A's編
第三十二話 後
[8/16]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
であってはいけないのだ。そこにいるのはフェイトちゃんが理想とした『アリシア』―――正確にはプレシアさんが望んだ『アリシア』ちゃんでなければならなかった。だから、プレシアさんに言われたであろう『ゴミ』や『贋物』という言葉を必死に否定したのであろう。
だが、僕がわかったのはそこまでだ。どうして彼女がそこまで母親であるプレシアさんを望むのかわからない。確かに親への愛情は強いとはいうが、それでも生きていけないほどなのだろうか。もっとも、これは僕が今の姿である小学生としての思考を持っていないからかもしれないが。
「あ〜あ、もったいないな」
僕とフェイトちゃんの会話に入ってきたのは、僕の後ろにずっと立って様子を見ていたであろうアリシアちゃんだった。
どうしたの? と僕が後ろを振り向いて彼女に視線を送るが、彼女から返ってきたのは、おそらく、「任せて」という意味合いのウインクだった。もしかして、アリシアちゃんはフェイトちゃんとの話をするためのきっかけとして僕を使ったのだろうか。最初から話しかけても彼女が答えてくれないから。
ならば、僕はしばらく様子を見ることにしよう。きっと、僕よりも彼女は彼女を知っている。だって、自分自身なのだから。
そう結論付けたところで彼女たちの会話は続く。
「………どうして、あなたが? あなたが外に行って。母さんに認められてよ。私は、それを夢で見てるから」
「夢で?」
一瞬、アリシアちゃんを見て、びくっ、となったフェイトちゃんだったが、自らが生み出したという自覚があるのか、あるいはフェイトちゃんの言ったことに反感を持ったからか、僕に相対していた時よりもやや強気な態度でアリシアちゃんに言う。だが、一方でアリシアちゃんも負けていなかった。フェイトちゃんが言った「夢で見ているから」の部分を嘲笑うかのように鼻を鳴らす。
「フェイトが夢でみているわけないでしょう? だったら、この場所はこんな風にはなっていないでしょう?」
この場所というのは、この空間のことだろうか。確かに、彼女は言った。この空間は、彼女が求めるものが存在できる場所であり、彼女が何も望まないからこそ、この空間は暗闇なのだと。
なるほど、フェイトちゃんが、自身の言うとおり、プレシアさんに認められることを望むのであれば、この空間はそのように作られるというのだろう。だが、そうはなっていない。ただ暗闇が広がるのみだ。
「ねぇ、フェイト。あなた、本当は理解しているんでしょう?」
そして、アリシアちゃんは、嗤いながらフェイトちゃんが認めたくなかったであろう一言を告げた。
「もう、母さんがフェイトを認めてくれることなんてなくて、あなたは完全に捨てられたんだって」
アリシアちゃんの言葉を聞いたフェ
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