IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》
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【第334話】
駆け足で自室へと戻る。
まだ胸がドキドキしてる……キスをすると、暫くはこの早鐘が止まることはない。
本日三度目のキス――最初は未来、次にセシリアで三回目がシャル。
正直、今日起きた事件ですら吹き飛びそうになる――。
荒い息を整えつつ、自室手前までやって来た。
幸いな事に、戻る途中で誰かと出会す事がなかったのは幸運といっていいのか悪いのか……。
多分、俺の顔は今赤いかもしれない――指摘されて上手くはぐらかせる自信は無かった。
軽く深呼吸をし、呼吸を整えると俺はドアノブに手をかけて回す。
開いたドアからそのまま部屋に入ると、第一声が聞こえてきた。
「よぉ、おかえり。 ――制服の上着、何で着てないんだ?」
呑気な声と共に、荷物をまとめていた一夏が顔を俺の方に向けた。
確か、明日には修理業者が来るって言ってたな。
そして、一夏の指摘通り上着を着てない事に気づいた――そういえば、シャルに上着を羽織らせたままだった。
「ただいま。 上着はちょっとな」
言葉を濁すように呟く俺を不思議そうに眺めながらまた荷物を纏め始める一夏。
「……一夏、少しいいか?」
「ん? 何だ?」
ある程度纏まったのか、部屋に戻る荷物を床に置き、ベッドに腰掛ける一夏。
「……いや、何で今日……あのまま避難しなかったのかが気になってな」
俺の言葉に、一瞬何の事だかわからないといった表情を浮かべた一夏だったが、俺の言った意味がわかるとゆっくり口を開いて言葉を紡ぎ始める。
「……男が簡単に背を向けて逃げるのはカッコ悪いだろ? ……狙いは俺なんだ、だから俺があいつらを倒せば、皆を守れるし――」
一夏の口から出た言葉に、頭が痛くなる思いだった。
ここまで来てカッコいいだの悪いだのを気にする方が、俺にはカッコ悪く見えるから。
人間、誰しも最初からカッコいい人間等何処にも居ない。
見た目かっこよくても、中身が無ければ幾らカッコつけても滑稽にしかならないからだ。
……一夏には、それが理解してない気がした。
軽くこめかみを押さえると、扉をノックする音が部屋内に響き渡る。
多分楯無さんか鈴音だろう。
玄関に近かった俺が迎い、そのドアを開けるとそこに立っていたのはやはり楯無さんだった。
「おねーさんの登場ー。 ……ヒルト君、織斑君はまだ居るかな?」
「居ますよ?」
「うん。 じゃあお邪魔するわね?」
絶やさぬ笑顔で部屋へと入る楯無さん、俺はドアを閉めるとその後ろから彼女の後を着いていく。
「織斑君、少し良いかしら?」
「え? 手短に終わるのでしたら――」
「うふふ、残念だけどそういう訳にはいかないのよ。 ……どうして君は、おねーさんに着いてこなかったのかしら?」
「…………」
オータムの一件後、何があったかは知らないが――多分楯無さんは美春を母さんに預けてから一夏を織斑先生の元へと送るつもりだったのかもしれない。
「……皆が戦ってるのに、一人俺だけが安全な場所に逃げるなんて出来ないからです。 そんなの、男としてカッコ悪いですし、俺はそこまで臆病じゃないですから」
視線鋭く、キリッとした表情のまま告げる一夏。
流石に楯無さんも深い溜め息が足元へと落ちていく。
「……あのね織斑君? あの組織の狙いは君の白式だったのよ? ……だからおねーさん、君の護衛を含めて色々教えたりしてたのよ。 ……まずその説明するわね?」
そう言って今回の事件の概要を分かりやすく説明を始める楯無さん。
亡国機業の第一目標が白式という情報を入手したため、一人部屋である一夏の部屋に本来なら同居する予定だったが、一応女の子が男子一人の部屋に行くのは色々不味いからと一夏の部屋に細工してシャワー関連をダメにしたとか何とか。
まあ結論、一夏の部屋のシャワーの出を悪くした犯人は楯無だという事実が露呈した。
「――という訳なのよ」
「はぁ……。 てか、何でわざわざ俺の部屋のシャワーの出を悪くしたんです?」
「ん? それは君と二人っきりだとか弱いおねーさんの貞操の危機かなーって思って、だからヒルト君の部屋に行くように仕向けたって訳」
……頭が痛い……もしかすると織斑先生もグルだったのだろうか?
