第5章 契約
第95話 オメガの扉
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簡単なのですが、流石にそんな余裕を与えてくれるような連中とは思えない。
この場に存在する連中は……。
故に、ここは一時的な止血を行う術式を起動させるだけに止める俺。
空間すら斬り裂くかのような光の断線が一瞬、ヨグ・ソトースの球体の動きを止めた。
そして次の刹那!
強い異臭を放ちながら、強く明滅を繰り返すヨグ・ソトースの球体。しかし、その一瞬の後には翼を持つ牡牛の姿へと変じ――
――にィつがまぁい、ザイウェソ、うぇかと・けぇオそ、クスネウェ=ルロム・クセウェラトル。メンハトイ、ザイウェトロスト・ずい、ズルロごス、ヨグ・ソトース――
但し、それは囮。丁度中心の辺りから上下に切り離され、どう、とばかりに大地に倒れ込む第二の球体。ソロモン七十二の魔将ザガンと同一視される第二の球体ザガンが巻き起こした震動が、元々バランスの悪かった俺の安定を僅かに狂わせる。
「ヴィルヘルム。シノブとタバサには手を出さない約束だったじゃないの。お願い、今すぐ止めさせて!」
倒れ込む俺の耳に、キュルケの叫びが飛び込む。
しかし、その程度の事でヴィルヘルム……は判りませんが、新たに現われた自称名付けざられし者の心には漣ひとつ立つ事はなかった。
大地に倒れ込むのと同時に、そのまま横に転がる俺。大地と氷空に浮かぶ炎の五芒星。そして、戦って居る最中のタバサや、彼女の式神たちの姿が目まぐるしく入れ替わる。
そう。氷空から降り注ぐ天からの御使いが一瞬にして白く冷たい刃と化し、タバサの正面に居た女性。蛇を右手に巻き付かせた美女を切り裂く。
魔将マルコシアスが、正面から突進して来た赤い騎兵を、その掲げる戦旗ごと紅蓮の炎へと包み込み、
ウヴァルが。そして、レヴァナが、それぞれヨグ・ソトースの球体から変じた使い魔と相対していた。
――オラリ・イスゲウォト、ほもる・あぁたなとすぅ・ないうぇ・ずぅむくろす、イセキロロセト、クソネオゼベトオス、アザトース。クソノ、ズウェゼト、ウロボ――
非常に不明瞭な声。まるで世界の裏側から聞こえて来るような呪いの言葉。その声からはヤツ独特の抑揚にざらつきと、奇妙なうねりのようなモノを感じる。
これは――この世界に対する鎮魂歌か……。
「流石にアウグスタの頼みでも、それは難しいですね」
次に回転をして上空を見上げた時に、俺の瞳に映る黒い影。
十羽以上。おそらく、二十数羽のカラスが俺に向かって殺到。視界のすべてがその瞬間、黒き羽根によって覆われて仕舞う。
無様に――。片腕を失い、急場に思い付く選択肢の少なさから、無様に大地を転がりながらその黒き羽根を躱す、躱す、躱す。
これはおそらく、ヨグ・ソトース第五の球体ドゥルソンの使い魔の
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