21話
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買いかぶりすぎじゃないかな」
水やりを再開する。猛暑の中、水しぶきが気持ち良い。
「先輩は、そこでも園芸を続けられるおつもりですか?」
「どうかな。学内の活動にこだわるつもりはないし、家の庭でも出来る事だからね」
「お父さんが、植物学者なんですよね。すごいです」
「うん。その影響が強いかもしれない」
ボクは雑談を続けながら、順番に水をやっていく。後輩は、ボクの後を追いながら話を続けた。
「珍しい植物とか、お庭にあるんですか?」
「国内では珍しいものも多いよ。管理が難しいみたいだけど、父がよく見てるから」
「あの、先輩」
不意に、どこか力が入った声で後輩が言う。
「私、あの、今度、先輩のお庭を見せてもらってもいいですか?」
意外な言葉に、ボクは水やりをしていた手を止めた。
水をやっていた野草から目を離し、後輩の方を見る。その時、彼女の後ろにもう一つの影があった。
「カナメ、後輩に手を出すのは感心しないよ」
由香だった。後輩の背後から現れた彼女は、後輩の肩を軽く叩くと、にこやかに言った。
「ちょっと外してもらっていいかな? カナメと話があるんだ」
「え、あ、はい」
突然現れた上級生に、後輩は頭を下げるとすぐにその場を離れていった。
怪訝な顔をするボクに、由香が困ったように言う。
「カナメは、東を受験するのか」
「今のところは。由香はもう決めた?」
ボクの問いに、由香は少し悩むような素振りを見せた後、悪戯っぽく笑った。
「そうだね。カナメと同じところ、という風に答えておこう」
「……県外には行かないんだ」
「最終学歴以外はどうでもいいし、環境に左右されるほど脆弱ではないつもりだよ」
「ある程度の、コネ作りにはなる」
「どうでもいいよ。学閥なんて今時流行らない。それに、そんなものが必要な環境に入るつもりもない」
それから、由香は面白そうに笑った。
「私はね、今一番、カナメが気に入っているんだ。特異だよ、君は。お受験用の勉強が出来る奴なんていくらでもいる。でも、君はそういう分類からは一線を画している」
だから、と由香は言葉を続ける。
「私は当分、キミと遊ぶ時間が欲しいと思っている」
「例えば、違法猟で捕まっている猪を実験に使う遊びとか?」
水やりを止めて、嫌味を言う。ただ、由香に嫌味は通じないらしい。彼女は面白そうに笑うだけで、反省する様子は微塵もない。
「そうだよ。キミ以外では、あんな遊び出来ないからね」
「あまり趣味の良い遊びじゃない」
「カナメ、キミはそうやって忠告する振りをするけど、本気で嫌がったり、嫌悪感を覚えている訳ではない。そうだろう? そうするのが普通だと思ったから、身につけた常識に従っ
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