A's編
第三十二話 後
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れようと伸ばしていた手を止めて、声が聞こえた背後を確認するために振り返った。
「………アリシアちゃん?」
「そうだよ、お兄ちゃん」
まるで、やっほー、とでも言わんばかりに手を振って僕からやや離れた位置に立っていたのは、僕の妹と瓜二つの―――いや、彼女の言葉を信じるならば、彼女こそが僕の妹ということになる。ならば、この目の前の彼女は一体誰なんだろう?
「う〜ん、やっぱり、動かせる身体があるっていいね! この空間じゃ、私は認識されてなかったから、お兄ちゃんが名前を呼んでくれて助かったよ」
「………どういうこと?」
アリシアちゃんが伸びをしながら、僕には理解できないことを言う。残念ながら、『この空間』とか『認識』などと言われてもこの空間の仕組みを理解していない僕にはチンプンカンプンである。そもそも、この空間とやらを理解しているであろうアリシアちゃんも謎だが。
「う〜んとね、この空間は、この子専用なの。この子が望んだものだけがこの空間には存在できる。だけど、何も望まない、望むだけの意志がないこの子の空間は何もないの。だから、私も表には出てこれなかったの。そこに意志はあるんだけどね」
もちろん、お兄ちゃんは別口からの許可だから話は別だよ、と続けて彼女は説明を続ける。
「この子の空間なんだけど、そこにお兄ちゃんっていうある種別口の存在が現れて、お兄ちゃんが私の名前を呼んでくれたから私はこうやってこの空間に顔を出すことができたのでした」
ありがと〜、といつも浮かべていた笑顔のまま礼を述べるアリシアちゃん。その笑顔を見れば、僕は目の前の少女がアリシアちゃんであることは疑いようのない事実であることが容易にわかる。ならば、先ほどからアリシアちゃんが『この子』と呼ぶ少女は一体誰なんだろうか?
「お兄ちゃんはもう知ってるはずだよ」
アリシアちゃんからこの子と呼ぶアリシアちゃんと瓜二つの少女を見ていた僕に対してまるで心を読んだようにアリシアちゃんは真面目な顔をして言う。
―――僕がこの子を知っている?
だが、記憶の中をさらってみてもアリシアちゃん以外に彼女と同じ容姿を持った少女と出会った記憶は―――いや、あった。あの日―――僕が時の庭園へと拉致された時、僕はアリシアちゃんと瓜二つのアリシアちゃんを見ている。その時、プレシアさんから言われたことは、なかなか忘れようにも忘れることはできない。
「さあ、お兄ちゃん。呼んであげてよ。その子の名前を」
すべてを包み込むような優しい声で、目の前の彼女を慈しむような声でアリシアちゃんが促す。
ああ、僕は知っている。彼女の名前を。アリシアちゃんが本来名乗るべき本当の名前を。だから、僕は確認するようにその名前を口にした。
「フェ
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