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IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》

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【第151話】

 
前書き
福音戦終わり

戦う訳じゃないのに福音戦終わりとはこれいかに 

 
 各種装甲が破損し、あらゆる所から紫電を放つ福音にゆっくりと近づく。

 一夏と篠ノ之の攻撃により、軍用機とはいえ既にエネルギーがほぼ枯渇しているように思えた。

 篠ノ之が切断した翼も生えてこなく、接近したにも関わらず残り三枚の翼の砲口が開く様子も無い。

 ただ、暴走している筈なのだが、福音には既に戦意は無く、見た限りは感情の無い機械の様だが怯えている様にも窺えた。

 福音の操縦者も、気を失っているのかバイザーから窺える表情は目を閉じて、浅く呼吸を行っていた。

 何はともあれ、操縦者が無事なのはやはり絶対防御の効果か、はたまた福音が彼女を守ったか――。

 と、ムラクモも準備が出来たのか、彼女の声が聞こえてきた。


『ヒルト、福音との対話準備完了よ?――届くかどうかは貴方次第……でも、私は信じてるから』

『ありがとうムラクモ。――嫁に来るか?』

『……バカじゃないの?……私、実体無いのに無理に決まってるじゃん……』

『それもそうか。悪いな、ムラクモ――じゃあ福音に話してみる』

『…………』


 ムラクモの返事が無いまま、通信が切れた。

 そして、そっと福音に手を伸ばす――。

 装甲に触れると共に、俺はゆっくりと語りだした。


「……悪いな福音。止める為とはいえ何度も何度も攻撃し、傷付けてな。痛かったか?」

『――――』


 語りかけるが返事はなく、憤りを感じた篠ノ之が――。


「有坂!やりたい事とはそんな事か!?馬鹿らしい……さっさと止めをさせ!――ささないなら、ボーデヴィッヒ!AICを解除しろ!」

「……篠ノ之。戦うだけが戦いじゃない。いいから黙って見てろよ?ラウラ、任せたぞ」

「お、俺までAICで止める必要無いんじゃ――」

「黙れ織斑。お前もここで止めないと福音に止めをさすだろ?」


 背中からそんな声を浴びせられ、俺は篠ノ之にそう告げると再度福音に語りかける。

 ラウラは二人を拘束するようにAICを張り、ただただ俺のやることを見守っている。



「悪いな、中断して。――何で暴走したのか、俺には原因はわからないが……。訳もわからず暴走して怖かったよな?それにさ、急に暴走止める為とはいえ、俺達に撃たれ、斬られもすれば怖くない訳がない。……俺にも沢山殴られたしな、お前」


 子供をあやすように、諭すように語ると――またさっきと同じ様に時が止まる感覚に襲われ、視界が眩い閃光に襲われた刹那、また何処ともわからない場所に居た。

 だがさっきとは違い、隣にはムラクモが側に――。


「……近いうちにって言って、直ぐにまた会えたな、ムラクモ?」

「う、うん。――ここは福音のコアの中よ?この先に福音が居るはず」


 辺りを見渡すと、子供が遊ぶような遊具が所々に見えた。

 足元も、ふわふわした芝生で、雨が降ると滑りそうな感じだ。

 ムラクモが案内する形で、俺はその後ろを追従した。

 歩く度に、ムラクモの結んだポニーテールが揺れ、まさに馬の尻尾を思わせる――そんな感じに規則よく揺れていた。


「……なあムラクモ。コア毎にやっぱり風景が違うのか?」

「ん?……そうね、違うけど、結構搭乗者の心理状態も反映される時もあるから、一概にはコア毎に違うとは言い切れないかな?」

「成る程……。こうなったら全コアの中を覗いて見たくなるな」


「ふふっ。コア巡りの旅?――コア・ネットワーク経由なら案外難しくないかもね?一応私たち、いつも情報交換出来る様にはなってるし」

「へぇ……じゃああまり寂しいって思わないのか?」

「……どうかな?――なんて、やっぱり寂しい時は寂しいよ?――搭乗者と話が出来るコアってあまり居ないからね」

「……そっか。実体化出来るなら寂しくなくなるのにな」


 そんな何気無い一言に、ムラクモは反応する。


「……そうね。いつかは貴方の世界をこの目で見てみたいな。――私たちは、ISを展開した時に映し出されるハイパーセンサーの映像とか、録画された映像しか見れないから殆どが戦いばかりだし……」


