第十話 本音と建前と
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「そうやって何も疑わずに生きていければ楽だ。俺もそうして生きていければよかったよ。その一途さは、殺すには惜しい。が、許してくれ。」
次の瞬間、徳富には瀧が消えたように見えた。そんなはずはない、疲労で集中力が失せているのか?徳富が思った時には、その体を衝撃が襲う。大太刀を叩きつけられた徳富は宙に舞う。そしてまたどこからか、大太刀が体に叩き込まれる。いや、その前に、いつの間にさっき体に食い込んだ大太刀を抜き去ったのだろう?そう考えた時には、4回目の斬撃が徳富を襲った。やっと、痛みが感じられるようになった時には6回目。隙間なく宙にバウンドし続け、肉を削ぎ落とされていく状況に陥った徳富は悟った。
ああ、これが瀧の本気なんだ。さっきまでは、手加減されてたんだ。
どんどん自分の体が軽くなっていくのを徳富は感じた。再生が追いつかない。呪禁道の侵食を避けて、細胞を分離していくが、この分では、身体中全ての細胞を殺すまで、瀧は攻撃を止めないだろう。
死ぬ。このままでは、死ぬ。
誰かの為にって、誰の為?さっき瀧に言われた言葉がふと頭をよぎった。
意地悪な事を言う。実のところは、任務を無視して、組織を裏切るのが怖かった。それをやると、どうなってしまうんだろう。不安だったから、考えようともしなかった。東機関に入ってからというもの、ずっとそうしてきた。多少不自由があろうと、疑問があろうと、気づかないふりをして、それらについて考えようなんてしてこなかった。これが自分の生き方だから。それ以外にない。そういう風に納得して。いや、納得したふりをして。生まれた時から、工作員になんてなりたかったわけがないじゃないか。幼い時はそれこそ、女の子らしい夢のひとつやふたつあった。気がついたら身寄りも居らず、施設に入れられ、勝手に注射されて、壮絶な苦しみの後におかしな能力まで身について…
遠くで、銃声が聞こえたような気がした。
徳富の体はしばらくぶりに、地に落ちた。どさっと音がして、斬撃に比べて鈍い衝撃を徳富は感じた。
見上げると、瀧が居た。瀧は、自分ではなく、遠くを見ている。そちらに目をやると、小綺麗にスーツを着込んだ色白で細面な女が、古本と同じ対物ライフルを瀧に向けていた。
「久しぶりね、瀧くん。18歳の娘をいたぶる気分はどうだったかしら?」
厚い唇が開き、よく通る高い声が響く。
徳富はその声を聞いた瞬間、何とも言えない感情がこみ上げた。
「き、局長…」
徳富は、遠くに佇む上戸の方へと向かおうとする。手も足もズタズタで、既に原型をとどめていない。まともに形をとどめているのは頭くらいで、徳富自体、もう「肉塊」に近い。それでも、体の動く部分を必死に動かして、ジリジリと遠くの上戸を目指して這っていった。
「た、す、けて…」
そん
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