IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》
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【第229話】
――屋台前――
金魚掬いの勝負が決し、現在焼きそばを注文している。
因みに、今回の優勝者は――。
「うふふ、ごめんね篠ノ之さん? 何だか三人の勝負を見てると私もやりたくなっちゃって」
「く……! あ、有坂に負けたのも納得いかんが、途中参加の飯山にも負けたのが納得いかん……!」
悔しそうに買った焼きそばを未来に手渡す篠ノ之。
途中まで三人とも金魚を三匹掬っていて、そこから未来がヤル気を出して三十秒足らずで俺達に追い付く。
その鮮やかかつ見事な様に、一夏と篠ノ之が唖然としていると、二人はモナカを水に浸けたままだというのも忘れていたのかふにゃふにゃになったモナカが千切れ、更に篠ノ之に関しては運が悪いとしか言い様の無い金魚の脱走劇。
それも掬った三匹同時に器から跳ね、何事もなかったかの様に水槽へ戻っていったからだ。
……まあ、篠ノ之の殺気に気付いて金魚も逃げたかもしれないが。
――後は俺と未来、二人の勝負だが俺が出目金を捕った所でモナカがダメになって終わり、合計五匹という結果。
未来はそこから更にわざわざ大きい金魚を狙って、合計十一匹捕った所でモナカが千切れた。
まあ言わずも、未来の圧倒的勝利には違いなく、結果最下位の篠ノ之が未来に焼きそばを奢る結果になった。
「くっ……、何故私の金魚だけ逃げたのだ……」
「そりゃ、掬われるなら怖い顔した篠ノ之よりも愛らしい子供の方がいいよな」
「……ッ! 私の何処が怖い顔だと言うのだ!」
「今の顔の事だぞ?」
そう指摘すると、慌てて鞄から手鏡を出してにらめっこする篠ノ之。
ぎこちなく微笑むその姿に、周りの子供も唖然としていた。
「……さて、つまらない挑発に乗って喉が渇いたな」
俺がそう言うと、賛同する様に一夏も口にする。
「そうだなー。 人混みのせいで暑いし、仕方ないよな。 何か買いに行くか?」
「……だから喉が渇いたって言ったんだろ? 言うだけで喉が潤うなら世の中水が要らなくなるさ、これがな」
「……そうね。 ……ごちそうさまでした。 味は美味しかったよ、篠ノ之さん」
「そ、うか……。 だが、次は負けんぞ。 模擬戦で決着つけてやる」
そう高らかに宣言すると、未来に指差す篠ノ之。
そんな篠ノ之に、きょとんとした表情で眺めながら……。
「……模擬戦ならいいけど――レギュレーションはどうするの?」
「ふん、もちろん無制限だ。 制限されたのでは紅椿の力を発揮出来ないからな」
またも腕を組み、瞼を閉じる篠ノ之。
「……無制限だと、もしこれから制限の課せられた大会が開催された時に泣くのは篠ノ之さんだよ? 専用機持った子も、持たない子も皆想定しながら訓練してるし――」
「ふん、私は私だ。 制限大会が決まった時に考えればいい」
刹那的な考え方に、流石の未来も苦笑するしかなかった。
しかし、レギュレーション決めて模擬戦するのって、技術あげるには避けて通れない道だと思うが?
これから先、絶対単一仕様禁止やら、次世代兵装禁止、または制限。
他だと与えられた武器のみの大会とかもあるかもしれないのに……。
「……未来、篠ノ之がそうしたいならそうさせればいいさ」
「……そうだね。 でも篠ノ之さん? 後で慌ててからだと後の祭りだからね?」
「ふん、余計なお世話だ」
未来の言葉も届かず、篠ノ之は腕を組んだ未来を見ていた。
「……箒、せっかく未来が色々言ってくれてるんだぜ? 少しぐらいは聞いても――」
「ま、全く聞いてないわけではない。 この程度の事など、既に想定しているのだ。 だから今さら言われてもお節介にしか思わないのだ、私は」
「……そっか。 まあわかってるなら俺はいいんだけどな。 ……じゃあ、飲み物買いに行こうぜ?」
そう一夏が言うと、先頭を歩き始めて篠ノ之はしぶしぶと一夏の後ろについていった。
「……余計なお世話だったかな?」
「……どうだろ? 一度学園の先生に本気で叱って貰えば少しは丸くなる気がするが――残念ながら、やはり篠ノ之博士の妹ってのでなかなか怒れないらしいしな」
そう呟きつつ、俺と未来は二人を追うようについていった。
その間、未来も少し思い悩んでいたのか、口数の少なさが凄く気になった……。
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