A's編
第三十二話 中
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そう、かもしれないね。もしかしたら、僕もいつかはやてちゃんと離れてしまうこともあるかもしれない。でも、失うばかりじゃないでしょう?」
僕の言葉に重い表情をするはやてちゃん。だが、そんな表情を吹き飛ばすように僕はことさら明るい表情で笑いながら言う。その陰鬱な雰囲気を吹き飛ばすように。
「僕とはやてちゃんが図書館で出会って、そこから出会いを重ねたように、新しい絆だって結ぶことだってできるよ。それが失う絆よりも得る絆が多ければ、はやてちゃん、君は一人にはならないよ。そして、それらが積み重なっていけば、君が一番欲しかったものがきっと得られる」
「私が一番欲しかったもの?」
問いかけるように僕に言うはやてちゃん。
ああ、もしかしたら、寂しさが先に来て、失いたくないという感情に引きずられて、彼女は気付いていなかったのだろうか。彼女が思い焦がれ、望んでいたものに。彼女が一人は嫌だと泣きはらしたその先にある本当に望むものに。
「そうだよ、はやてちゃん。君がいくつもの絆を紡いで、それらと付き合って、そして君が一番欲しかったもの―――『家族』が得られるよ」
「家族……」
信じられないというように呆然とつぶやくはやてちゃん。もしかしたら、小学生である彼女は気付いていなかったのかもしれない。家族を作れるものだということに。小学生ならば無理はないか、とも思う。子どもの内は庇護される存在だ。庇護する側の家族の一員になれるとは思わないのだろう。
「私に家族………それってほんまに作れるんかな?」
「できるさ。はやてちゃんが、もう少し大人になって、本当に好きな人と出会えれば」
彼女が想像しているのは、どんな家族だろうか。彼女がどこまでの家族を記憶しているかわからないが、ヴォルケンリッターのような三人もいるような家族を彼女が理想とするなら、それは大家族だろう。しかし、彼女がどんな家族を想像していたとしても、僕ははっきりと断言することができる。
「君にはきっと素敵な家族ができるよ」
彼女は、知っている。失うことの怖さを。家族が一緒という当たり前のことが当たり前ではないことを。だからこそ、大切にすることができる。ようやく手に入れた家族という絆を。
そして、もう一つの条件である好きな男性に出会うということだが、こちらのほうはあまり心配していない。はやてちゃんは、贔屓目に見なくても美少女であることは保証できるし、性格が悪いわけではない。彼女の本質に触れられれば、明るい性格の女性であることはすぐにわかるから。僕の前世でも彼女のようなタイプは好ましいということは聞いたことがある。
それらを総合して考えたとしても、僕はやはり彼女が素敵な家族を作れることを保証できる。
「僕が―――君の友達である僕が
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