IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》
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【第160話】
前書き
何と一夏が乱入
二戦連続でヒルトのピンチ(ぇ
「ヒルトッ!!」
俺の名を叫び、怒濤の攻撃を続ける一夏だが、取り回しの難しいブレードモードと雪片の二刀流は、大振りによる一撃一撃の軌跡を見極めるのが容易く、掠りさえせずに俺は避けていた。
「……ったく、自分がやるのはよくて俺が駄目ってまるでラウラの時の織斑先生の技を真似た時と同じだな……。正直、意味がわからん」
「うるせぇ!お前だって未来があんな悲痛な表情したら、俺と同じことするだろうが!」
そんなある種の核心をついた叫びが轟く――だが。
「……やったとしても、それは正式な手順を経て俺はやるぞ?激情に身を任せて、後先考えずに行動すればそれは後々に響いてくるからな――そらよっ!」
「ぐぅっ……!?」
左右交差するように振るった一夏の二刀流による攻撃を、軽く跳躍――脚部を掠める事もなく、虚しく空を斬る雪片と雪羅のブレード――共に粒子の煌めきをその場に残した。
そして、跳躍した俺は縦に一回転と同時に一夏の頭部に踵落としの一撃を与える。
その衝撃に、体勢を崩した一夏へと更なる追撃――後頭部に向けてハンマースローを叩き込んだ。
その一撃は、天狼を手に持っていたためか通常よりも重い一撃となり、一夏のシールドエネルギーを減らした。
「何にしても、勝手に介入したんだ。――模擬戦は篠ノ之の代わりにお前が相手って事だな」
更に追い討ちをかけ、体勢を崩した一夏の脚部を掴む。
「な――――うわぁっ!?」
脚部を掴んだまま瞬時加速――海面へと真っ逆さまに落ちていき――。
「このまま叩き付けるさ、これがなぁっ!!」
「!!」
加速力をつけ、一夏を海面へと叩き付けるように掴んだ手を振るう。
手から離れた一夏は、そのままの勢いで海面へと叩きつけられ、激しく水飛沫を巻き散らかせた。
「どうだ?……少しは頭が冷えたか?」
「……っ、まだまだァッ!!」
海面が爆ぜ、そこから雪羅が可変し、月穿へと変わっていて荷電粒子砲が放たれた。
「そんな大砲、早々簡単に当たるわけにはいかないんだよッ!」
放たれ続ける荷電粒子砲の射撃を左右上下に動き続け、その間に疾風を呼び出す。
一方の一夏も上昇しつつ、俺に向けて当たるはずもない荷電粒子砲を撃ち続けていた。
「クッ……全然当たらねぇ!!」
一人でごちる一夏は、何故当たらないのかもわかっていない様だった。
ひらひらと舞う様に避ける俺に憤りを感じた一夏は、月穿を可変させ、クローモードへと切り替える。
その一瞬を狙い、光の粒子が矢に形成され――放つ。
残光を残しつつ、その軌跡に粒子を撒き散らせながら進むそれを見た一夏は――。
「クッ……雪羅が間に合わねぇ!?」
「クローモードに可変させたのが悪かったな!その一瞬、見逃すわけ無いだろ!!」
可変の間に合わない雪羅にまた憤りを感じる一夏は、回避しようと動くのだが時既に遅く、一瞬の判断が遅れた一夏の白式の肩部装甲に光の矢が刺さり、破損させた。
そして直ぐ様第二射を斉射――複数の粒子の矢が螺旋を描き、まるでドリルの様に突き進んでいく――。
「次は防ぐ!雪羅!シールドモードに切り替えッ!」
言うや、直ぐ様可変し、そこから零落白夜の盾である霞衣が雪羅を覆うように纏われた。
突き進んでいく粒子の矢のエネルギーがそのエネルギー膜によって相殺されていく。
「どうだ、俺にはエネルギー粒子系の武器は効かねぇぜ」
まるで勝ち誇ったかの様に言う一夏は、これで勝ったと言わんばかりに見上げてくるが――相殺されるのは既に【想定済み】だ。
無効化されていく粒子の矢から、複数の実体矢の姿が露になる。
一夏もそれに気付き、表情が一変するのだが気づいた時には遅く、その矢が大幅にシールドエネルギーを削っていた。
