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東方変形葉
全国10カ所の妖気
東方変形葉45話「終結、少年の過去話」
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つけてしまうような力が。
そのころから、少年は人とのかかわりをできるだけ避け、友達は作らず、どんなに遊びたいと思っても必死で我慢していました。
ある程度知識を持った少年は、自分がおかしな力を持っていることに気が付かれないように、必要最低限の人との交流を避けていました。少年は表では明るい表情を見せていましたが、裏では心を固く閉ざしていました。
そんな生活が続き、少年は中学・・・比較的難しい内容の寺子屋のことね。そこに入学した次の日のことでした。
少年の両親が、謎の死を迎えてしまったのです。
少年は児童養護施設に入れられることを勧められましたが、少年はそれを拒否し、もともと手先が器用だったために人形を作ってお金を稼ぎ、それに加えて親の遺産を受け継いで一人で暮らしていました。


「―――ということよ。少年は人に甘えることを知らなかった。ここに来るまではね。」
「・・・そうだったの。」
とても残酷な昔話だ。私より年が離れているというのに、そんな苦汁の日々の中を暮らし、しかもその生活に慣れてしまっていたとは。人を傷つけたくないという極めて善良な心を持つ人間がどうしてそのようなつらい経験の中を生きているのか。
「・・・今の話、本当?」
いつの間にか、姫雪が近くにいた。少し目が潤い、今にも涙を流しだしそうな雰囲気を出していた。
「・・・ええ、本当よ。あの子はここに来てからゆっくりと心を開きつつあるけれど、まだ人に甘えるような感情は封印されたままね。だから、私たちがしっかりとあの子の心が完全に開くようにしていかなきゃいけないわ。」
紫が優しい口調で姫雪に言う。今でこそ、能力を使い慣れているようだが、どうやらまだ過去のことが根強く残っているようだ。
裕海が来てからもう五か月になろうとしている。かなり積もった雪は融け始め、時より小春日和が顔を出す。もうすぐ春になるようだ。



人形たちが懸命に作ったご飯を食べた後、また深い眠りについた。そして今、目が覚めた。障子が赤く染まっているのを見て、今は夕方だと無意識にわかった。それにしても、人形たちの料理は美味しかったな。さすが咲夜が教えただけある。
「さてと、水でも飲むかな・・・あれ?」
布団をめくると、姫雪が眠っていた。俺の寝巻の端をギュッとつかみ、離そうとしない。なぜか姫雪の頬は涙が流れた跡があった。怖い夢でも見たのだろうか。そういや、食事の時姫雪はずっと薄暗い顔をしていたな。午前中に見た夢がそれほど怖かったのだろう。そっと抱くと、姫雪は安心したかのような顔を浮かべた。
前まではこんな生活ができるなんて考えもしていなかったな。俺は少しだけ笑いをこぼし、再び眠りの中に入って行った。



続く

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