A's編
第三十二話 中
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れた。彼女は、それだけでは不満ということなのだろうか。
「わかっとる。でも………それは、友達としてやろ? ショウくんかて、この事件が解決したら、自分の家に戻るんやろ?」
「それは―――」
彼女が言うことは事実だ。今までは、護衛という名目で彼女の家にいたが、それも事件が解決すれば―――この状況を打破すれば、そういうわけにもいかなくなるだろう。つまり、僕は自分の家に戻ることになる。学校も日常にシフトしてしまえば、彼女に毎日会うということも不可能になるかもしれない。その分も電話やメールでカバーできるかもしれないが、それも限界があるだろう。
そもそも、僕ははやてちゃんが望んでいたものを本質的に理解していなかったのかもしれない。
寂しい、孤独―――だから、隣に誰かが欲しい、それが彼女の願いだと思っていた。それは、心の距離であり、そういう間柄の誰かがいればいいと思っていた。それがたとえ、友達だったとしても。だが、それは違った。彼女が本当に求めていたのは、もっと近いものだ。心も体も。それを一言でいうならば、彼女が求めていたものは―――『家族』だろう。
彼女は、家族を知らずに育ち、家族を知って―――家族を失った。
一度知った楽しみを失った彼女は失うことに悲観的になっている。だから、こうしてもう一度、僕と縁を結んだとしても、いつまた失うかもしれない恐怖に押しつぶされそうになっている。いや、それはもしかしたら、僕との絆が得られたからなおのことかもしれない。失うかもしれないなら、最高の思い出のまま―――というやつである。
僕との絆が嘘だったとしても、本当だったとしても結末は変わらなかったということだろうか?
いや、それは違うだろう。前者だとすれば、はやてちゃんは何も信じられなくなっているだろう。だが、今は絆があることを信じられた。つまり、まだ希望があることを知ることができたのだ。ならば、失うことばかりで絶望を見ている彼女に教えるべきだろう。
この世界は失うだけの絶望だけではなく、得られる希望も等しくあるのだということを。
「ねえ、はやてちゃん。君が言いたいことはわかったよ。でも、それでも、僕は君に一緒にこの状況を打破する方法を考えてほしいと思っている」
「でも……もう嫌なんや。あんな思いをするのは……ショウくんかて、みんなみたいにいなくなるかもしれんのやろ?」
はやてちゃんは、今、失うことに臆病になっている。僕のことにしてもそうだ。確かに、僕は彼女を一人にしないといった。だが、それでも不慮の事故や、子どもの身ではどうしようもないことで離ればなれになってしまいこともあるかもしれない。そのころには、彼女は僕以外の友人も作っており、なにより、彼女との縁を切るつもりはなかったのだが。
「
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