも、シャル、ラウラは何かをしたのだろうか――四人は不敵な笑みを浮かべていた。


「ふっ……。 人は水着無くして生きてはいけない……」

「マリー・アントワネットの言葉通り、水着が無いのなら全裸でどうぞ」


 セシリア、鈴音の二人が手に持つのは妨害したペアの水着のブラ――。

 それに気付いた二人組は、直ぐ様確認するも時既に遅く、俺を含めた観客皆がもう二つの乳房に釘付けになっていて――。


「「きゃああああっ!?」」


 イベント会場に響き渡る悲鳴と共に、パニックに陥った二人組を一瞥し、奪ったブラをまとめると共にそれを反対側(俺から見て向かい側)へと放り投げた。

 もう一方のペアも、慌てて胸元を確認するが、ブラを盗られてない事を確認すると――。


「……どうやら私達の方ははったりだったようだな」

「せめてお前達二人だけでも――」


 そう言いかけたもう一組のペアの言葉を遮るように、目の前に【何か】を見せるシャルとラウラ。


「ふふっ、これ何だと思う?」

「……こんな紐みたいな水着等着るとは……。 ふっ、自殺願望と同じだな」


 二人が手に持っていたのは水着の下の部分であり、つまり――。


「「――~~~~~!?!?」」


 妨害を行った二人は、声にもならない悲鳴をあげつつ、目の前にある自身の水着を取ろうとするが、その度にひょいっひょいっと取らせない様に上に上げて意地悪な笑みを浮かべていた。


