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IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》

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【第298話】

――シャワールーム――


 あれから時は流れて既に夜の七時を回っていた。

 俺は現在、シャワーを浴びてる最中――一夏はこの時間は篠ノ之とご飯らしい。

 篠ノ之と言えば、楯無さんから聞いたのだがちゃんと訓練に来たらしい。

 ……内容は、一夏と同じシューター・フローとマニュアル操作をメインに据えてやってるとか。

 ……何にしても、これで少しは変わってくれると有り難いのだが――主に精神面的に。

 程よい熱さのシャワーを浴び、洗髪を終えるとそのままシャワーに打たれながらまた考え始める――。

 ――【イザナギ】……だったか、あのISの名前は。

 あんな感じで世に出ずに消えていったISはいっぱいあるんだろうな……。

 村雲も、下手すれば世に名前すら出ずに葬りさられた筈の機体だし……。

 シャワーを止め、掛けてあったタオルに手を伸ばして頭を拭いていると不意にシャワールームの戸が開く音が聞こえた。


「はーい。 お背中流しに来たわよ、ヒルト君♪」


 振り向いた先に居たのは、ボディータオルに身を包んだ楯無さんだった。

 茶目っ気たっぷりの笑顔の楯無さんに、俺は――。


「……背中ならもう洗い終わりましたよ」

「あら? ……意外と動じないわね。 ……お姉さんに裸を見られてるのに」


 正面には振り向かず、顔だけを楯無さんに向けながら――。


「……正直、裸だけなら美冬に未来にシャル、ラウラと見られてますからね。 ……別に突起してる訳じゃないですし」


 それだけを言うと、再度頭を拭き始める――と。


「うふふ。 シャワールームって狭いわよねぇ……? こう、密着しないと二人一緒に居られない感じ……?」


 そう言って、腹部に腕を回し、背後から抱きついてくる楯無さん。

 急な不意打ちに、背中から伝わる柔らかな乳房の膨らみがタオル越しに伝わってきて下半身に血液が集中し始める――。


「どわぁっ!? な、何を――」

「うふふ。 お肌とお肌のふ・れ・あ・い♪」


 そう言って指で腹部をなぞり、その動きは徐々に上へと向かっていく――。


「ちょ、ちょっと!? ダメです! あんまり思春期の男子をからかわないでくださいッ!!」

「えー? ……お昼はヒルト君、スゴくモテモテだったじゃない……? お姉さんだけのヒルト君だと思っていたのに……」


 若干わざとらしく聞こえる声――と、指が胸板をなぞり始めた。


「……ッ! や、やめて……ください……ッ」

「あら? ……もしかして、ヒルト君って胸を触られるのが苦手かな……?」


 反応は火を見るより明らかである――俺自身、胸を触られるのが非常に苦手だ。

 美冬にも知られてない弱点の一つで、それを知った楯無さんは。


「うふふ♪ ……苦手、なんだぁ……?」


 そう言って軽く左耳に吐息を吹き掛けるその行為に、ぞくぞくっと何かがこみ上げる感覚が襲う。


「……ッ。 お、怒りますよ……これ以上からかうのなら……ッ!」


 流石に理性が崩壊すると思い、少し冷たい口調と怒気を込めていい放つ――と。


「……ご、ごめんなさい……。 お姉さん、少し調子に乗りすぎちゃったわね……」


 流石にやり過ぎたと思ったのか、俺がキツく言い過ぎたのか……明らかにテンションが低くなる楯無さん。

 内心、罪悪感に満たされ、頭をかきながら――。


「……背中、洗ったら出てくださいよ? もうからかったりしなければ怒りませんし……てか、思春期の男子、からかうといつか襲われますよ?」

「……ごめんね、ヒルト君。 ……ちょっとだけヤキモチ妬いちゃったから」

「……はい?」

「――何てね、冗談よ冗談♪ 何だか弟が皆に取られたような……そんなお姉さん的立場からよ♪」


 後ろからそんな声が聞こえ、何となくこれからもからかわれ続けるのかなとふと頭を過る。

 ……からかうだけならいいけど、こういう性的にキツいのは……。

 等と思っていると、ボディーソープをつけたスポンジで俺の背中を擦る楯無さん。

 力加減が絶妙で、心地好さからか少し眠気がやってくる――。


「うふふ、ヒルト君って背筋スゴいね? 胸板もそうだし、腹筋も割れてるし……このこのっ、誰に見せる為に鍛えてるのか白状なさい♪」

「べ、別に見せるつもりでやってる訳じゃないですよ。 ……まあ、IS扱う様になってから更に運動量は増やしましたからね。 何がどこでISに役に立つかわからないですし」

「そうねぇ~。 ヒルト君って、周辺視野とか瞬間視も高いでしょ? この辺りは学園で調べたりしないけど、キミの反応の速さを見ればわかるもん、お姉さんは♪」


 何時ものように楽しそうな声で告げる楯無さん。

 見ただけでわかるって、やっぱり天才と呼ばれる分類なのだろう、彼女も。


「ふふっ。 お姉さんは特別天才って訳じゃないわよ? 努力家だもん、才能無いし」


 まるで心を読まれたかの言葉に、少しギョッとするも――。


「……どんな時でも練習や訓練は裏切らないさ。 ……まあ、訓練し過ぎると身体の何処かを故障する可能性もありますから適度に休むのが一番――一夏と篠ノ之は逆に、やらなきゃまずいが」

「うふふ。 ヒルト君も彼や箒ちゃんには手厳しいわね」

「……甘やかすのは周りの環境ですからね、ランクの低い俺が言えばなにくそーって気持ちにもなりやすいでしょうし」


 そんな言葉が反響する――と、背中を洗っていた手が止まり、楯無さんは背中を洗い流した。


「ふふっ。 ちゃんと洗い流したからね? ……じゃあ、先に上がらせてもらうわ♪」

「了解です。 ……上がったらまた寝袋か……肩が凝るかも」

「うふふ。 じゃあお姉さんの抱き枕になってくれる?」

「……っ!?」


 そんな衝撃的な言葉に、後ろを振り向くとぷにっと頬をつつかれ――。


「冗談よ冗談♪ 本気にしちゃダメよヒルト君♪」


 そう言って立ち上がり、シャワールームのドアを開くと――。


「ヒルト君」

「はい?」

「……次からはちゃんと前も隠さないと、お姉さんにこっそり観察されちゃうわよ♪ ……ち、ちょっと恥ずかしかったけど……」


 そんな言葉を残して楯無さんはシャワールームを後にした。

 ……またもや女子に見られてしまった……。

 ……まあ、別にいいけど。

 そう思い、身体をタオルで拭くと俺はシャワールームを出ていった……。 
 

 
後書き
そろそろ休憩しようかなと思ったりしてます

でも書きそうな予感 
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