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リリカルってなんですか?
A's編
第三十二話 後
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てはね」

 え? という顔でフェイトちゃんが顔を上げる。そこには理性の光が少しだけ戻っていた。おそらく、アリシアちゃんから事実を突きつけられたせいだろう。そのせいで、今まで凍っていた思考が動き出した。いや、もしかしたら、自分自身でもあるアリシアちゃんと相対することで意識レベルが上がったのかもしれないが。

「………そんな場所があるの?」

 それは救いを求めるような、懇願を求めるようなそんな口調であった。まるで、神に救いを求めるような純粋で、混じりっ気のない白い願いだった。

「言ったでしょう? もったいないなって」

 そう言って、僕の顔を見る。つられるようにフェイトちゃんも僕の顔を見ていた。初めて目を合わせた彼女の瞳は、期待と不安で揺れていた。

 それは、自分の―――フェイトちゃんとして居場所があってほしいという期待と、否定されれば唯一の救いすらなくなってしまうかもしれない、という不安なのだろう。だから、僕はうなずいた。

「そうだね、僕は君のお兄ちゃんだ。君が居場所を―――誰かから認められて、フェイトちゃんとしての居場所を望むのであれば、君が望み続ける限り、僕の妹は君―――フェイトちゃんだよ」

「わたし………が?」

 不思議そうに小首を傾げて、信じられないものを見るような目で僕を見る。だが、僕はその不安に揺れる目を見ながら、その不安を吹き飛ばすように強くうなずいた。

「そうだね。フェイト・テスタロッサさん。君だよ。君だけの場所だよ」

「今は私の場所でもあるけどね!」

 忘れないでよっ! と自己主張するように茶目っ気を出した声で自己主張するアリシアちゃん。そんな場合じゃないだろう!? と思い、嗜めようとも思ったが、今はフェイトちゃんから視線を外すべきではないと判断した僕は彼女に何も言うことはなくフェイトちゃんをただ真正面から見据えた。信じてくれ、というように。

「ほんとうに……」

 やがて、どれほどの葛藤があったのだろうか。考え込むようにして無言になった時間がいくばくか流れて、ようやくフェイトちゃんは一言だけ口にし、それを切り口にして言葉を続ける。

「ほんとうに………アリシアではない私を、妹として認めてくれますか?」

 あれだけ僕が言っても彼女は心の底から信じられないのだろう。当たり前と言えば、当たり前だが。彼女は今まで最愛の母親からも認められてこなかったのだ。それにも関わらず初対面の男が妹として認める、なんて言われても信じられるはずがない。本来であれば、信頼を積み重ねていかなくてはいけないのだろうが、時間が限られている今の僕では、信じてもらえるように言葉を重ねるしか方法はない。

 何度でも、何度でも。フェイトちゃんが、本当に信じてくれるまで。

「もちろんだ
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