A's編
第三十二話 中
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られて、そして、目の前で同じようなことを言っているのだ。そう簡単に信じろと言われても、信じられないというのが本音だろう。だが、そんな彼女を彼女を安心させるように闇の書は僕の前では決して見せなかった笑みを浮かべて彼女の主に応える。
「ええ、間違いありません。主から賜った祝福の風―――リインフォースの名にかけて、私の言葉が嘘、偽りでないことを保証いたします」
まるで母親のような、姉のような声で肯定されたはやてちゃん。僕には彼女がいう名前がどれほどの重みをもつのかわからないけれども、それが最大限の保証であることはうかがい知れた。そして、それをはやてちゃんも理解したのだろう。目を見開いて驚いたような表情をしていたが、やがて、顔をゆがめると目に大粒のしずくが浮かび上がってきた。
その表情を見て、僕と闇の書―――リインフォースと名乗った女性は慌てた。当たり前だ。ここで、何かしらの反応を見せることは容易に想像できたが、それが泣くという行為になるとは予想していなかったのだから。そして、慌てはじめたころにはすでに遅かった。瞳というダムはすでに決壊しており、瞳にたまっていた大粒の雫は、そのまま頬を伝って流れていた。いくつも、いくつも。しかも、ひっく、ひっく、と嗚咽を漏らしている。
さて、まことに残念ながら僕には女の子の涙を即座に止められるような魔法のようなものは持っていない。そして、それはリインフォースも同じだったようだ。僕たちはそろいもそろってうろたえるしかなく、彼女が泣いているという事態を呑み込めるようになって、ようやく彼女に近づくことができた。
「ど、どうしたの?」
突然、泣き出すという事態に動揺が収まっていなかった僕はやや上ずりながらもはやてちゃんに事情を尋ねる。だが、泣いている彼女がまともに答えてくれるはずもない。それでも、彼女が漏らす嗚咽の中でようやく聞き取れた単語は、「ごめんな」という謝罪の言葉だった。
だが、その言葉を聞いてもよく内容が理解できない。彼女が何に謝っているのか理解できないのだ。むしろ、謝るのは僕のほうだというのに。
「どうして、謝るの?」
「私……は、ショウ君……を信じ……られんかった」
嗚咽交じりの声で言うはやてちゃん。なるほど、と一応の理解はできた。でも―――
「謝らなくてもいいよ」
そう、彼女が謝る必要なんてない。
「確かにはやてちゃんは僕を疑ったかもしれないけど、それは状況が状況だからね」
今まで味方だと思っていた人に驚愕の真実を告げられて、そして、僕は残念ながらその人たちの味方だった。ましてや命を狙われていたのだから。人間不信になっておかしくはない。僕とはやてちゃんの間に特別な絆でもあれば話は別だろうが、残念ながら僕とはやてちゃんの間には友
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