A's編
第三十二話 中
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たとすれば―――はやてちゃんは、一人が嫌だと泣いた彼女は、間違いなく世界に一人で取り残された少女だった。
そんな彼女が世界に戻ることを望むだろうか。一人が寂しくて泣いていた少女が。これからも一人になることをわかっていながら戻ることを望むだろうか。もしかしたら、彼女が強い人間で、これから先の未来を望むような少女であれば、問題はないだろうが、現状を鑑みるにその可能性は低いようだ。
ならば―――ならば、僕にはやらなければならないことがある。
僕は思考の海から意識を浮上させ、闇の書を真正面から見据えた。
「闇の書さん、お願いがあります。はやてちゃんに会わせてください」
「なぜ?」
「僕ははやてちゃんと話さなくてはいけないことがあるからです」
そう、僕ははやてちゃんと話さなくてならない。あの日―――はやてちゃんの家族がもう帰ってこない、少なくとも彼女がそう感じた夜、僕の背中で泣いた夜、僕は彼女と約束したのだ。僕ははやてちゃんと友達であり、彼女を決して一人にしない、と。
だから、彼女が一人だと。世界で独りぼっちになってしまった、と思っているのならば、僕は傍らに立たなければならない。彼女を一人にしないために。だから、僕は、はやてちゃんと話をする必要がある。話して再び伝える必要がある。
―――君は一人じゃない、と。
「………わかった。もともと、少年は主の夢のキャストとしても呼ばれるほど信頼を得ていた。主が否、と言わなければいいでしょう」
「ありがとうございます」
断られれば、会えないことはわかっている。しかし、それでも機会をくれたことには素直に頭を下げた。ここで彼女が頑なに断れば、僕にはなすすべがなく、はやてちゃんと話すことすらできないのだから。このまま世界が終わったとしたら、はやてちゃんと話せないのは、最後の大きな、大きな後悔となっていただろう。
まるで、どこかと通信するように目をつむった闇の書。その瞳が再び開かれたのは、ほんの数秒だったように思える。彼女の瞳が再び僕を見据えた後、その場に立っていたのは僕が闇の書と呼ぶ女性としばらくの間だが一緒に暮らしていた車椅子に乗ったショートカットの少女―――はやてちゃんの姿があった。
お互いに視線は合わせているが無言だ。何を言っていいのか、何を言うべきなのか、すぐに言葉が見つからない。伝えたいことはたくさんあるはずなのに。だが、ほどなくして一番最初に口にするべき言葉は決まった。伝えたいことはたくさんあるけれども、僕は彼女にこれを最初に伝えなければならない。
「はやてちゃん」
「―――なんや? ショウ君」
僕の言葉に答える人形のように感情を映さない瞳で僕を見て口を開くはやてちゃん。その口調からは一緒にいた間、感じら
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