つぶやき

こばやかわひであき
 
ネタ話  牡丹と白蓮の……

偽物語の例のアレです。
途中まで思い浮かんだモノを。描写的にアウトかセーフか分かりません。
続きは……ご想像にお任せします。

――――――――



 茶髪を後ろで纏めてチョロリと跳ねっ返らせた……胸がお世辞にもあるとは言えない少女――――牡丹は、部屋でのんびりと寛いでいた。
 なんでもない休日である。普段ならば白蓮のストーカー、もとい、影ながらの護衛任務をしているはずなのだが、護衛する白蓮が居ないのではそれも出来ない。
 一つの湯飲みをマジマジと見つめ、お茶を入れて飲もうとして結局止めたり、寝台の掛け布を身体に巻いてぐへへと厭らしく笑ったり……のんびりと寛いでいるとは言っても、大して暇では無い様子。
 そう、此処は白蓮の部屋である。
 入るのに許可、などというモノは取らなくていい。彼女は片腕であり護衛。白蓮の部屋に危ないモノが仕込まれていないのか確認するのも仕事であるのだ。
 白蓮の湯飲みでお茶を飲むか悩んでいたのも、毒が塗られていたら大変だから。
 白蓮の掛け布でぐるぐる巻きになっていたのも、毒針でも仕込まれていたら大変だから。

(断じて、白蓮と間接キスであるだとか、白蓮の匂いが染み込んだ毛布に包まれて抱きしめて貰っている気分に浸っているとか、そういう事では、無い。どちらも今日の昼には洗いに出すと言っても、確認は大事だろう……って感じの事を、牡丹なら墓穴を掘ってると気付かずに説明しそうだ)
(なるほど……クク、間違いありませんな。秋斗殿には聞き取れない早口で捲し立てるでしょう)

 こそこそと話す二人。気が緩み切っているのか、牡丹は気配すら察知出来ていないようだ。
 白蓮の部屋の服入れに、白と黒の二人は忍び込んでいた。もちろん、服は全て別の所に出してある。そして当然の如く、白蓮はこの事を知らない。
 部屋の中心で騒ぐ声は黄色い、というよりは桃色であろう。白蓮様……と何回名を呼んでいることか。ぐへへところかげへへと笑う彼女は何を考えているのだろうか。
 秋斗は若干引きながら独り言を思わず零す。

(それにしてもあの顔……なんだよあれ、悪い顔って言うよりゲスい顔じゃねーか。ゲスッチダヨーってか?)
(む? ゲスっち?)

 南半球どころか七十二な牡丹には関わりの無い話であった、とため息を一つついた秋斗は、説明しても分かるはずも無い為に適当に誤魔化す事にした。

(いや、なんでもない。ちょっと変な電波を受信してな)
(またわけの分からない事を……まあいいか。それより秋斗殿、本当に白蓮殿が此処に来るので?)
(ああ、計画通りに理由は説明せずに指示を出してある。牡丹には酷だろうが、これも白蓮の為だ。ちょっとお灸を据えて、且つ白蓮との仲もより良くなるだろう)
(今の状況を目にしてもまだ仲良くとは、どうやって……いえ、楽しみにしておりますよ)
(おう。クク、牡丹にとっては嬉しいはずの贈り物だし、白蓮にとっても牡丹の新しい面を見れる機会。危なくなったら止めればいいさ)

 明らかに、誰が見ても悪い顔をした秋斗に対して、星は訝しげに眉を寄せるも、すぐに同じような笑みを浮かべた。
 悪戯が大好きな彼らにとって牡丹と白蓮は格好の的。元来素直な二人である為に、仕掛けに嵌ってしまうのは詮無きかな。
 掛け布に顔を埋める牡丹はまだ、二人の思惑を知らない。
 待つ事幾分。突然、牡丹の動きがピタリと止まる。さーっと顔を蒼褪めさせた彼女は、

「や、やばいですっ! 白蓮様の足音がっ!」

 声と共に目にも見えない早業で掛け布を整え、全ての位置を自分が来る前に戻していく。
 緊張と期待に胸を弾ませる秋斗と星は、どうにか全て終わらせて椅子に座った牡丹を、それぞれが服入れの隙間から覗いていた。
 そうして、牡丹にとってある意味最高で最悪の時間が始まった。




 †




 秋斗に言われて部屋に戻ってきたはいいが、何も変わりない。牡丹が私の部屋にいる以外は。
 説明はされている。私を見つめる瞳の意味も知っているし、一応その想いをしっかりと受け止めてもいる。だが、些かやり過ぎだ。
 とぼけたら、私は秋斗に言われた手段を使わざるを得ない。

