IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》
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【第156話】
前書き
リベンジバトル
のつもりが、これを書くのも重要と気づいて先に書いたり
駄文ですがどうぞ
次の日の早朝。
窓からはチュンチュンと雀の鳴く声が聞こえ、微睡みを楽しんでいると――。
「ヒルト、起きなさ~い」
「……んにゃ。……母さん?どうした……あふ」
「うふふ。昨日お父さんが言ったでしょ?今日お母さん達はアメリカに戻るの。――だからその前に……誕生日おめでとう、ヒルト」
眠い目をこすり、起き上がると同時に俺は母さんから三人分のプレゼントを受け取った。
「……ロザリオ?」
「そうよ?銀細工のね。――三人お揃いだけど、真ん中の部分が違うの」
そう言って、俺はロザリオを眺めると紅、蒼、翠と真ん中の宝玉部分の色が違っていた。
「……何だか高そうだな」
「うふふ、そんな高価な物じゃないわよ?でも、【あなた達が危ない時には守ってくれる】。だから肌身離さず着けてなさいねぇ。因みに、紅がヒルト、蒼は未来ちゃんに、翠は美冬ちゃんにね?」
「了解……あんまりアクセサリー着けるの好きじゃないんだが――親父はどこだ?」
ロザリオを首にかけると、俺は部屋を見渡した。
だが、部屋を見渡しても親父は居なく、部屋の中は来たときよりも心なしか綺麗になってる気がした。
「お父さんはチェックアウトしにロビーに行ったわよ?先生方への挨拶は昨日の夜に済ませたけどねぇ~。――あ、クサナギの回収は昨日の夜中の内に終わらせたからねぇ。日本にいるアメリカ軍に回収させたから♪」
「……アメリカ軍に?クサナギのデータ盗られたんじゃ?」
「うふふ、盗られたとしても今のアメリカ軍じゃ、クサナギのコピーは難しいかなぁ?多分、デッド・コピー――劣化品が出来ると思うし……無駄金になるわよ」
そんな風に告げる母さんは、ふわふわとした欠伸をし、口元を手で隠す。
「……母さん、PPSだっけ?あのパワード・スーツ」
「ん?そうよぉ~。どうしたの?」
「いや、あれがあれば学園の生徒も気軽にISの訓練も出来るんじゃないかと思ってな」
「……そうね。……でも、あれを発表すれば無用な争いを生む。民間企業の重機扱いぐらいになるならお母さんも発表するけど、今の世界だと確実にあれは【軍事の要】になるわよ。……悲しいけどね。現にISもそうでしょ?」
「……そうだが。母さんもそんな村雲に武装させてるだろ?」
一瞬、言ってはいけないことを言った気がし、ハッとした表情になる俺。
だがそんな俺に対して、母さんは柔らかな笑みを浮かべた。
「そうねぇ……。これに関しては、ヒルトに責められてもお母さん文句は言えないわね。……でもね、お母さんも好きで武装した訳じゃないって事は覚えててね?……ISで培った技術、それを医療転換出来ればとお母さんは思うの」
「医療転換……?」
「えぇ。例えばフィッティングとか、PPSにもあるけど操縦者に合わせるでしょ?あれを義足や義手に応用出来れば、成長期に合わせて作り替えたりとかしなくて済むでしょ?費用面でもだいぶ助かると思うの」
「……へぇ。何だかんだで母さんって結構考えてるんだな」
「そうよぉ?……医療だけじゃなく、他にも色々考えて、その手の方とも連絡を取り合ってるの。偉いでしょ」
そう言って胸を張る母さん。
たぷんっと乳房が揺れるのを見て思わず目を逸らすと母さんが――。
「あらあら?お母さんで欲情しちゃダメよぉ?美冬ちゃんなら良いけど」
「……いや、母親も妹にも欲情したらダメだろ。……ったく、たまに母さんこんな事言うよな」
「うふふ。何だか美冬ちゃん、貴方がモテるのが楽しくないみたいね♪お母さんとしては気にしないんだけど……娘が増えたみたいで。皆いい子よね」
楽しそうに告げる母さん。
うーん……まあ兄に彼女がってなれば複雑にもなるよな――多分。
……確かに、そりゃセシリアとラウラは出会いが悪かったが今は微塵も感じさせないぐらい丸くなったしな。
シャルに関しちゃ、元来からだろう……若干依存体質な気もしなくはないが。
未来に関しては言うことはないな……うん。
ふと、昨日のキスを思い出し、指で唇に触れると母さんが――。