「そうか……模擬戦しかり、武装テストしかり、大会しかりと殆どが戦いだもんな」

「……うん」


 寂しそうに返事をするムラクモの頭を、撫でる。

 その行為に驚き、ムラクモは俺の方へと振り向くが――。


「ん……何だか、凄くぽかぽかする」

「そうか?……てか、ここならムラクモに触れられるんだな」

「……私も、今初めて知ったよ。――でも、嫌じゃないよ?」


 そう告げるムラクモの頬は、他の子みたいに朱色に染まっていた。


「……そろそろ福音の居る場所だよ?ヒルト、気をつけてね?」

「……あぁ、一応気を付けるよ」


 ムラクモと共に歩いて行くと、泣いている小さな女の子を見つけた。

 多分、この子が福音なのだろう。



「ムラクモ、コアによってやっぱり小さい子から大人の女性まで様々なのか?」

「……大体は見た目中学生ぐらいから高校生までが多いよ?――私はどう見える?」

「う?……女子高生ぐらいか?」

「うん。そうだよ?貴方とお似合いの年齢ぐらいかな?なんてね」


 ペロッと舌を出すムラクモを見て、頭をかく。

 何気にムラクモには好きって言われたんだよな……。

 そんな風に考えていると、慌てたようにムラクモが口を開き。


「ほ、ほら。早く対話しなさいよっ」

「……そうだな。危険は無いのか?近づいたら福音のビームが襲うとか」

「……大丈夫。もうエネルギーも殆ど無いみたいだし。……でも、このまま放置すると多分【最終形態移行(ファイナル・シフト)】まで行う可能性があるから」

「……成る程、そうなったら俺は少なくとも一夏と篠ノ之に責められるな」


 容易に想像出来る……篠ノ之が俺を責める光景が。

――何気にさっきまで落ち込んでいたからある程度反省するのかとも思ったんだがなぁ……。

 まあ今はそんな事を考えている場合じゃない。

 ここから眺めていても仕方がないので福音へとゆっくり近付いていく。

 その足音に気付いた福音は、顔を上げてごしごしと涙を拭った。


「ぐすっ……。おにぃちゃん、だぁれ……?」


 不安な表情を浮かべながら俺に問いかける福音。

 幼い少女の様な容姿を、涙で濡らしていたので罪悪感がわくが――。


「……お兄ちゃんは、さっきまで君を攻撃していたお兄ちゃん……だ」

「……ひっ……!?」


 正直に福音に告げると、福音の表情が恐怖の色に染まる。

 目は見開き、ガタガタと震え、腰が抜けたのかぺたんと座り――。


「……怖いよな?俺の事……」

「あ……あ…ぁ……ぅ……」


 声にならない様なうめき声をあげる福音に、俺の心は更なる罪悪感で埋め尽くされる。

 クサナギで殴り、天狼で斬り……ヤバい、流石にこれは……。

 今まで彼女にしてきた事を振り返ると、酷く胸が痛む思いだった。


「……お兄ちゃんが怖いなら、あのお姉ちゃんが替わりに話をするけど……?それか、もっと離れようか……?」

「ぁ……ぅ……ひっ……」

「……ごめんな、怖い思い沢山させて……」


 それだけしか言えなかった……。

 でも、その俺が謝った言葉が以外だったのか……目をぱちくりさせながら――。


「……いたいこと……もぅしない……?」

「え?……うん。痛いことしないし、誰にもさせないさ、これがな」


 言って、笑顔で応えると一瞬ビクッと身を震わせる福音。

 だが、少しだけ心を許したのかまだぎこちないが笑顔で返してくれた。

 そっと手を伸ばすと、やはり身を強張らせ、また痛いことされると思ったのかきゅっと小さな目を瞑った。

――だが。


「ぇ……?」

「……初めてだろ、多分こんな事されたの」


 頭を撫でられた事に、驚きの表情を見せる福音。

 最初は怖がっていて、痛いことされると思っていたようでまさか撫でられるとは思っていなかったようだ。



「おにぃちゃんの手……つめたぃ……」

「う?……悪い、冷たいの嫌いだったか?」

「ぅぅん。……ちょっとつめたくてびっくりしちゃったの。……ぇへへ」


 撫でられるのが心地いいのか、目を閉じ、ふわふわとした笑みを浮かべながらその感触を楽しんでいる。


「ごめんな、福音?――でも、君を止めないと沢山の人が傷付くと思ってお兄ちゃん、君を叩いたんだよ。……悪いお兄ちゃんだな、俺」

「……でも、おにぃちゃんの手……すき……」


 言って、撫でていた手を両手で握る福音。

 その行為に驚いたが、俺は直ぐに柔らかな笑みを返した。


「……おにぃちゃん。ごめんなさぃ……」

「ん?どうして謝るんだ?」

「……いっぱぃ、めぃわくかけちゃった」

「……暴走の事か?……望んで暴走した訳じゃないだろ?」

「ぅん……。ぃぃ子にしてたんだけど……【なにかがあたしのなかに入ってきて】こわくなっちゃって……」

「…………」


 何かが……そう告げる福音は、当時の事を思い出したのかまた身体が震え始めた。


「……福音、もう大丈夫だ」

「おにぃ……ちゃん?」


 震える福音を、そっと抱きしめて髪を撫でる。


「もう君は暴走したりなんかしない。――仮にまた暴走しても、お兄ちゃんがまたこうやって君を抱きしめに来るよ。……だから安心しなよ。――さっきまで叩いてたお兄ちゃんがこんな事言うの、おかしいかもしれないがな、これが」