……まあいいか、同居も今日までなんだし、深く考えても悩みの種を増やすだけだし。
「まあその話は置いておく事にして――君は臆病がどうとか言ってるけど、君の迂闊な行動が皆を危ない目に巻き込むのよ?」
「……何でです? 俺は別に迂闊な行動は――」
「してるわよ?」
一夏が言い切る前にもう一度口を挟み、指摘する楯無さん。
一夏に関しては今一自分の行動がどう皆を危ない目に合わせたのかがわかっていないようだった。
「狙いが君の白式であるなら、君はそれを守る義務がある。 ……だけど、あの女が逃げた後、君はいつの間にか私の側から居なくなってたわよね? 何故かしら?」
「それは――俺にも戦える力があるからです。 狙いが俺なら、襲ってきた奴等を俺が倒せば――」
「倒せなかったでしょ? それどころか、君は何も出来ずに一蹴されたって報告書で読んだわ」
「…………」
報告書に関してはあの場に居た全員の提出が求められたため、俺、セシリア、ラウラ、美冬、未来、一夏に篠ノ之とその場で起きたことの状況や詳細を細かく報告書に書き記し、提出した。
――とはいえ、報告書の書き方に慣れてない俺や一夏、篠ノ之のはあまり役に立たなかったかもしれないが。
多分楯無さんが見た報告書はラウラかセシリア辺りだろう――美冬と未来は、遅れた為あまり詳しくは書けなかったからだ。
「前にも言ったけど、君は弱いという事を自覚なさい。 ……ううん、君だけじゃない、最初は誰しも弱いものよ? 君が守るという事にどれだけ憧れているかは私にはわからない。 ……でも、人一人が出来る事なんてたかがしれてます。 ……君は君で、一歩ずつ確実に進めばいいのよ」
「……でも、俺だって戦う力はあるんだ。 見てるだけなんて俺には出来ねぇ……!」
喉の奥底から出た力強い言葉……今はまだ一夏に言葉の意味が伝わらないと悟ったのだろう、小さく息を吐くと楯無さんは。
「……なら、貴方の好きになさい。 ……ただ、覚えておいてね? 君が勝手をすれば、織斑先生だけじゃなくヒルト君や他の代表候補生、学園全体を窮地に落とすかもしれないことを……。 じゃあ、おやすみなさい。 ヒルト君、君も早く寝なさいね? 身体の疲れ、溜まってるでしょ?」
「あ、はい。 ……まあ明日は振替休日ですし、ゆっくり休みますよ」
「うん。 君はたまには身体を休めないとね? それじゃあおやすみなさい」
そう言って部屋を後にした楯無さん。
しんと静まりかえる室内に、一夏の言葉が反響するように響く。
「……窮地に? 窮地に落ちたことなんてあったか、ヒルト?」
首を傾げてそう言う一夏――窮地という程の事は今はまだ無いが、一人の無茶で色々事態が不味いことにはなる。
「……とりあえず、お前はもう少し勝手な事をするなって事だ。 正直、次また亡国機業が来てお前の機体を狙った場合、次も上手く撃退出来る訳じゃないんだからな」
「大丈夫だ。 次来たときは絶対負けねぇ。 同じ手は何度もくらわねぇよ」
……その根拠の無い自信が一体どこから来るのかが非常に気になる。
……楯無さんも呆れる訳だ……。
頭に走る痛みに、こめかみを再度手で押さえると一夏は――。
「どうしたんだヒルト? 頭痛なら薬飲んどけよ?」
……そう容易く薬を飲んで治すって訳にはいかないんだが。
薬なんか、色々な副作用があるから緊急の時以外は使いたくない。
余計に頭が痛くなるなか、また室内に響き渡るノックする音。
「……こんな時間に誰だ?」
一夏の言葉を他所に、俺は歩いてドアを開けると案の定そこに居たのは鈴音だった。
ただ――いつものツインテールではなく、髪をそのままストレートに降ろしたいつもと違う髪型の鈴音だった。
後書き
もうすぐ一年か……ここに来て
モッピー知ってるよ。
一周年記念って事。
_/⌒⌒ヽ_
/ヘ>―<ヘヽ
((/ ̄ ̄ ̄\))
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/ | | //ヽ ヘ
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レ |/ レ| N\|||
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さて、一夏はどうなるのか……
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