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白井雪姫先輩の比重を増やしてみた、パジャマな彼女・パラレル
第10話『告白』
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ーン!! </b>

<b>「いてーっっ!!」</b>

派手な音と悲鳴に、ビクリと振り返る。

「かっ……傘立てが……」

少年が呟いている。
──カエルのようにべちゃりと地べたに這って。しかも、両ヒザを傘立てにひっかけていての、海老反った姿だった。

「ぷっ……!!」

一体どんな転び方をすればそんな姿に……!?
たまらず吹き出してしまっていた。──随分と久しぶりに。
そんな雪姫の笑いに気づいた少年が、こちらを見上げてきた。
慌てて前に向き直る。

──気を悪くしちゃったかな……怒ってないかな……?
新入生みたいだし、先輩につかみかかってきたりなんて……しないよね……?

内心ビクビクだったが、少年は軒先まで来ても黙ったまま立っていた。
ほっとした瞬間に、

「あの……」

話しかけられて、ビクッと振り向く。

「傘、つかいます?」

少年が、気負いのない笑顔で傘を差し出してきた。

「えっ!? あっでも……?」
「俺チャリなんです。合羽もあるんで」
「……でも……」

見知らぬ相手からいきなり借りるのも抵抗がある。

「あと一回使ったら捨てるつもりだったボロ傘ですから。
使ったら捨てちゃってください」

そこまで言われては、これ以上遠慮するのもかえって悪いかと、傘を受け取った。

「……ありがとう……」
「じゃあ失礼しますっ」

少年は自転車置き場へと駆け出していく。

「…………」

無言で、もらった傘を開いてみる。
確かにボロだった。──あちこち折れてて、想像以上に。
また軽く吹き出してしまう。

──なんかヘンな男の子……

一分にも満たない短いやり取りだったけれど、その笑顔が不思議と心に残った。

─────────────────────────────────

──おふくろぉ……!!!

母親の「もう一回くらい使えるわよ。持ってきなさい」という言葉のままに持っていった傘だった。
『ちょっと使えないくらいボロボロだったよ』という雪姫の話を聞いて、計佑は火が出る思いだった。
別にカッコつけたつもりはなかった。
それでも、ちょっとした親切のつもりが実はゴミを押し付けてただけとなれば、いたたまれないのは当たり前だ。
本当にこの人には、痴漢行為を数々働いてしまうわ、カッコ悪いとこばかり見せてしまうわで……
あらためて、なんでこんなに構ってもらえてるのか不思議になる。

──そんなにオレって、からかい甲斐あるのかなぁ?

……未だに、雪姫にとっての自分はそれだけの価値しかないだろうと考えてしまう、鈍感で、そして謙虚すぎる少年だった。

──それにしても……なんで気付かな
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