その一
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室から出ていく姿を目で追う。
今、篠ノ之さんは織斑くんのことを下の名前で呼んでいたよね……ってことは、もしかして二人は知り合いで、しかも、かなり親しい間柄なのかな。
私も織斑くんとお近づきになりたいなぁ、何て思いつつ、私は篠ノ之さんのことを少し羨んでいた。
休み時間も終わり二時間目を告げるチャイムが鳴る。
ギリギリで戻ってきた織斑くんと篠ノ之さん。
二人の間でどんな話が交わされたのか気になってしまう。
織斑くんを見れば席に座らず立ったまま。
そんな織斑くんに悲劇が襲いかかる。
スパンッという音が教室に響き渡った。
また織斑くんが出席簿で叩かれているよ。
「とっとと席につけ、織斑」
本日二度目の出席簿アタック。
織斑くんの脳細胞が午前中だけで二万個近くも死滅したんじゃないかな。
この調子で織斑くんが出席簿アタックを受け続けたら、織斑くんは来年の今頃は姉である織斑先生のことを忘れているかもしれませんよ? と忠告したくなった。
授業が始まり静まり返った教室には山田先生が教科書を読む声だけが響く。
「ISの基本的な運用は現時点で国の認証が必要であり――」
山田先生はしばらく教科書を読んできたけど、その声が急に聞こえなくなる。
私は見ていた教科書から顔を上げると山田先生がいるだろう教卓のあたりを見た。
山田先生は教卓から離れ織斑くんのそばに歩み寄ると、織斑くんの顔を覗き込む。
「織斑くん、何かありますか? 質問があったら聞いて下さいね。なにせ私は先生ですから」
「先生」
「はい、織斑くん」
「ほとんど全部わかりません」
織斑くんの言葉に山田先生はかなり戸惑うようすを見せる。
「え……。全部、ですか?」
「……織斑。入学前に渡した参考書は読んだか?」
こう言ったのは織斑先生。
「間違えて捨てました」
織斑くんの言葉を聞いた織斑先生はすぐさま行動を起こす。
織斑くんに近づいたかと思うと、右手に持っていた出席簿を高々と持ち上げ、それは勢いよく振り下ろされる。
出席簿は織斑くんの側頭部を的確に捕らえていた。
スパンッという音が聞こえている。
織斑くん、かなり痛そう。
寝てもいないのに寝違えそうなくらいに首が変な風に曲がっているように見えるよ。
それにしても織斑くん、参考書を間違えて捨てちゃうなんて……もう、うっかり屋さんだなぁ。
織斑くんはかっこよくてうっかり屋さんというギャップ萌を狙っているのかと私は思った。
二時間目の授業が終わっての休み時間。
今度こそ織斑くんに声をかけようと思っていたのに、また先に声をかけた人間がいた
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