A's編
第三十二話 中
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人以上の特別と言えるような絆はなかった。
その状況で疑わないなんてのは聖人でもなければ不可能だろう。
「だから、謝らなくてもいいよ」
「ショウくんは、許してくれるんか?」
ようやく涙が止まりかけていた彼女は車いすに座った状態で、やや上目遣いに尋ねてくる。泣きはらした跡が痛々しい。
僕は、彼女の言葉に首を縦に振ることで応えた。もともと、彼女が謝る必要なんてないのだから。許すも許さないもないのだ。だが、それで、彼女が納得しないというのであれば―――
「うん、僕が言うことじゃないかもしれないけど、大丈夫、僕ははやてちゃんを許すよ」
その言葉を投げかけるしかなかった。
僕の言葉を聞いて彼女は、理解するためだろうか、一瞬、表情を固めて、そのあとに安堵するようにはぁ、とため息を吐いた後、笑った。それは、緊張から解放されたような安堵の笑みだった。
「よかった、ショウくんが許してくれて」
「最初から許すも許さないもなかったんだけどね。ところで、僕は許してくれるのかな?」
少しだけ茶目っ気を含んだようなからかいの言葉に彼女も余裕が出てきたのか目を細めて笑った。
「もちろんや。でも、今度からはちゃんとしてもらわなあかんで?」
「わかってるよ」
彼女の信頼を得るために、僕は行動しなければならないだろう。約束したのだから。約束は果たすべきで、果たされるべきで、果たせるように努力するべきなのだから。
「最期までショウ君と一緒でよかったわ」
ぼそっ、と一言、はやてちゃんが口にしたようだったが、その声は小さすぎて僕のところまでは聞こえてこなかった。
「え? 何か言った?」
「ううん、何でもないで」
手を振って否定するはやてちゃん。何か言っていたことは間違いないのだが、それを僕に伝えない以上、特に意味がないものだったのだろう。はやてちゃんが口にしないのならば、それ以上追及する必要もないだろう、と判断して、僕は頭を切り替えることにした。
つまり、はやてちゃんと仲直りができた次のステップについて―――すなわち、ここからの脱出、あるいは状況の打破である。
さて、どうしようか? と考え始めた時、不意にはやてちゃんが口を開いた。
「なあ、ショウくん。次はどんな世界に行こうか?」
「え?」
それは僕が予想していなかった言葉だった。だから、僕も困惑してしまう。なぜなら、彼女が口にした言葉はこのまま、この場にとどまるという選択肢だったからだ。どういう意味だろうか? と助けを求めるようにリインフォースに視線を送ってみるが、彼女は痛ましいような表情をして主であるはやてちゃんを見つめるだけで特に口出しをするつもりはないようだった。
そんな
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