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その魂に祝福を
魔石の時代
第二章
魔法使い達の狂騒劇2
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うど扉の向こうから夕食を知らせる声がした。心眼で確認する限り、恭也達の罠と言う事もないようだ。それだけ確認してから、急いで魔力を練る。顔見知りの仲居が来ないという保証はない。用心して損はないだろう。
「いや〜、美味しい料理に温泉! たまんないねえ」
 泣いたカラスが何とやら――とは少し違うが。上機嫌にアルフが笑う。まったく、現金な奴だった。というか、せめて裾を気にしろ。浴衣姿で乱暴に胡坐などかくから、下着が丸見えだ。ついでに帯をちゃんと締めて、襟元も気にしろ。風呂上りで、上はつけてすらいないのならなおさらだ。
(別に女だからとは言わんが……。もう少し気にしないか?)
 やはり酒など飲ませるべきではなかった。この一行の保護者は彼女で――つまり、成人扱いされる。その結果、仲居の言葉巧みな売り込みで熱燗を一本注文する事になったのだが、失敗だったと言わざるを得ない。まったく、仮にも男がいると言う事を忘れないで欲しいものだ。
「そうだね。捜索が終わったら、私もお風呂に行ってこようかな」
 そう言ってフェイトも笑う――が、見たところあまり食事は進んでいない。少なくとも、いつもより箸の進みは遅かった。
「やはり刺身は食べ慣れないか?」
 かく言う自分も、初めて見た時は戸惑ったものだ。とはいえ、この身体にとってはそうではなかったし――何より、いわゆる御馳走の部類に入っていたらしい。食べる事への抵抗など、全くなかったが。
「え? ううん、そんな事はないよ」
 否定するが、やはり箸の進みは遅い。さて。一体どうしたものか。
「美味しいけど……私は、光のご飯の方が好きかな」
「それは光栄だが……」
 返事に困り、曖昧に苦笑する。それなりの腕だという自負はあるが、さすがに本業には勝てまい。例えば、桃子のような。
「まぁ、何だ……。帰ったら、お前の好きなものを作るよ」
「うん。楽しみにしてるよ」
 花がほころぶようにフェイトが笑う。何故彼女がこんなにも嬉しそうなのか、それは分からない。だが――やはり、右腕が酷く疼いた。




 温泉郷で迎える二日目の昼下がり。昨夜は空ぶりだった以上、今日中に決着をつけなければならない。……まぁ、山中で野宿をしたくないのなら、だが。
「心配しなくても多分、今日中には臨界を迎えるから……」
「そうそう。嫌でも見つかるよ」
「それはそれで素直に喜べないんだが……」
 二人の言葉に、思わず頭を抱える。臨界を迎えるという事は、ジュエルシードの暴走が始まるという事だ。市街地ではない以上、被害も限定的だろうが――かといって、むざむざと見逃す訳にはいかない。それに――
「暴走が始まれば、ウチの妹も気付くって事を忘れないで欲しいな」
 仮にフェイトとなのはの間で戦闘が生じた場合、どちらの味方になるのか。正直なとこ
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