IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》
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【第241話】
――リビング――
昼食を食べ終え、現在時間は十二時半。
俺達全員食べ終えた皿をキッチンへと運び、母さんが洗い物をするということで俺は任せたのだが――。
「うふふ、シャルちゃんありがとねぇ~♪ お母さん、助かるわぁ~」
「い、いぇ。 ……僕、こういうの得意で……好きですから♪」
母さんの横で洗い物の手伝いをするシャル。
……そんなシャルを、羨ましそうに見る視線が――。
「……出遅れましたわ……」
聞こえるか聞こえないかの呟きを言うセシリア。
「…………」
黙って母さんとシャルの様子を見ていたのは鈴音で、その眼差しは何処か懐かしみ、そして悲しさが溢れる様な――。
「鈴音? 大丈夫か?」
「ふわぁっ!? ち、近いわよバカ!」
覗き込むように見ると、急に顔を赤くし、手で俺の顔をぐいぐいと押しどけた。
その様子を、母さんはキッチンから微笑ましく見ていたのだが俺は妙に突き刺さる視線を複数感じて――。
「……ヒルトさん? 何をしてますの?」
「……これ以上、ライバルを増やしてほしくないのだがな。 ……とは言うものの、鈴は織斑一筋だからそうそう気持ちが変わるとは思えないがな」
セシリアのジト目が突き刺さり、ラウラは何か鈴に釘を刺した気がしないでもない。
「……鈴はお兄ちゃんの事、気になるの?」
突如、美冬が鈴音に対して聞き始めた内容に、俺は目をぱちくりと何度も瞬きした。
「……ハァッ!? そ、そそそそんな訳ないじゃんッ!! い、いきなり何言ってんだかッ!」
明らかに狼狽する鈴音。
……まさかな、気になる奴が俺だなんて……あり得ないだろ。
俺の中でそう結論つけると――。
「こら、美冬。 鈴音も困ってるからあまり追及するなよ? セシリアもラウラも、さっき覗き込んだのは鈴音が何処か寂しく見えてな」
「……はぁい……」
しぶしぶといった感じで頷くと、アヒル口で俺を見てきた――何故に?
セシリアもラウラも、そう説明すると同じ様に納得した。
……が、やはりヤキモチ妬くのだろう……もうちょい考えないと……。
これからの女の子に対する対応を考えてると、鈴音が――。
「……んとさ。 ちょっと国のお母さんの事、思い出しただけだから……。 あ、あんたはこういう事、鋭いよね……?」
「ん? ……まぁな、母さん程じゃないがそこそこ気が付くよ」
……この辺りはもしかすると母さんの血を受け継いでるのかなって思うが――。
「鈴ちゃん? 国のお母さんには連絡はとってるのぉ?」
「え? ……は、はぃ。 たまにですけど、近状の報告したり……してます」
「……そっかぁ……。 ……もし、寂しいなら日帰りでもいいから一度国へ戻るのはどうかしらぁ? 代表候補生だと、訓練浸けになるかもだけど、会ってすぐ帰るのも少しは寂しさが紛れるわよぉ? ……または、誰かにハグされるといいかも♪ こんな感じで♪」
そう言って母さんは洗い物をしていたシャルの背後から抱きつくと――。
「わあっ!? お、お母さんっ。 急にだとびっくりするよっ!」
「うふふ♪ 急にじゃないとヒルトは嫌がるから~」
「い、いや……。 嫌がるってよりは恥ずかしくなるんだが……」
実際、母さんは美冬と並ぶと姉妹にしか見えないし、俺と並ぶと恋人同士に間違われたりするからな……しかも、ハグを躊躇なくするから余計に。
少し思い悩んでいた鈴音が顔をあげると――。
「そう、よね。 ……うん、近いうちに日帰りで中国に戻ろうかな? ……あ、ありがとぅ……真理亜さん」
「うふふ。 ヒルトにはお礼言わないのぉ?」
「う……。 ――あ、あんたも……ありが……と」
「……大した事は言ってないけどな」
ニッと笑顔で応えると、未来が俺を見ながら――。
「……こうやって無自覚にセシリアやシャル、ラウラって落としていったのかな……?」
「……落としたって……。 そんな恋愛ゲームじゃないんだし……。 ただ、友達なら力になってあげないとって思って色々しただけだよ。 ……まさか、恋人候補に発展するとは当時は思わなかったが……」
最後の方は聞こえないような独り言を呟いた為、聞いていた皆が頭に疑問符を浮かべていた――と。
「……さて、シャルちゃんご苦労様~。 お母さん、少し部屋で休もうかなぁ~。 お父さんの渡米準備の手伝いも兼ねながらねぇ」
そう言いながら俺に向かってウィンクすると、ゆっくりとした足取りでリビングを後にした母さん。
……ウィンクの意味がわからなかったが……。
「……皆で何かして遊ぶか? 一応俺んちは一通り遊ぶ道具やゲーム何かはあるが――」
そう俺が言ってる途中で、鈴音がニヤリと笑うと――。
「ふふん。 こんなこともあろうかと思って、あたしが用意してきてあげたわよ。 感謝しなさいよ、ヒルト? 皆?」
持っていた紙袋を手渡してきた鈴音。
中を覗くと定番のトランプや花札、ボードゲーム系のモノポリーに人生ゲーム等々の多種多様なカードゲーム及びボードゲームが所狭しと溢れていた。
「……凄いゲームの量だな。 しかもアナログなカードやボードゲーム系の……。 鈴音、据え置き本体用のゲームパッケージとか無いのか?」
「あ、あるわけないでしょ! ……そ、それに! テレビゲーム何かよりもこっちの方が遥かに楽しいわよッ」
何故か怒鳴るような声をあげる鈴音。
……まあこれはこれで悪くはないのだが……。
「……まあいいか。 テレビゲームがやりたくなったって人が居たら出してくればいいしな?」
「そ、そうよ。 ……まあでも? こっちのが楽しいから誰もそんなこと言わないと思うけどね」
……何となくテレビゲーム関係を避けてる気がしなくもないが、あまり追及しても悪いので――。
「ならカードゲーム、それかボードゲームで遊ぶか? 皆は何で遊びたい?」
そう俺が声をかけると、リビングに勢揃いした女子一同が紙袋を覗き込む。
各々がつけている香水やら、シャンプーやリンスの香りがふわりと鼻孔を擽ると共に、いやに俺は意識し始めた――。
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