「お、おおお帰りなさい、白蓮様っ!」

 分かり易い……素直すぎる牡丹では秋斗や星みたいに誤魔化す事は、やはり出来ないらしい。

「……牡丹、何してたんだ?」
「白蓮様の部屋に異常がないか確かめてました!」

 無駄に元気のいい声は私の耳に良く響く。ああそうだ、それは間違いないだろう。

「ふーん……秋斗から、牡丹が休日に私の掛け布で遊んだりしてるって聞いたけど?」
「……あ、の、バ、カ~~~~っ!」

 別に名前出してもいいよな。これは正しい事だ。疚しい気持ちが無ければ、秋斗に非は無いはずだ。

――とりあえず確定、か。牡丹は私の掛け布でよからぬ事をしていたんだろう。秋斗や星の言う通り……く、くんかくんか……していたんだろうっ。恥ずかしいけど、言えばさせてやるのに、とは言わない。変態みたいだから。いや、言わなくても変態だ。私は……変態だったのか……

 無駄に落ち込んで行く思考。牡丹の暴走癖がうつったようだった。引き摺られそうになるもどうにか振り払い、じとっと牡丹を睨んでみる。

「隠れてこそこそ何かをするような奴には……罰を与えないとダメだな」
「っ! い、いえ、何も疚しいことなどしていませんそうですはい私は別に白蓮様の掛け――――」
「言い訳、無用だ、牡丹」
「――――ごめんなさい……」

 三つ言葉で睨んだ。絶望に瞳を落ち込ませて、牡丹は俯いた。
 とは言っても、今日は特別な日だから機会をやろう……というのが秋斗の提案。
 私はそれに乗ったが、これが何を意味しているのかは分からない。秋斗は贈り物、兼、罰だとか言ってたけど。
 無言で俯く牡丹に近付く。私が片手に持っているモノには、気付いてもいない。

――本当にこれに意味あるんだろうな、秋斗?

「では罰を与える……よりも、いつも世話になってる礼もある。そこで私と賭けをしないか?」
「か、賭け、ですか?」

 不思議そうに私を見上げた牡丹。うん。私にもわけが分からないからあまり深くは聞かないでくれ。

「そうだ。コレで勝負しよう」

 すっと手に持って上げてみせたのは……歯を磨く道具、ハブラシ。リンゴ味の“歯磨き粉”もある。どちらも曹操の所の李典が秋斗の入れ知恵で開発したモノだ。作り方は極秘らしいので秋斗さえ知らない。

「それは……私のハブラシ、ですか? 歯を磨く道具で何を勝負するんですか?」

 ああ、こんな勝負は私にもわけが分からない。あのバカは何を考えているんだ。

「そうだな牡丹。こいつはハブラシ。確かに歯を磨く道具だ」
「そうですよ。私のハブラシです。もしかして、私がそのハブラシで歯を磨くのが勝負なんですか?」
「それが勝負じゃあないんだ牡丹。お前が磨けとは言わない。磨くのは私だ」

 あ、これって言い方やばいかもしれない。ほら……牡丹の顔が真っ赤に染まっちゃったじゃないかっ。

「そ、そそそ、それはまさか私のハブラシを使って丹念にこしゅこしゅと練り込むように白蓮様御自らが美しくて輝いていて白馬の如き白き歯をもっと白く磨き上げるという事で間違いないですか!?」

 早口過ぎて聞き取れなかったけど、どうせ私が牡丹のハブラシで“私”の歯を磨くと思ったんだろう。

「違う。そんなことしない。私は私のハブラシでしか自分の歯は磨かない」

 しゅんと落ち込む牡丹。『当たり前だろうが、この変態』と言っても喜ぶだけだから言ってやらない。

「じゃあ何を……」

 問いかけてきた牡丹に、すっとハブラシの先を向ける。なんか……傍からみたらかっこ悪い絵図にしか見えないんだろうな。星とか秋斗が見てたら大爆笑だっただろう。

「いいか牡丹。私はこれで歯を磨く。でも私の歯は磨かない。“お前の”歯を磨くんだ」
「はい……はぃぃ?」

 呆けて見つめる牡丹と同じく、私にもこの意味は分からない。秋斗の考える事には大抵意味があるはずなんだけど、今回ばかりは全く持って、これっぽっちも意味が分からない。

 だから、問答無用で、適当に押し通すっ! 部下を信じるのは、太守の務めだからっ!

「他人に歯を磨かれるのは初めてだろう? 初めてを誰かにされるのは、お前の主たる私であっても抵抗がある……はず。その抵抗を見せなければお前の勝ち、抵抗したら私の勝ち。お前の忠誠心を試すいい勝負、だと思うんだ。お前が勝ったら御咎めなし、私が勝ったら罰則を与える」

 まるで新手の優しい拷問。羞恥心に耐える、なんてモノに近いのではないだろうか。
 でも、秋斗……お前牡丹の事分かってるだろ? こんなモノではこいつは……

「ふふっ、いいですよ? 抵抗なんかするわけないです。むしろ望む所って、あのバカがいたら言いたいくらいですよ」

 あ、やっぱりこいつ気付いてる。これが秋斗の発案だって。顔が凄みのある笑みに変わった。着々と仕返しの算段を立ててるに違いない。逆にいじり返されるのは目に見えてるけど。

