IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
【第238話】
――自宅前――
「こ、こんなところで会うなんて……ぐ、偶然じゃない?」
何やら手荷物をいっぱい持ったまま腕組みする鈴音。
ラウラが後ろから下りると――。
「ふむ、そのわりには先程からこの辺りをうろうろしていたように見受けるが?」
ラウラの指摘に、かぁーっと鈴音は顔を赤くさせながら――。
「う、うっさいわよラウラ! 偶然ったら偶然なの! わかったわね、ヒルト!?」
聞いたのはラウラなのに、何故か俺に強く言い放つ。
「……いや、そんなに必死になって言わなくても……。 ――まあいいや、この辺りに何か用事でもあったのか? 因みに呼び鈴押そうとしてた家は俺の家だぞ?」
そう言いながら乗った自転車を庭に入れていると――。
「……ここがヒルトと教官の家か……」
家を見上げるラウラは、やっぱり親父の教え子だからか色々気になるようで――。
「ふむ……この辺りの立地だとスナイパーが狙うには向こうのマンションしか狙えないようだな。 ……サバイバル技術しか教わっていないが、色々とご教示願いたくなる……」
一人静かに呟くラウラを、鈴音は呆れたように――。
「あんたねぇ……。 そんなことで家を建てる訳ないじゃない。 この辺りは住宅開発地区、マンションは確かあまりこの付近には建てられないんじゃなかったっけ?」
「……その辺りは詳しくは知らないが。 まあいいや。 んで偶然この辺りに居たって言ってたが……」
「そ、そうよ! ……せっかくだし、美冬の様子も気になるし……あ、遊んであげてもいいわよ?」
素直に遊びたいとは言わず、遊んであげるという辺りは鈴音らしい。
鈴音の場合、意地悪しても悪い結果にしかならないのが明白なので――。
「そっか、なら上がっていくか?」
「そ、そうね。 ……じゃあ、あたしが遊んであげるから感謝しなさいよ」
キラリと光る八重歯、ラウラも余計な事は言わずに静かに頷く。
「じゃあ……ようこそ、俺んちへ。 ……まあそう言っても親父と母さんのお陰なんだけどな、これが」
玄関を開け、招き入れるとまず最初にラウラが入り――。
「……ふむ、中はこうなっているのか……」
中に入るや、壁に掛けられた風景画を見たり、靴箱の上に乗ったウサギの親子の人形に興味を持ったりとラウラの目が輝いてる様に見えた。
「……お邪魔します」
借りてきた猫の様に萎縮する鈴音。
緊張してるのか若干力が入りすぎてる様に思えた。
最後に俺が中に入ると、スリッパ置き場からウサギとパンダのスリッパを取り出し――。
「好きなスリッパを履いていいぞ?」
「う……動物のスリッパ……ねぇ……」
そう言う鈴音、キャラ物はあまり好きじゃないのだろうか?
一方のラウラはというと――。
「……私は此方のウサギのスリッパを履こう。 ……お邪魔します」
言ってから靴を脱ぐと、そのままスリッパを履いた。
「……し、仕方ないからこれを履くわよ……」
しぶしぶパンダのスリッパを履く鈴音。
「悪いな、母さんの趣味でスリッパは動物系で揃えてるんだよ」
「うふふ、だから我慢してねぇ~」
そうパタパタ足音をたててリビングからやって来た母さんは――。
「いらっしゃいラウラちゃん♪ ……それと、貴女は確か……二組のクラス代表、凰鈴音ちゃんね? 臨海学校の時に挨拶はしたけど、改めて……。 ヒルトと美冬のお母さんしてます、有坂真理亜です♪」
ふわふわとした口調ながらも、丁寧な挨拶をする母さんに鈴音も慌てて背筋を真っ直ぐに――。
「は、初めまして! あ、アタシ――いぇ、私、有坂君達と仲良くさせてもらってます! き、気軽に鈴って呼んでください!」
ガチガチに緊張してるのか、色々言葉をちゃんと正して挨拶をした鈴音。
「うふふ、じゃあ私も鈴ちゃんって呼ばせてもらうわねぇ~。 私の事は、呼びやすい様に言ってくれればいいからぁ~」
「じゃ、じゃあ……真理亜さんって……呼びますね?」
鈴音自身、母親が存命してるからセシリア達みたいにお母さんとは呼べないだろう。
「……ママ」
そんなラウラの呟きに、柔らかな笑みを溢す母さんは――。
「うふふ、ラウラちゃんにそう呼ばれるのは悪い気がしないわねぇ……♪ さあヒルト、皆待ってるから案内なさいな♪」
「あぁ。 ……じゃあ二人とも、着いてきて?」
「えぇ」
「ぅむ……」
二人して短く返事をすると、俺の後に続くように着いてきた。
母さんは俺達を見送った後、またリビングへと戻っていった……。
二階に上がり、自分の部屋のドアを開けると――。
「お兄ちゃん、お帰りーっ。 ――あれ? 鈴??」
俺の後ろにいた鈴に気づくと、皆の視線が一斉に鈴に向く。
流石の鈴も、ビクッと反応してたじろぐ――。
「家の前にいたんだよ。 なあ?」
「そ、そうよ。 ……た、他意はないんだから……」
そう言いながら、俺たち全員部屋へと入るとものの見事なハーレムが形成された。
未来は椅子に座り、他がベッドの上に座る中、俺は壁際に凭れて――。
「ん。 ……皆、俺の卒業アルバム見てたのか?」
「え、えぇ。 やはり興味がありますもの……♪」
そう言ってベッドの上に広げられていたのは小学校時代の卒業アルバムだった……。
ページ上へ戻る