「そういえば――ヒルト、昨日唇にグロスついてたわよ?ヒルトって唇にリップグロス塗ってたかしらぁ?」
「ぬ、塗るわけないだろ」
言って、顔を背けるとあらあらといった様に口元を手で隠す。
「うふふ。じゃあ何で、【ヒルトの唇にリップグロスが】ついてたのかしらぁ?」
「……い、いいじゃねぇかよ。グロスがつきたかっただけだろ?うんうん」
自分でも何を言ってるのか解らずに、無理矢理うんうんと頷く。
「うふふ。まあ良いでしょう……また後日未来ちゃんに訊けばわかることだしね♪」
ふわりと髪を靡かせ、荷物を手に取る母さん。
未来という名前が出て、狼狽する俺を楽しそうに見ていると部屋のドアが開く。
「真理亜、チェックアウト完了したぞ――っと、ヒルト起きたのか」
「正確には起こされただけどな。美冬に言わなくていいのか?」
「……美冬ちゃん、寝てるんじゃないかな?」
……確かに、この時間なら寝てるだろうな。
「……仕方ない、起こすか。親父と母さんはロビーで待ってて?美冬だけ起こしてくる」
「あらあら?こんな時間に女の子の部屋へ?……夜這いならぬ朝這いね♪」
「ワッハッハッ、先生にバレたらまずヒルトがヤバいな!」
「……だが、起こさないと美冬後悔しそうだしな」
そう言うと、部屋のドアを開けて通路の確認をする。
「じゃあヒルト、美冬起こしてこいよ?バレたら洒落にならんがな、ワハハッ」
「うふふ。でも美冬ちゃんの部屋は未来ちゃんとシャルちゃん、ラウラちゃんだからその三人にバレそうになったら唇を奪いなさいな♪朝だから夢ぐらいにしか思わないわよぉ♪」
「……何でキスを推奨するんだよ。言えば多分理解してくれるさ、皆」
それだけを告げ、俺は部屋を後にする。
史上最大のステルスミッションが今ここに開催され――る訳ではなく、ただ美冬を起こせば良いだけだから仰々しく言わなくていいか。
それから歩いて数分で美冬達の部屋へと到着。
先生の見回りをIS部分展開し、そこから光学迷彩を使用して遣り過ごすというやり方で何とかここまで来れた。
長時間の光学迷彩使用は流石に時間外IS使用の適用で面倒になるため、長い時間は使えない。
周囲を警戒し、ドアを開ける――と。
ヒュンッと空気を切り裂く音が響き、頭上を何かが通過――恐る恐る振り向くと、壁に突き刺さるナイフ――。
「……こぇぇ……ッ」
よく見ると、簡易トラップが仕掛けられていて、ドアが開くとナイフが射出される仕組みになっていた。
こんなトラップを仕掛けるのは多分ラウラだろう。
不審者対策かはたまた別の対策か……。
突き刺さったナイフを抜き取り、近くのポスターを移し換え、傷跡を目立たなくさせると今度こそ部屋へと侵入した。
部屋へと入ると、布団が四枚敷かれていて、規則正しい寝息が聞こえてきた。
だが、新たな問題が生まれた。
……皆、布団を被って寝てるため、一人ずつ捲って確認しなければいけない。
若干二名は生足が出ているのだが、室内が暗くて全く誰の足かわからない。
白い足ならシャルかラウラだというのは解るのだが……。
……ともかく、まごまごしていると時間が過ぎるので抜き取ったナイフをお菓子とトランプが散乱した机にソッと起き、忍び足で手前側の布団へと移動した。
……生足出てる方を選ぶか、はたまたすっぽり布団にくるまった方を選ぶか……。
……生足から行くか、決して疚しい気持ちで選んだ訳じゃないぞ。
そっと布団を捲る――刹那、手首を掴まれ、静かに捻り倒された。
「フッ。この部屋に侵入して来るとは……不審者め。……貴様の気配など侵入した時点で――」
「……ぐぅうっ、ラウラ……参ったから勘弁してくれ……」
「貴様……気安く私の名前を――……ヒルト……か?」
「そ、そうだよ……」
「ふっ……戯言を、ヒルトはこんな朝早くにこそこそと部屋に侵入等――」
「わ、訳があって美冬を起こしに来たんだよ……!」
何とかわかってもらおうとするのだが、完全に技が入り、少し捻られるだけで全身に激痛が走る……。
しかも、顔が見えないから余計に信用されなかった。
――と、手前側の布団にくるまった方が騒ぎに気付き、眠い目を擦って起きた。
「……ラウラ、騒がしいよ……?何かあっ――」
「よ、よぅ……シャル」
「え?な、何でヒルトがここに居るの!?」
「む?シャルロット、本当にヒルトなのか?」
「う、うん。だって……暗いけど髪は銀髪だし……」
シャルがそう言い、ラウラも捻って押さえた俺の手を解放し、確認しに来る――。
