IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》
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【第148話】
前書き
第三形態とのバトルです
より生物的な翼を四枚羽ばたかせ、福音の機体周囲には青い雷光が迸っていた。
第二形態の時よりも神々しく、人々に福音を与える天使の様に思えた。
例えそれが、【死を呼ぶ福音】だとしても――。
「……中々楽に済ませてくれそうに無さそうだな」
「……そうですわね。まさか、第三形態移行とは――」
「あたしも初めて見た。――でも、さっきまであんたが一人で第二形態と戦ってた事の方がびっくりだけどね」
福音の姿の変化に、セシリアの表情が苦虫を潰した様な表情へと変化した。
鈴音自身も、初めて見たその姿に、一筋の汗が頬を伝いつつ、俺に対してさっきまでの戦いの事に驚いてる様だった。
「あれはクサナギがあればこそだ。俺個人に、あそこまでの力は無いさ、これがな」
「そうかな…?僕はそうは思わないけど……」
「私もそう思う。――あの強化外骨格、確かに性能はISの力を倍増させるが――代償として、的になりやすい。――だが、そんな強化外骨格を使ってあれほどまで戦えたのだ、ヒルトはもっと自信を持ってもいい」
シャル、ラウラともそうは言うのだが――他の代表候補生が使えば、もっと上手く使えていた筈だ。
「……何にしても、あいつを止めないとな。止めて操縦者を救わないと、そろそろ限界が来てもおかしくないぞ?」
「……だね。意識があるのかわからないけど」
「見た感じだと、あのパイロットの意識は無いんだけど……。もちろん、生命維持優先にされてるだろうから大丈夫とは思うんだけどね」
美冬、未来と福音を見つつ、外からだけで福音の操縦者の様子を伺う。
一方の福音は、軽く自身の機体をチェックしているようにも見える。
何度かその翼を羽ばたかせる度に、その翼が空気を切り裂く音が聞こえてくる。
刹那。
「……来るぞ!皆、散開だ!!」
「「「了解!」」」
羽ばたく翼から閃光が放たれる。
それを合図に固まっていた俺達は、一瞬で四方に散っていく。
そして――眩い閃光が収まるや次々に粒子形成を終えた小型の光弾が、先程まで居た空域へと突き進む。
既にその場に誰も居なく、ただただその光弾が虚しく虚空へ消えていく。
誰もがそう思った次の瞬間、信じられない出来事が起こった。
軌道を変えて、外れた筈の光弾が七人に目掛けて、個別に迫ってくる。
「何だッ!?ビームが曲がる……!?」
「こ、これはまさか――」
その光弾が曲がる光景を、セシリアは信じられないといった表情で見つめていた――。
「セシリア!回避だ!!」
「……!!」
光弾の軌跡を読み、全員がクイックブーストによる緊急回避を行う。
少し出遅れたセシリアも、ギリギリ直撃を浴びずに何とか回避出来たのを見て、胸を撫で下ろした。
避けた光弾は、二回目は曲がる事もなく上空や海面へと消えていった。
「まさかビームが曲がるなんてな……。セシリア、あれは曲がるものなのか?」
「……あれは。――いぇ、何でもありませんわ……」
「…………?」
セシリアが何か思い詰めた表情を浮かべるのが気になったが――気にする余裕が無くなるほど、福音の四枚の翼から放たれる光弾を周囲に放出、苛烈極まる光の雨が七人全員に襲い掛かる。
「セシリアッ!!」
「……!?」
反応の遅れたセシリアを抱き抱え、迫る光弾の雨を連続クイックブーストによる緊急回避を行い、縦横無尽に動き続け――。
「セシリア、今は集中しろ。いいな?」
「わ、わかりました。――ヒルトさん、迷惑かけてすみません……」
「気にするな。――ラウラ、指揮をとってくれ!」
抱き抱えたセシリアを下ろすと同時にオープン・チャネル通信を開く。
「……いや、ヒルト。お前が指揮をするんだ」
「……俺が?――俺には無理だ」
否定の言葉を口にすると、ラウラが――。
「……大丈夫だヒルト。お前はクラス代表だろ?……それに、私の嫁でもあるんだ。皆だってちゃんと指示通りに動く」
そうラウラが告げると、皆が黙って一度頷く。
「……わかった。何事も経験だしな……。ラウラ、セシリアはアウトレンジからの援護射撃及び牽制射撃をメインに頼む。回避はアウトレンジだからそれほど気にする事はないが、足を止めて撃つよりは動き続けてくれ」
「わかりましたわ。わたくしとラウラさんで援護致します」
「了解した。……様になってるな、流石は教官の息子で私の嫁だ……」