「あのバカとか、星とかに歯磨きされるのは絶対に嫌ですけど、白蓮様にでしたら何されても恥ずかしくありませんからねっ」

 わざわざ言い聞かせるように言葉を紡いだ。自分にか、此処には居ない二人に対してか。でも牡丹、秋斗にも星にも、押し切られたら結局は許しちゃうのがお前じゃないか……とも言わない。

「じゃあ勝負開始でいいな。ちなみに、時間制限は……ん、これでいいな」

 机の上の絡繰りを設定。小休憩の時間をいつもこれで決めてる。半刻にも満たない時間で鳴るだろう。
 寝台に腰を下ろして牡丹に厳しい目を向けた。

「じゃあ、ここに座れ」
「はいっ」

 楽しげに私の隣に腰を下ろす牡丹。本当に……どうすればいいんだ、これ。
 とりあえず言われた通りに歯を磨いてやろう。もう私の負けでいいからさ。
 首の後ろに手を回し、じっと見つめてくる牡丹の目を見据えて……

「あ、あーん」
「ふふっ、あーん♪」

 心底楽しいのだろう、分かり易い声音は弾んでいた。もう引き返せない。

――私は、こいつの歯を磨くっ!

 心を引き締めて脳内で叫ぶと何故か気合が入った私は……白いモノをかけた固い棒を牡丹の中に突っ込んだ。

「……へぁうっ」

 先で中央に位置する赤を撫でると牡丹から変な声が出た。目を見開き、ふるふると揺れる瞳は私を見ずに宙を彷徨う。
 ゆっくりと……前へ押すと……凹凸が私に伝わる。同じくゆっくりと……後ろに引くと……棒を追うように赤が蠢き、ぬめりと光る。

「……ぁっ……っ!」

 気にせずに前へ後ろへと出し入れを開始。

「……っ! ……ふぁっ……んっ……っ!」

 シャコシャコと一定の間隔で鳴る音はどこか爽やかさを感じる。うん、なんか掃除してるって気になる音だ。
 ただ……牡丹の様子がおかしい。おかしいんだ。
 悩ましげに眉を寄せ、目は焦点が合っていない。漏れ出る声も苦しそうだった。

――おかしい。私は何をしている? 私はただ、歯を磨いているだけだ。なのにどうして、こいつはこんなに苦しそうなんだ……

 やり方が悪かったのかもしれない。申し訳なさが心に浮かぶ。哀しい気持ちも湧いてきた。私はこいつを……苦しめてしまってるんだ。
 もっと優しく、丁寧に磨こう。歯茎から舌、はたまた頬の内側に至るまで……優しく、丁寧に、丹念にハブラシで撫でてやろう。
 速度を緩め、そっと棒を奥へと滑らせていった。

「ひぁぅっ!」

 瞬間、ビクリと身体を少し跳ねさせて、私の腕に身体を預けるがままになった。
 危なかったぞ、間違いなく、棒で喉を突いてしまいそうだった。吐き出してしまわれても困る。白いのは口の中に入れといてもらわないと。
 危ないから、寝台に寝かせてやろう。絶対に飲むんじゃないぞ? いいか、口に含んだまま、だからな?
 綺麗にしてやるんだ。私が、牡丹の中を、白馬のように白くしてやるんだ。

 そうして私は……ハブラシで牡丹の歯を磨くという行いに没頭していったのだった。
 
こばやかわひであき
 
ありがとうございます。
ゲスだらけなこの職場。

あの子達、疲れてるのよ……

隠れている秋斗は白蓮さんに対して「よし、そこだ! 行け! もっとやれ!」と内心でつぶやき、にやにやしてたり。星さんは結構ウブな所があるので顔を真っ赤にしながら二人の様子に興味津々、且つ、ちょっとずつ秋斗に身体を寄せて行ってみたり。
そんな甘い事象もあるかもしれません。

白蓮さんはいつのまにやら百合っ子覇王様を凌ぐドエスになってしまっていたようですw

歯磨きはやはりイイモノですよね! 
童心
 
セーッフ!!、しかしおれはもう逝きそうだ
ゲスが三人に堕天使が一人、ゲスが三人にSが一人、もういっそゲスが四人でイイ気がしてきたww

見方次第で牡丹ちゃんも天使なんですが…取り敢えず四人とも汚れて色々と達観しているのは確かだ。

なんでしょうこれは…牡丹ちゃんは普通?に悶えているだけで白蓮は普通に歯磨きしているだけなのに

白蓮は完全に善意の独白がドS太守のそれになっている、この状況を楽しんでいる筈のゲスお二人は

ちょっと大変な事になってそうですね、下の方が。

ゲスとは書きましたが四人とも好きですよ、根っからの下衆ではなくて「やだエッチ変態」くらいの意味です