「……!!す、済まないヒルト……まさかヒルトとは思わなくて……」
「い、いや。俺もこんな朝早くに侵入するのも悪いからな……しかし、完璧に決められてたからキツかったよ……ははっ」
乾いた笑いが部屋に響く――そして、シャルが口を開いた。
「……でもこんな時間にどうしたの?夜這い……じゃ、ないよね……?」
「む?……い、言ってくれれば私だってちゃんと準備して待っているのに……」
シャルの夜這いという言葉に反応したラウラが、恥ずかしそうに浴衣の裾を握って俯いた。
「……悪いが夜這いではないぞ?てかこの部屋で対象を一人に絞って夜這いとか無謀すぎる……てか、誰かに刺される」
「……ふふっ、そんなことはしないよ?……じゃあ、何で朝早く来たの?」
「美冬を起こしに来たんだよ。もう親父や母さんはチェックアウト済ませてロビーで待ってるからな……」
そう告げると、シャルとラウラの表情が一変し――。
「た、大変じゃないっ。――ラウラ」
「うむ。……美冬、起きろ」
反対側の生足が出ていた方の布団を剥ぎ取るラウラ。
そこにはだらしなく寝ている美冬の姿が――兄として、かなり複雑な思いなのだが。
「んんっ……もぅご飯の時間……?」
「違うぞ。美冬、起きて浴衣を正せ。教官達がロビーで待っている」
「教官……?織斑先生……?」
こしこしと目を擦る美冬。
まだ眠いのか大きく欠伸をした美冬。
ラウラがいつも織斑先生の事を教官と言ってるせいか、美冬は完全に織斑先生だと勘違いしている。
「……美冬、親父と母さん今からアメリカに戻るって。だから美冬を起こしに来たんだよ」
「……あれ?何でお兄ちゃんがここに……?――って、今の本当なの?」
「あぁ。俺は親父から昨日訊いて知ってたが……何にしてもロビーまで向かいたいが――ラウラ?」
俺がそう告げると、察したのかドアを静かに開け、通路の確認を行った。
「……クリアだ。――だが、見回りの先生方もそう簡単には行かせてくれないだろう」
「……うーん。やはり光学迷彩使用して一気に抜けるか……」
「それか、僕とラウラが囮になるか――だね?」
そう告げるシャルの提案を、俺は首を横に振って否定する。
「それはダメだ。前にも言ったがお前達が問題を起こして強制帰国になるのだけは避けたい。……てか、シャルは帰国=終わりだし、ラウラだって立場が悪いんだから」
「……そうだよ?私も、こんな事で二人、帰ってほしくないもん」
「……そうだね。ごめん、ヒルト、美冬」
「すまない……ヒルト、美冬。――だが、策が無いとどうにも……」
皆で唸っていると、寝ていた未来も起き上がった。
「んんん……朝から皆、うるさいよぉ……」
若干舌っ足らずな喋りで言う未来、眠り足りないのかやはり目を擦って――。
「おはよ、未来」
「うん……おはよぉ――――何でヒルトがここに居るの?」
ごもっともな質問だ。
意識ははっきりしてるが、特段俺が居ることで叫んだりしないのはありがたい。
「シャル、代わりに説明よろしく」
「え?……もぅ、仕方ないなぁ……」
頼まれ、口調ではそう俺に言うものの、声色は喜色に満ちていた。
そして、シャルが起きたばかりの未来へと簡単に現状の説明をすると――。
「……それなら、【音】を利用するのは?」
「「「音?」」」
「うん。人間って、何かしら音が鳴ったらびっくりしたり、それを確認しに向かうじゃない?――ほら、ゲームでもそんなのあるじゃない。壁叩いて回り込んで移動したりとか段ボール被ってとか――」
「……多分段ボールは上手くいかない気がするが、音を利用はいいかもな。――肝心の音をたてるものが無いが」
「それならとりあえずこれはどう?」
そう言って取り出したのがBB弾の入った袋だった。
「……ちょっと待て、何で未来がそんなもの持ってきてるんだよ」
「……好きで持ってきた訳じゃないよ。この鞄、私立高校に少し行ってた間に使ってたやつで、そこに居た男の子に何かサバゲー部?みたいなのに誘われた時に貰ったままずっと入ってたんだもん」
「サバゲー部?……未来がサバゲーねぇ……想像不可能だ」
「まあね。……何でもそのサバゲー部は放課後、どこともいえないフィールドで戦ってお金儲けしてるって噂だもん」
「……?何じゃそりゃ?――てか都市伝説になってる奴か?確か参加するだけで3000円ぐらい貰えるとか、現代の錬金術だとかたっくん等が言ってたな……」
