第61話 親子の絆は死んでも続く
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なったこの男の娘への手向けとなるのならそれでも良い。そう思っていた。
「ちっ!」
聞こえてきたのは銀時の舌打ちする声。そして、銀時は伍丸弐號の思惑とは違い、目の前で木刀を腰に挿して攻撃を止めてしまった。
「何故、攻撃の手を止めたのだ?」
「止めだ止めだ。やる気が失せちまった。今のてめぇのその情けねぇ面を見ちまってな。とてもてめぇをぶちのめす気にならねぇや」
そう言っていた銀時の体からは、何時しか先ほどまで感じられた殺気が嘘の様に消え失せてしまっていた。まるでいつも通りの銀時に戻ってしまったかの様に。その銀時は、項垂れている伍丸弐號になど目も暮れず、背中を向けて歩いて行ってしまう。銀時が向かったのは伍丸弐號が殺したなのはの近くであった。其処でこの男はそっと彼女を抱き抱える。
「何故だ。何故私に怒りをぶつけない。何故私を破壊しない? 私は貴様の娘を殺したのだぞ!? なのに何故だ!」
「てめぇをぶちのめせば、なのはは返ってくるってのか?」
「・・・・・・・・・」
「ま、仮にそうして戻ってくるとしても、俺はやらないだろうけどな。そんな事してこいつが生きて戻ってきても空しいだけだ」
「空しい? 何故だ、愛する娘が返ってくるのだぞ。喜ぶことあっても空しくなる事などある筈がない!」
「そいつはどうかな? てめぇの勝手で死人を生き返らせるなんざ死人に対する冒涜になっちまうだろう。それじゃ死んだ奴があまりにも不憫だ。それに、生きてる奴には死んだ奴にやらなきゃならない事が他にもあるだろうが」
「生きている者が死んだ者に出来る事。それは何だ?」
「そいつが眠ってる場所を守る事だよ」
簡潔に銀時はそう述べた。その言葉は伍丸弐號の胸に深く突き刺さる。つい今の今までであればそんな言葉に耳を貸す事などなかっただろう。だが、今は違う。今ならば分かる気がする。この男のその言葉の指す意味と重さが。
「死んだ者の眠る場所を守る……それが生きている者の成すべき事」
「そんなに悩む必要はねぇよ。ただ、死んだ奴の墓に毎日花をやったり手入れをしてやったり、うんざりする位の愚痴を小一時間聞かせてやりゃ良い。簡単な事だろうが」
何とも銀時らしい言い分であった。生きている者が死人に出来る唯一の事。それは死人が眠っている墓の世話だ。その墓が荒らされないように毎日手入れをし、綺麗な花を添えてやり、鬱陶しいと思われる位なまでに愚痴を聞かせてやる。それが銀時の言う死人に対して出来る唯一の事なのであった。
「悪いが俺はお前ほど頭の出来が良くないんでな。死んだ奴を蘇らせようなんて御大層な考えには至らねぇ。それに、そんな事を考えたらそれこそ星の数ほどの人間を生き返らせなきゃならない事になっちまう。そんな事してたらこっちが先に逝っちまうだろうが
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