「……ぅぅん。おにぃちゃん……ぁりがとう……♪」


 震えが止まった福音。

 そっと離すと、少し眠たげな表情を浮かべると――。


「ん……なんだかねむくなってきちゃった……」


 こしこしと目を擦る福音――と、これまで黙っていたムラクモが口を開く。


「ヒルト、福音の活動限界が近い。――そろそろ戻らないと」

「……そっか。福音、一人で眠れるか?」

「ん~……ぃぃ子だからだいじょぅぶ……」


 うとうとし始める福音の頭を撫で、俺は立ち上がると――。


「……おにぃちゃん……?……また、会いにきてくれる……?」

「……もちろんだ。また会おうぜ、次はもっと色んな話して遊ぼう」

「ぅん……♪……やくそく♪」




 年相応の少女らしさの笑みを浮かべる福音は、眠気には勝てずにそのまま眠りにつく。

 光の繭に包まれ、福音はふわりとその場で浮くと規則正しい寝息をたてた。


「……ヒルトのロリコン」

「……ムラクモ、別に俺はロリコンじゃないぞ?」

「どうだか……ふん」

「何だよ、ヤキモチか?」


 冗談でそう言うと、顔を真っ赤にしながら。


「う、自惚れないでよッ!ヤキモチ何か妬かないもんっ!!」


 言って顔を背けるムラクモは、その耳まで真っ赤に染まっていた。

 そんなムラクモを見、苦笑していると――。


「わーらーうーなーッ!!」

「ははっ、悪い悪い――じゃあ戻るか?」

「……むぅ。じゃあ……はい」


 そう言ってドアを粒子形成させ、開くとそこにはやはり光の奔流が流れていた。


「帰りはやっぱりドアなんだな」

「何?エスカレーターの方がいいの?」

「いや、そうじゃないが――何て言うか、こういうのでたまにキスされて現実に戻るのもあるだろ?」


 そんな何気無い言葉に、顔を真っ赤に染め上げ、怒りながらムラクモが――。


「ば、バカじゃないの!?そんな訳ないでしょ!――とっとと帰りなさいよ!えいっ!」

「ぅおっ!?ば、バカ、蹴るなよなああぁぁぁ……………」


 ムラクモに勢いよく尻を蹴られ、呪詛の言葉を叫びながら光の奔流に飲まれていった――。

 残されたムラクモが、一人呟く。


「……バカ、そんな簡単にキス出来るわけないじゃなぃ……」


 そっと指で自身の唇をなぞる――だが、その行為が恥ずかしくなり、ムラクモ自身も福音のコアから姿を消した――。



――福音との交戦空域――


 再び時が戻る感覚が全身を伝い、意識が覚醒すると触れていた福音の装甲が消え、操縦者が重力に引かれようとしていた――。


「ぅおっ!?いきなりかよ!!」


 落ちそうになった操縦者を掴み、お姫様だっこして抱えると――。


「ヒルト、どうやら終わった様だな?」

「ん?――あぁ、終わったさ……長い一日だったな、皆」


 そう告げる俺の周囲には、皆が集まっていて――。


「すげぇなヒルト。どうやって福音を機能停止させたんだ?」

「……別に、特別な事はしてないさ、これがな」


 一夏の問いに、俺は普通に答える。