俺としても、そんな怪しさ全開の都市伝説は信用したくない。
何でも有名企業が支援してるとか言うが、それなら何でメジャーにならないのかが疑問だし、多分名義貸しみたいな悪どい方法を――あればだが。
「まあいいや、あんまりゴミにならないように何個か分けてくれないか?」
「うん。……はい、どうぞ」
そう言って、BB弾を受け取り――。
「じゃあロビーに行くか――ラウラ、様子は?」
「……今なら大丈夫だ。ヒルト、美冬。教官達によろしくと……」
「あ、僕もそう伝えて?」
「了解。……じゃあな、また後でな」
「じゃあ行ってくるね?」
そう告げ、俺と美冬は忍び足で部屋を出て通路を進んで行く――。
――ロビー――
何とか音を利用し、ロビー近くまで来たのだが新たな問題が――。
「……何で織斑先生が親父と母さんに話をしてるんだよ……」
「……お兄ちゃん、どうする?」
「……見つかるのを覚悟で行くしか無いだろ?それか俺が囮か――」
「……ダメだよ?見つかるなら、私も一緒だもん」
言って、絡ませた腕をぎゅっと抱く美冬。
……意識するから勘弁してほしいのだが。
「……仕方ない、もう開き直って行くか」
「うん。それに、もしかしたら反省文だけで済むかもしれないしね」
そう言って開き直り、堂々とロビーに俺と美冬が姿を表すと親父が――。
「お?ヒルト、美冬、どうやら間に合ったようだな」
「うふふ。無事にこれた様ねぇ」
「――では有坂さん、発注した【例の物】、二学期が始まる前に納入をお願いします」
「わかりましたぁ」
言って、織斑先生がちらりと俺と美冬を見、目を閉じてその横を通り過ぎる――その一瞬。
「……お前たち、ちゃんと親に挨拶しろ。――私はロビーでお前たちとは会っていない、わかったか?」
「……織斑先生……ありがとうございます」
「……ふっ」
静かに微笑し、ロビーの椅子に座る織斑先生。
「お父さん、お母さん!」
「おぅ。美冬、俺たちは一旦アメリカに戻るぜ?」
「うふふ。ほら美冬ちゃん?」
言って、両腕を広げる母さん。
それを見て、目を潤ませながら美冬は勢いよく母さんに抱きつく。
「あらあら?これで今生の別れじゃないのに……美冬ちゃんったら」
「……だってぇ……また居なくなると思ったら寂しいんだもん……」
「うふふ。美冬ちゃんはいつまでたっても甘えん坊ね♪」
そっと髪を撫で、赤ちゃんをあやす様に美冬を落ち着かせようとする母さん。
「うふふ。ヒルトはお母さんのハグ、いらないの?」
「……バカ、流石にそういうのは出来ないって」
「あらあら?残念ねぇ……でも――」
「……?」
ハグしていた美冬を離すと、母さんが俺に近づいて来て――。
「えいっ♪」
「のわぁっ!?な、何だよ母さんっ!」
「うふふ。ハグよハグ♪無理矢理じゃないと、ヒルトはハグさせてくれないもん」
言って、無理矢理首に腕を回して抱きつく母さん。
端から見れば、これも恋人同士に見えそうで困るのだが……。
「ん……じゃあヒルトにハグもしたし、そろそろお母さん達は行こうかしらぁ」
「もぅ行っちゃうの?」
そんな落ち込んだような声の美冬に、親父が――。
「あぁ。――八月には俺も真理亜も帰ってくるから、それまで我慢しろよ。ワッハッハッ」
「……わかった。待ってるからね、お父さん、お母さん」
「うふふ。じゃあね、ヒルト、美冬ちゃん」
「あぁ。――親父、母さん。シャルとラウラ、未来が二人によろしくだってさ。セシリアには聞けなかったが、多分セシリアも同じ様に言うと思うが」
「そうか。――何にしても、またラウラとはサバイバルしたいもんだぜ」
「うふふ。サバイバルじゃなく、キャンプ何かはどうかしらぁ?」
「おぉっ!?それは良いアイデアだな!――じゃあな、ヒルト、美冬」
「うふふ。またね?」
そう言って親父と母さんは花月荘を後にする。
静寂が立ち込めるロビーに、美冬の声が――。
「……行っちゃったね」
「……だな。まあ寂しいかもしれないが、美冬には皆がいるさ。……な?」
「……うん」
静かにそう告げると、美冬は黙って瞳を閉じる。
寂しくないと言えば嘘になるが、親父と母さん……また帰ってくるって言ってたからな。
そう思い、俺は親父と母さんが出た花月荘の出入口の先を見つめた――。
後書き
次はリベンジバトルを書く
……多分(ぇ
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