そんなラウラの呟きも拾うが、今は気にする余裕も無く次の指示を送る。
「未来、シャル。二人はミドルレンジで臨機応変に頼む。二人の技術なら攻防どちらにも対応が可能な筈だ。だろ?」
「勿論。どの距離も対応可能よ?」
「うん。状況を見て、僕も援護射撃行うからね?」
「後は、個別に指示を送るかもしれないが――任せたぞ?」
そう告げ、最後に美冬と鈴音に指示を送る。
「美冬、鈴音は俺と共にショートレンジ――つまり近接戦闘メインだ。一番攻撃を受けやすいが、大丈夫か?」
「もちろん、私に任せて!」
「ふふん。代表候補生、舐めないでよね!近接戦闘何て、あたしの十八番よ!」
言うや、鈴音は双天牙月を片手で回し、肩に担いで笑顔で応える。
一方の美冬も、右手を左斜め上から右斜め下へと振るうと同時に近接ブレードが粒子形成され、握っていた。
その近接ブレードの刀身は、深紅に染まっていた。
「ふふっ。元々天狼は村雲用だったんだけど、お兄ちゃんの弐式に装備されたからね。だから、同じ機能を持つこの刀、【紫微垣】をお母さんが用意したの」
誰に訊かれた訳でもなく、美冬は手に持つ紅い刀身を持つ刀――【紫微垣】の説明をした。
「美冬、後で説明聞くから今は――」
「……それもそうだね」
それだけを言うと、手に持つ刀を構える美冬。
福音は全員が戦闘体勢になったのを見てか、再度四枚の翼を広げる。
まるで俺達を挑発するかのような無防備な姿をさらし出した。
「……じゃあ、皆行くぞッ!!村雲!呼応しろッ!!」
言葉が合図となり、村雲が光を放つ。
前のラウラを助けた時と同じ様に、その光が治まると同時に内から力が沸き上がる様な感覚。
光が治まると同時に、動いたのは福音だった。
広げた四枚の翼から放たれる無数の弾丸。
一つ一つが残光を残すように各機に襲い掛かる。
圧倒的な高密度の弾幕を、俺と美冬、鈴音は回避し続ける――。
「未来、行くよ!」
「了解。――チャクラムッ!行って!!」
シャルが先手を打つ。
構えたアサルトカノンによる牽制射撃。
その場で射撃を行っていた福音の射撃を中止させ、狙いをシャルに絞ったその瞬間だった。
エネルギー刃を形成させた特殊な勾玉型のチャクラムが、ミドルレンジから福音を強襲した。
『!!』
それに反応し、身を逸らして避ける福音。
――だが、未来の口元がつり上がり、不敵な笑みを浮かべた。
「安心するのは早いよッ!!」
『――!?』
器用にチャクラムを操り、福音の背後を切り刻んでいくエネルギー刃――そして叫ぶ。
「爆散ッ!!」
言葉を合図に、勾玉型チャクラムが爆ぜ、爆発が福音を飲み込む。
その様子を見た瞬間、オープン・チャネル通信を開き――。
「未来、セシリア、シャル、ラウラ!火線を五秒間福音に集中!鈴音は左!美冬は右!直上から俺が行く!!」
「「「了解!!」」」
言うや左に鈴音が福音へ回り込み、右に美冬、福音直上へ急上昇する俺――。
その移動する間、未来、セシリア、シャル、ラウラの射撃が福音を襲う。
爆発に飲み込まれ、体勢を崩した福音は避ける事も叶わずにその四機の砲火を浴び続ける。
四枚の翼が福音本体を守るように覆い、射撃から身を守ろうとするが既にその時には四人とも射撃を終えて、左側からの強烈な斬撃が福音を強襲した。
「切り刻んであげるわよ、福音!」
双天牙月による連続攻撃、両手で器用にそれを回すと、角度を変えた斬撃が何度も何度も斬り刻んでいく――そして。
「美冬!」
「任せてよ!!」
鈴音がその場から緊急離脱――交差するように右から現れた美冬による横一閃――。
福音の翼による防御を無理矢理抉じ開けるや、紫微垣による斬り上げ、そしてその場から小さく飛翔――勢いつけた袈裟斬りを福音の肩から腰部にかけて斬りつけた。
福音の叫びにも似た機械音声が辺りに響き渡る――。
紫微垣にも、天狼と同じ機能がある――つまり、【バリア無効化攻撃】が備わってる――ということだ。
堪らず福音も、緊急離脱を行おうと二枚の翼で美冬を攻撃、残りの翼でスラスター全開にして離脱をしようとするが――。
「お兄ちゃんっ!いっけぇぇええ!!」
「はあぁぁぁあああッ!!」
『――――!?』
直上からの叫びに反応した福音、それを見た美冬は福音から離れると福音は迎撃に四枚の翼からによる光弾の弾幕――。
その光弾に当たるのも構わず、肉薄するや――天狼を一気に振り下ろした。
福音の装甲に刃が当たり、激しく火花を巻き散らかせる――そして、まるでバターを斬るように滑らかに装甲が斬られ、生身部分に刃が当たると同時に絶対防御を発動させ、大きくダメージを与えた。
