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駄目親父としっかり娘の珍道中
第61話 親子の絆は死んでも続く
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男の攻撃に対処し、反撃に転ずる事など造作もない。なのに何故だ。何故私の体は反応出来ないのだ!)

 銀時の攻撃を受けながら、伍丸弐號は己の体が動かない理由に疑念を抱き続けていた。身体機能に問題は見受けられない。もしあったとしても瞬時に修復、対応が可能だ。とすれば身体機能の問題ではない。では何故なのか?

(いったい、この男の何処にそんな力があると言うのだ。この男も其処で動けないでいる人間たちと同じ筈。いったい何が違うと言うのだ、何が―――)

 ふと、伍丸弐號の目線が銀時から逸れた。其処には倒れたまま動かない芙蓉となのはの姿があった。
 芙蓉、私の大事な娘であり私が心血を注ぎ死の淵から連れて来た私の生き甲斐。そして、私はその芙蓉の父親。では、その隣で動かなくなった人間は何だ。奴と芙蓉の間に、同じ何か繋がりがあると言うのだろうか?
 いったい何が、この男を突き動かしているのか。

(そうか、そう言う事か………この男もまた、私と同じ………父親だったのだな)

 合点がいった。何故銀時がこうまで怒り、伍丸弐號に向かって来るのかが。それは、自分がこの男にとって最も大切なものを奪ったからだ。かつて、自分が無情にも奪われたのと同じように、私もまたこの男の大事なものを無情にも奪ってしまった。その時の私は計り知れない悲しみと絶望で心が黒く染まってしまった。だが、この男は違う。この男の心は激しい怒りで真っ赤に染まっている。その心がこの男に計り知れない力を与えているのだ。
 
(そうだ、私は何と愚かな事をしたのだろうか。これでは、私が芙蓉を殺したのと同じ事ではないか。私は父親でありながら愛する娘を殺した。では、私の今までの行いは何だったのか? 愛する芙蓉の為に自身の体すら捨て、世界を変えようとした私の今までは、一体何だったと言うのか? あぁ、すべてが空しくなっていく。すべてが無駄に終わってしまう)

 伍丸弐號の脳裏に蘇ってくる記憶。それは、彼が生きた人間であった頃、林流山であった頃の記憶からだった。愛する娘の為に始めたからくり。始まりは娘に笑顔をと始めた筈なのに、一体何処から道を違えたと言うのか。
 いつしか、からくりは愛する芙蓉を殺し、自分を殺し、果てには江戸に住むすべての人間を殺そうとし、今では……この男の娘を殺してしまった。
 伍丸弐號の中に最早戦意は欠片もなかった。自らの行いの為に起こったこの惨劇。それは芙蓉を喜ばせる事では断じてない。仮にこのままその道を進み、芙蓉と出会った所で、芙蓉はきっと笑顔を見せてはくれないだろう。そう思うと、伍丸弐號の膝が折れた。
 ガクリと地面に膝をつき、顔を落とす。後はこの男にひたすら切り刻まれ、いずれ中枢を破壊されて惨めな機械の残骸となるだけだろう。だが、それが愛する芙蓉と、そして其処で物言わぬ骸と
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