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或る皇国将校の回想録
第三部龍州戦役
幕間3 嗚呼、華の近衛衆兵鉄虎第五〇一大隊
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い散らす程度で十分とはいえ、随分と早く済ませましたな」
 常の執拗さを知っている藤森が詰るような声で新城に云った。
「当たり前だ。僕らの狙いは殺す事ではない、砲の一時的な無力化だけだ、どの道僕らが合流する相手を狙っているんだ、多少掻き回しておくのも損はない」
 アリエフの推測通りこのような行動を新城に決断させたのは、導術網による情報の把握故であった。
 まず一つには北部に集中投入されている騎兵集団の他に<帝国>軍の騎兵部隊は壊滅状態にある事――第21師団の騎兵聯隊は昨日、馬堂豊久率いる第四十四混成聯隊に潰されているし、第三胸甲騎兵聯隊も師団司令部の防衛戦で壊滅状態である。
そして前線を支える猟兵部隊も動くに動けない状況である。

「――さて、準備は済んだかな?」

「はい、大隊長殿」
 戦闘工兵小隊長の後藤中尉が頷く
「宜しい、それでは僕らも退くとしよう」



同日 午前第七刻半 近衛総軍司令部 
近衛総軍参謀長 益満昌紀大佐


近衛総軍司令部と言えど状況が流動的になればそれは騎乗の将校達の寄合となる。
その中でも一際様になっているのが近衛禁士隊の騎兵聯隊長を務めた事もある益満昌紀近衛総軍参謀長である。
「美倉閣下は龍州軍が救助、後方に移送するとの事です」
その益満昌紀近衛大佐は淡々と神沢司令長官に報告を伝える。
益満大佐も神沢中将も近衛に籍を置く貴族将校の中でも有数の実務派と評されており、またその風聞に違わず堅実な指揮を執っている。
だがそうした堅実な指揮は近衛総軍全体の弱兵ぶりにより、十全な結果を齎す事は無かった――そのため、彼らは不本意ながら投機的な作戦を是認せざるをえなかった。
「うむ、第五旅団と五○一大隊はどうした」
 神沢中将も表情をこわばらせながら尋ねた通り、彼らは主力銃兵部隊と怪しげな新編大隊による後方への浸透突破作戦を承認した。そしてそれはなんと本営への攻撃に至り、集成第三軍との連携により一時的に聯隊以上の指揮系統を崩壊させる大戦果を挙げたのである。だがそれも<帝国>軍の龍爆による砲兵隊の壊滅と騎兵師団の突撃により戦場の北方を防衛していた集成第二軍の防衛線が事実上崩壊、これを予想していた龍州軍により予備隊の増強が行われていた事から北方戦域は防衛戦から遅滞戦へと移行する事となり、同時に龍口湾防衛線の放棄が決定された。これにより事実上、龍州全域が<帝国>軍の掌中に転がり込む事となるのだが――それよりはまた後の話である、それよりも彼らが問題としているのはこの混沌とした状況の鏑矢となった五○一大隊と第五旅団である。
 なにしろ敵本営まで浸透した事実上聯隊規模の剣虎兵大隊に常備の銃兵旅団である、これらの部隊と合流できればこれからの撤退戦が幾分かましになる事は分かりきっている。
そして、後方に
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