刹那、四枚の翼が発光――光弾とは違い、ビームライフルが放つような粒子ビームを辺り一帯、壊滅させる様に全方位に放つ。
「チッ!無差別攻撃かよ!」
迫るビームを、天狼の刃で受け止めるとその粒子は弾けて消えていく。
「――キャアッ…!」
そんな悲鳴が聞こえ、振り向くとセシリアの装備していたパッケージが直撃を受け、黒煙と同時に軽く出火しているようにも見え――。
「セシリア!そのパッケージをパージしろ!もうそいつはもたない!!」
「……ッ。油断しましたわ――。了解……ッ」
パージされたパッケージ【ストライク・ガンナー】を切り離すと同時に海面へ落下――着水すると同時に大きく爆発した。
また、セシリアとは別にシャルのパッケージ【ガーデン・カーテン】も実体シールド一枚とエネルギーシールド一枚が破壊されていた。
「シャル!平気か!?」
「まだ大丈夫!――でも、長くはもたないよ!」
身体を高速で左右に揺らし、避けきれない攻撃は防御するのだが福音の攻撃力はそれを上回っていて、徐々にシャルのパッケージを破壊していく。
ラウラも鈍くなった機体の為か、ビームに反応はするがその迫る弾幕の数が圧倒的過ぎて何度も装甲に当たり、ビームを弾いていた。
「ラウラ!」
「私は大丈夫だ。まだシュヴァルツェア・レーゲンはもつ!」
そうは言うものの、その表情には余裕が無く、遂には眼帯を外してハイパーセンサーの補助を行う。
「くぅっ!第三形態がこんなにも強いなんて!!」
「鈴音!離脱だ!一旦距離を離せ!」
「……っ。わかった!」
ビームを双天牙月を高速回転させて防ぎつつ、急速に後方へと離脱した。
「……数が多い!反射しきれないっ!!」
「未来ッ!!」
天照脚部から伸びるワイヤーの先にある反射板二基で、福音から放たれる光線を跳ね返し、反撃をするのだが圧倒的な弾幕のせいか、その反射したビームを、福音の翼から放たれるビームで相殺――有効打にならずに無情に消えていく。
――そして、全方位に放っていた射撃がピタリと止まったその一瞬だった。
「え――」
声をあげたのは美冬だ。
瞬時加速によって、福音と美冬の距離は肉薄し、美冬の表情が一気に強張る。
大きく翼を広げ、四枚の翼で美冬を包み込もうとしていた。
その光景に、さっきの篠ノ之を庇う一夏をフラッシュバックするかの様に脳裏に過った。
「……美…冬」
呟くようなか細い声を、絞り出すように俺は出した。
福音の翼が――美冬を包み込むその姿がスローモーションで視界に映る。
また、間に合わないのか……?
手を伸ばし、全スラスターを開く。
また、誰かが傷付くのか……?
スラスターに火が灯り、スラスター周囲を陽炎で覆われ、ゆらゆらと周囲が揺らぐ。
もう……誰も――誰も――。
「誰もッ!怪我なんてさせねぇ!!俺が、俺が居る限り!誰も傷付かせないし殺らせるかよッッ!!」
叫びが木霊し、まるでそれに応える様に全身のスラスターからエネルギーを放出され、そのエネルギーを内部に取り込む。
自然と身体が、【今から行う行動に最適な体勢】へと移る。
――そして、内部で圧縮されたエネルギーを放出。
爆発的な加速で視界がスローモーションに、世界が歪むのを一瞬感じた次の瞬間には倍速で世界が流れていくのを全身で感じた。
そして、福音と美冬の間に割って入り――。
「あ……。お兄…ちゃん?」
「……美冬、俺が来たからもう大丈夫だ。な?」
ニッと笑顔で応える。
美冬の纏う村雲をソッと押すと、その慣性に従うようにゆっくりと美冬は福音の四枚の翼の射程距離から離れていく。
何が起こったのか、美冬は理解できないような表情で俺を見つめていた。
そんな美冬を、俺は黙って笑顔で応えると福音の四枚の翼が覆うように包んでいく。
「まさか――ヒルトさんっ!?」
「あのバカッ!!何であんなに自己犠牲ばかりするのよッ!!」
「そ、そんな――ヒルトッ!!やだよ!」
「クッ……大事な時に、何で動かない!?嫁の一大事だ!動け!動けシュヴァルツェア・レーゲン!!」
「――ヒルト!?間に合って――【禍乃白矛】!!」
「――お兄…ちゃん……?――駄目……駄目だよ…お兄ちゃんッ!!」
六人全員の声が耳に届く――。
福音の機体が揺らぎ、四枚の翼から一斉に光が放たれ――強烈な閃光がこの空域周辺を飲み込んでいくその一瞬――。
まるで、世界が止まったかの様な――そんな感覚が俺を襲った。
後書き
関西は今日からIS二期
酷い内容らしいからどれだけ酷いか見極めねば
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