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リリカルってなんですか?
A's編
第三十二話 後
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イトちゃん?」

 その名前に反応したのか、アリシアちゃんと呼びかけた時にはピクリとも反応しなかった肩が反応して動く。そのままつられるように膝を抱えて、顔をうずめている体勢からゆっくりと顔を上げた。上げた顔はやはりアリシアちゃんと瓜二つだった。だが、たった一つだけ明らかに異なる点があった。

 それは目だ。彼女の瞳にはおおよそ、覇気というかやる気というものが見えなかった。

「その子は疲れちゃったの」

 どうしたんだろうか? という僕の疑問に答えるようにアリシアちゃんが口を開いた。

「母さんが好きだったから、好きだと言ってほしかったから、自分の身体を顧みず頑張ったの。頑張って、頑張って、頑張って、頑張って、その先に母さんがきっと笑ってくれると信じて」

 まるで娘を誇るような口調で、アリシアちゃんは彼女のことを語る。

 確かに、話だけ聞けば、それは麗しき娘から母親への愛だろう。だが――――

「でも、その願いはあの日、全部根こそぎ奪われちゃった」

 先ほどまで笑顔で誇らしげに彼女のことを語っていた表情とは打って変わって俯いて痛ましいものを見るような表情でぽつりと零すように言う。

 あの日―――それは、僕とフェイトちゃんが初めてであったあの雨の日のことを言っているのだろう。

 そう、僕は知っている。彼女の頑張りが願いが叶うことがなかったという事実を。

 亡くなったプレシアさんの本当の娘さんであるアリシアちゃんの身代わりとして生まれた少女。しかし、当然のことながら、アリシアちゃんの代わりになどなれなかったがために母親のいいように扱われ、そして贋物と、ごみと言われて捨てられた薄幸の少女。それが、前の前で膝を抱えて座っているフェイトちゃんだ。

「そして、すべてを諦めた彼女は思ったの。『もしも、私が本当のアリシアだったら、こんなことにはならなかったのに』って。そんな願いから生まれたのが、私。お兄ちゃんの妹であるアリシアだよ」

 自分を指さして当然のことのように告げるアリシアちゃんだが、僕は突然の思わぬ告白に驚くことしかできなかった。

 確かに、僕が聞きかじった知識からすれば、確かに幼年期のころにはそういったことがありうるのは知っている。原因もすべて特定されているわけではないが、現実からの逃避という意味で別の人格を作り出してしまうことがある。

 しかし、仮にそれがアリシアちゃんの正体だったとしても、そこまで別人格が事情を把握して、明確に僕に伝えられるものだろうか?

「………信じられないようなことだね」

 現実には起きているのだが、にわかには信じがたいというのが正直な感想だ。だが、目の前の現実を否定できるほど僕の考えは固くない。なにせ、『転生』やら『魔法』やら、今までの人生経
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