「グゥッ!?……こ、こんな方法使ってくるなんて……」
「……お前、零落白夜に頼りすぎ。そのエネルギーシールド対策何て誰でも真っ先に考えるだろ?それともさ、俺はそんな事すら考えないごり押しだと思ってたのか?」
「クッ……!」
言わないが、一夏は攻撃しないときも雪片に零落白夜を纏わせている為、恐ろしい速度でシールドエネルギーが減少していた。
こいつも基本、単一仕様に頼る戦法が目立つからな……。
状況に応じて切り替えるなりすれば継戦能力もあがる筈なのに、本人が何も考えずに場当たり的に戦ってるのが丸分かりなのも致命的だろう。
言って指摘するのは本当に気づかない奴に対してだけで、大体は言わずに気づかないと意味が無いのだが……。
また雪羅をブレードモードに切り替え、一夏は瞬時加速で迫ってくる。
これも、エネルギーの無駄遣いだろう。
両方とも零落白夜のエネルギーを纏って燃費が最悪なのに加え、更に一夏は瞬時加速を多用する上、その瞬時加速自体が新たに【二段階瞬時加速(ダブル・イグニッション)】だからか加速するように燃費が最悪化していた。
加速力は凄まじいが、正直俺よりも燃費が悪いのは役に立つかと言われれば無理だなとしか言い様がなかった。
「うぉぉぉおおおっ!」
「疾風!」
一夏の叫びと共に、俺は疾風の名を叫ぶ。
光が放ち、分離されると両手に疾風の刃が握られていた。
迫る一夏に向けて左手に構えた疾風の刃を投擲――更に時間差による右手から更なる投擲で刃が迫る。
加速していた一夏は、切り払いが間に合わずに深々と疾風の刃が肩と脚部に突き刺さり、絶対防御を発動させた。
と同時に、ブレードモードのエネルギー刃は切れ、雪片も雄々しく輝いていた光刃が消え去る。
「何っ!?もうエネルギー切れ!?」
「シールド使いすぎだ!……少しは頭を冷やして来いよ、馬鹿野郎がぁっ!!」
腕部スラスターを点火させ、俺の目の前に止まった一夏の頬へと右ストレートを決める。
綺麗に入った一夏は、きりもみしながら海面へと叩きつけられ、その衝撃でシールドエネルギーが0になると共に、模擬戦終了のブザーが鳴り響いた。
白式を纏い、海面を浮いていた一夏の元へと向かう。
一方の篠ノ之も、海上で黙って模擬戦を見ていてやられた一夏の元へとやって来た。
「……結局、俺をぶん殴る事が出来なかったな。……その程度でよく誰かを守ろうなんて口に出せるものだ。……今のお前に、【誰も守る事なんて出来ない】。それだけは断言してやるさ、これがな」
「……ッ!?」
その俺の言葉に、悔しそうに表情を歪ませる一夏――。
「有坂!一夏にそこまで言うことは――」
「篠ノ之、お前もだ。所詮【仮染めの紛い物の最強の力を手にしていい気になってたんだろ】?……一夏がやられた時の事、もっと思い出せ。お前たち二人は自覚しろ。――【俺よりも弱いという事に】」
「「……!?」」
静かにそう告げると、俺はビーチへと戻っていく。
その途中で、ムラクモの声が聞こえた。
『ふふ。これで二人が機体性能や特殊能力に頼らずに模擬戦が行えるようになると良いわね?……あの二人の成長の為に言ったのでしょ?』
『まぁな。……まあ俺達はまだ十五歳、十六歳のガキだがいつまでもそんな状況に甘えられる訳じゃないからな。……二人とも、多分周りから怒られるという事が少なかったんじゃないかな。ISが発表され、織斑先生がモンド・グロッソで世界一になってから』
あくまでも憶測に過ぎないのだが、強ち間違ってはいないだろう。
……怒ってくれる大人が周りに少ないという状況は、子供が子供のまま大人になっていくのだからな……。
少しはこれで――特に篠ノ之は皆を裏切る様な真似をしたのだから反省してくれると良いのだが……。
後書き
という事で多分こてんぱんにされた一夏
批判は感想にて
ちょいバトル描写が少ないですが、白式のエネルギー無駄遣いを考えるとあんなもんかと
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