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リリカルってなんですか?
A's編
第三十二話 後
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験を考えれば、到底ありえない現実を目の当たりにしているのだから。今更、不可思議なことが一つや二つ増えたところで、本当に今更である。

「あはは、そうだね。今言ったことも、本当はお兄ちゃんに説明しやすいように事実を省略しているからね」

「どういうこと?」

「ん〜、確かに私が意識として生まれた原因はその子―――フェイトがアリシアであることを望んだからだけど、その前にフェイトには私が生まれる下地があったんだよ」

「アリシアちゃんが生まれる下地って?」

「お兄ちゃんも知っているでしょう? その子はアリシアの代わりだって」

 僕はアリシアちゃんの言葉にコクリとうなずいた。

 その事実を僕は知っている。現に僕はプレシアさんから、こういうと語弊があるかもしれないが、本当のアリシアちゃんを見せられた。水槽の中で眠ったような表情のまま安置されたアリシアちゃんの姿を。その際に聞かされたことを統合すれば、目の前のフェイトちゃんはアリシアちゃんのクローンとして作られたことは間違いないだろう。

「でもね、たぶん、お兄ちゃんが想像しているだけのクローンじゃないの」

「どういうこと?」

 僕の問いにアリシアちゃんは明快に答えた。

「お兄ちゃんは身体のコピーだけで全くおんなじ人間ができると思う? そんなわけないよね。確かに体のつくりは一緒かもしれないけど、肝心の中身は全くの別人だよ。そのことを母さんが―――アリシアを生き返らせようとした母さんがわからないはずはないんだよ。だから、母さんはその子に体と一緒にコピーしたものがあるんだよ」

「……まさか」

 そこまで言えば、僕にだって、プレシアさんが何をコピーしようとしたのかぐらい容易に想像がつく。確かに僕が知っているだけの世界の技術では不可能だろう。だが、別の技術を使えば可能かもしれない。たとえば、『魔法』とか。

 僕がアリシアちゃんが言おうとしている答えにたどり着いたことに気付いたのか、意地悪そうな笑みを浮かべてアリシアちゃんは言う。

「そうだよ。その子に母さんは、アリシアの記憶を転写したの。でも、それは失敗しちゃったんだけどね」

 沈痛な面持ちで言うアリシアちゃん。

 それは、そうかもしれない。たらればの話になってしまうが、もしも、その計画が成功していたならば、今のフェイトちゃんは、アリシアちゃんとしてプレシアの元で仲のいい親子として生活していたのかもしれないだから。

「そして、そのアリシアとしての転写された断片的な記憶とフェイトの望みが合体して生まれたのが私―――お兄ちゃんの妹として生活しているアリシアなんだよ」

 まあ、今の私は明確にその子と別れてるからもう少しアリシア寄りだけどね、とまるでなんでもないことにように笑って告げる
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