A's編
第三十二話 中
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れた温もりは一切なかった。ある種当然なのかもしれない。知らない、というのは免罪符にはならないだろう。だから、僕はこの言葉を口にしなければならない。
「ごめんね」
「――――」
僕の言葉にはやてちゃんは無言だった。ただ、僕を感情の映らない瞳で見つめてくるだけ。それでも、僕は言葉をつづけた。
「僕ははやてちゃんに一人じゃないなんてかっこいいこと言っておきながら、君から信頼を得ることができなかった」
だから、ごめん、ともう一度だけ続けた。もしかしたら、これは僕の考えすぎなのかもしれない。だけど、どうしても考えてしまうのだ。あの時、もしも、クロノさんの言葉ではなく、僕の言葉を信じていたら、彼女が一人ではないと確信していたら、その時は一体どうなっていただろうか、と。もしかしたら、こんな事態にはなっていなかったのではないのだろうか、と考えてしまう。
もっとも、現状で、たられば、を言っても仕方ないということもあるだろう。後悔が先に立つことはない。だから、謝るのだ。謝ったところで何かが変わるわけではないのだが、それでも、後悔と誠意を示すために。
僕が謝罪の言葉を口にしている間、はやてちゃんは無言だった。車いすの横に佇む彼女―――闇の書も。ただ、正面から僕を見つめてくる。やや居心地が悪かったが、それでも彼女から目をそらすことはできなかった。それが不誠実な気がして。
「そうやって―――また、私をだますんやね?」
「え?」
ようやく彼女の口から発せられた言葉は信じられないような言葉だった。
だが、それは考えるべきだった。僕は台本を渡されていないとはいえ、はやてちゃんから見ればクロノさん側で踊った役者なのだ。だからこそ、闇の書も言ったではないか。「信頼を得ていた」と。その文言は過去形。あれが、闇の書が見せていた夢だとするなら、主を楽しませるための夢だとするならば、僕が夢のキャストになりきる必要はどこにもない。僕は僕のまま夢に取り込まれるべきなのだ。
だが、そうではなかった。僕は夢の中でも役割を与えられた。「聖剣を抜いた勇者としての蔵元翔太」として。本当にはやてちゃんからの信頼が残っているなら、僕は僕として呼ばれるべきなのに。なのに、僕は鋳型にはめられた僕として取り込まれてしまった。つまり、僕は完全に彼女からの信頼を失っていたのだ。
「そんなことはしないよ。あんなことの後に僕が何を言っても信じられないかもしれないけど、僕も何も知らなかったんだ。はやてちゃんに知らせたことしか知れなかったよ。だから、この言葉もあの時の『君を一人しない』という言葉も嘘じゃない」
これは僕の本心だった。彼女には信じてもらえないかもしれないけど、僕はあのとき、はやてちゃんの一人の友人として、彼女を孤独にするつも
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