 特別何かした訳じゃない、ただ謝って、頭を撫でてハグしただけだしな。


「ふん。どうせ機能停止寸前だったのだ。有坂が何かをしたから福音が止まった訳ではないだろ?その前の一夏と私の連携が効いたんだ」

「……かもな」


 まるで最初から二人で戦っていたみたいに言う篠ノ之に、皆も微妙な笑顔で応えた。


「ですが、漸く終わりましたわね、ヒルトさん」

「あぁ。セシリア、パッケージ失ったが大丈夫か?」

「えぇ、あれぐらい些末な事ですわ。皆さんが怪我をなされる方がわたくしは嫌ですから」


 そう髪をかきあげ、ふわりと靡くその金髪は優雅に夕闇の朱色を浴びて輝いていた。


「あんたも、もう次からは一人で行かないでよ?皆がいるんだし」

「……そうだな。何にしても鈴音、助かったよ」

「……わ、解ればいいのよ。あたしに感謝しなさいよね。とりあえず、今度ご飯奢りなさいよ」

「き、気が向いたらな」



 曖昧な返事をする俺に、納得いかない様な表情を浮かべたが、次の瞬間には八重歯がキラリと見える満面の笑みを浮かべていた。


「ヒルト、無茶はしないでよ?皆も心配しちゃうし……ね?」

「ん……可能な限りは善処するよ、シャル」


 そう伝えると困ったような笑みを浮かべるシャル。

 だがそんなシャルに、思いきって笑顔で応えるとびっくりし、別な意味で困ったような表情になり、頬を赤く染めた。

 もしかすると、ただ夕闇の朱色の光を帯びていただけというオチかもしれないが。


「しかし、結局福音は何故暴走をしたのだろうな……」

「……わからん。ただ、ISってそんな簡単に暴走する代物じゃない――だろ、ラウラ?」

「う、うむ。……ヒルト、あまり私を心配させるな」

「……ははっ、これも可能な限りは善処するさ、これが」


 ラウラにそれだけ告げ、福音の操縦者を抱き抱え直すと。


「……この人、大丈夫かなぁ?」

「……脈拍も正常だし、問題ないだろ?念のため直ぐに検査はするだろうが」


 美冬が操縦者の顔を覗き込む。

 よく見ると、物凄く美人だったりする。


「……ヒルト、鼻の下伸びてる」

「う?――伸びてないって、未来」

「……どうだか。――皆、そろそろ戻ろ?一応作戦完了だし……ね?」


 そう言う未来に、皆が軽く頷くとゆっくりと花月荘へと戻っていく皆。

 俺は再度空を眺める。

 夕日は地平線の彼方へとゆっくりと沈み、深淵の夜へと誘う。

 だが、そんな深淵の空からは星々の光が降り注ぎ、月が明るく海を照らすだろう。


「お兄ちゃーん、置いていくよー?」

「ん?……あぁ、今行くよ」


 福音の操縦者を抱き、俺は空を飛ぶ――。

 一年生皆が待つ花月荘へと――。 
 

 
後書き
何だか最終回みたいな書き方しましたが、まだまだ続くよ

てか駄文すぎる

おはずかしや

とりあえずタイマンバトルが三票 
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