「ふふっ、流石に何度も妨害されちゃ、敵わないからね。 ……水着は【島の真ん中】に置いてあげるね? あははっ★」

「ふふっ、私達はセシリアや鈴よりかは優しいだろ? 取りに来れるなら、島に上陸するといい。 ……取りに来れるのなら、な?」


 そう言って二人は島の中央に水着を投げると、ぽすっと音がして辺りに転がりながら広がっていった――。


「ははっ、やるじゃないか四人とも! それに良いもの見せてもらったぜ」

「むぅ……。 えいっ」


 そんな美冬の声と共に、弁慶に蹴りを入れられて軽く悶絶する俺。


「ぐぉおっ……美冬……痛いのだが……」

「……鼻の下伸ばしてるお兄ちゃんが悪いッ!!」


 腕組みすると、怒った表情のまま見上げる美冬に、俺はたじたじしつつも四人が気になり、コース上を再度見た。


「さて、邪魔者は去ったし」

「うふふ、追撃しましょう」

「……だね、これで少しでも妨害が減れば――」

「逆転の可能性もあるというものだ」


 四人がそう言うと、ニッと笑顔を見せた。

 一番目の島は、最初の方は広い島だが二番目の島に渡るにはロープで繋がれた小島を一人が固定して渡り、それから向こう岸で支えてもう一人も渡るというものだ。


「……時間かかった分、一気に行くわよ!」

「ええ。 これ以上の差は許しませんわ! それに、ヒルトさんも見てますもの!」

「だね。 ……ここからが僕達、代表候補生の真骨頂だしね」

「ふっ……ヒルトも驚くだろう」


 鈴、セシリアの二人が右側の小島へと同時に飛び移り、シャル、ラウラは反対側の左の小島へと飛び移った。

 見る限りだと、一人支えるのが精一杯な島にしか見えないが、そんな事もお構いなしに、四人の軽やかな身体能力で一気にそれを突破していく。

 鈴音に至っては、参加前に言っていた通り、中国雑技団もビックリな身体能力を駆使し、前転、側転、前宙等を織り混ぜて小島を一つ飛ばしで飛んでいく。

 セシリアはその島の揺れを見極めつつ、鈴音の後を追従。

 シャルとラウラに至っては、そのコンビネーションの良さからくる身体能力で、寸分の狂いもなく小島を突破していった。

 その姿に魅了された会場は、四人の鮮やかな動きに感心して更なる歓声を上げた。


「こ、これは凄い! あの二組は全員高校生という事ですが、何か特別な練習でもしているのでしょうか!?」


 セシリア達の身のこなしに、司会のお姉さんも興奮しながらアナウンスしていた。

 先行逃げ切りしていたペアが落水するなか、続く第二の島も、障害なんか気にも止めずに四人は突き進む。

 本来なら一人が放水を止めてもう一人が進み、その後進んだ一人がまた放水をとめて合流するのだが、そんなことはせず、まさに一陣の風の如く駆け抜けて突っ切っていった。


「ははん! 余裕余裕!」

「この程度、地雷原に比べれば何とも簡単ですわね!」

「ふふっ、僕達を止めたいのならもっと放水の数を増やさないとね!!」

「それかヒルトでも用意するかだな。 ……よ、嫁が居たら流石の私も止まるしかない……」


 各々がそう言い、全力で駆け抜けていく姿は観客を魅了し、常に歓声が鳴り止まない状況だった。

 続く第三の島の障害も苦無く進み、第四の島も難なくクリアしていくと四人は遂に最後の第五の島が目前に迫った。

 ――ところが。


「ここで決着をつけるわよ!」


 そんな声と共に、トップのペアが反転し、四人に向かってきた。

 落水していたペアも、徐々にだがセシリア、鈴音、シャル、ラウラに迫っていくのが見える――そんな中、鈴音が。


「ふふん、幾らマッチョでも一般人があたし達四人に勝てるとでも――」


 鈴音の言葉を遮るように、司会のお姉さんのアナウンスがイベント会場を木霊した。


「おおっと、トップの木崎・岸本ペア! ここで得意の格闘戦に持ち込むようです!」


 そんなアナウンスに、会場がざわつき始める。


「――はい? 得意の……なんですって?」

「ご存知二人は先のオリンピックでレスリング金メダル、柔道銀メダルの武闘派ペアです! 仲がよいというのは聞いてましたが、競技が違えど息はぴったりですね!」

「……だからあれだけマッチョなんだね」

「ふむ? ……この狭い浮島では不利だな」


 冷静にそう分析するシャルとラウラだが、表情に余裕が無いのが読み取れた。

 一方のセシリア、鈴音は体力の消費が激しいのか少し息が上がっていた。


「もらったあぁぁああっ!」

「くっ!? ……は、離しなさいよ!」

「くぅっ!? 疲れなどしていなければ、このような方達に……!!」


 疲れからか、避けようとした二人は地面に足を取られ、なすがまま捕らえられた。


「セシリア! 鈴!」

 シャルが二人の名前を叫ぶが――。


「クッ……! シャルロット! ラウラ! あんた達だけでも先にフラッグ取りなさいっ!」

「そうですわ! わたくしたちの事はお気になさらずに!」


 捕まっている自分達の事は構わずに、先にフラッグを取れと促す二人を見た美冬は――。


「……お兄ちゃんなら、こんなときどうする?」

「……聞くまでも無いだろ?」

「……そっか。 やっぱり――助けるよね」


 そんな美冬の言葉と共に、捕まった二人を浮島から落とすマッチョペアの二人――。

 二人がプールに落ちる前に、シャルがセシリアの腕を掴み、ラウラは鈴音の腕を掴んだ。


「くっ……セシリア、無事?」

「……ふっ、あまり世話をやかせるな」


 掴んだ腕に、体重がもろに掛かってるためか少し苦悶の表情を浮かべるシャルとラウラ。


「な――シャルロットさん! ラウラさん! 何故ゴールへ向かわなかったのですか!?」

「そ、そうよ! 優勝のチャンスを逃すなんて……!」


 二人がセシリアと鈴音を助けている間に、ゴールしたマッチョペア。

 辺り一帯にクラッカー音が鳴り響く中――。


「仲間なら……! 助けるのが当たり前だよ……!」

「そうだ。 ……甘いかもしれないが、優勝して賞品を手に入れるよりは……お前達二人を助け、共にゴールしたいと思ってな」


 二人が笑顔でそう伝えると、ハッとした表情になると共に――。


「……ありがとうございます、シャルロットさん、ラウラさん」

「……へへっ、け、結構嬉しい事言ってくれるじゃん」


 二人の笑顔に応える様に、セシリアも鈴音も笑顔を返すとそのまま引き上げられる。

 ――それと同時に、二組目のペアが二着でゴールすると、障害物レースの終了を伝えるアナウンスが流れた。


「……負けましたわね」

「……そうね」


 悔しいのか表情を曇らせるセシリアと鈴音。

 そんな二人をシャルは――。


「確かに悔しいけど……僕達の実力が足りなかったんだよ。 ……ラウラも言ったけど、僕としても今回は勝ち負けよりはセシリアや鈴を助けられた事の方が嬉しいかな? ……仲間、だもん」

「その通りだ。 ……私がこういうのも何だが、六月には二人に酷いことをした。 罪滅ぼしになるとは思わないが……やはり、仲間……だから」

「……うふふ、もうわたくしはあの事など忘れましたわよ。 ……罪を憎んで人を憎まず……ですわ♪」

「……そうね。 いつまでも過去の事を気にしてても仕方ないじゃん。 ラウラ、だからあんたももう気にしないでよ?」


 セシリア、鈴音の二人が笑顔でそう言うと、ラウラは力強く頷き、シャルはそれを見て嬉しそうに笑顔で何度も頷いた。

 ……優勝は逃したが、俺にはこのイベントであの四人にもっと大事な物が手に入った様に思える。

 歓声と拍手が鳴り止まない中、第一回ウォーターワールド障害物レースはここに幕を閉じた……。 
 

 
後書き
改良か改悪か

判断は皆さん次第かと思われまする

批判とかは感想にでもくだされ 
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