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万華鏡
第八十三話 卒業式に向けてその五

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「誰かを貶めたりするのじゃないといいから」
「自由に演奏して歌っていいから」
「アイドルがそうしてもね」
「いいし」
「というか本当に曖昧よね」
 バンドとアイドルの境目、それはというのだ。
「ジャニーズも密かにバンド好きだし」
「ダンスだけじゃなくてね」
「それでもいいからね」
「じゃあやっぱり境目はなくて」
「別にこだわらなくてもね」
「いいのね」
「私もそう思うわ」
 彩夏もわからないという顔だった、そして。
 里香もだ、天麩羅そばを食べつつ言う。美優が食べているたぬきそばをちらりと見たのは彼女の好物の揚げが入っているからだ。ただ景子が今食べているわかめうどんは見ていない。
「結局バンドもアイドルもね」
「境目ないのね」
「そう思うわ。あとね」
「あとって?」
 琴乃はラーメンを食べつつ里香に問い返した。琴乃が食べているのは塩ラーメンで彩夏は味噌ラーメンだ。
「アイドルってね」
「アイドルのことなの」
「よく顔がいいだけとかね」
「言われること多いわね、確かに」
「それ違うわよね」 
 こう琴乃に言うのだった。
「やっぱり」
「ええ、それはね」
 その通りだとだ、琴乃はアイドルについて里香のその言葉に同意した。
「顔よりもね」
「可愛いだけじゃなくてね」
「そう、努力なのよ」
「アイドルはね」
「ダンスだって何だってね」
「ファンへの応対もね」
 これもだ、握手なりサイン会なり。
「努力してこそよね」
「アイドルって努力なのよ」
「お顔じゃなくて」
「そう、どれだけ必死に努力してそれを実らせるか」
「それがアイドルよね」
「今お兄ちゃんがアイドル育成ゲームしてるけれど」 
 人気のゲームジャンルの一つだ、恋愛育成ゲームとはまた違う育成ゲームでありジャンルとして定着している。
「やっぱりね」
「必死に育てる中で?」
「キャラクターが必死に努力してるのよ」
「現実もそうだっていうのね」
「多分だけれどね」
 ゲームの中のアイドル達と同じく、というのだ。
「努力してるのよ」
「それでアイドルになっていくのね」
「現実もそうだと思うわ」
「アイドルは努力なのね」
「そう思うわ、私はね」
「アイドルも馬鹿に出来ないのね」
「だから人気あるんだと思うわ」
 昔から芸能界に一つのジャンルを占めているというのだ。それを定着させたのは山口百恵だと言われている。
「やっぱりね」
「努力してるから」
「だからアイドルなのよ」
「お顔じゃなくて」
「そう、歌でもダンスでもファンサービスもね」
 そうしたこと全てについてというのだ。
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