新たな絆は抑止の鎖
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獰猛な猛獣のようにも、好物を前にした子供のようにも見える。
そわそわと身体を揺らし、待てを掛けられた子犬がするように首を傾げて、その美女は不足気な視線を秋斗に向けていた。
「なぁ、もうええやろ? 待つんなんかウチの性には合わへんって分かるやろぉ?」
艶っぽい声音が耳を打つ。
美しい女が独特の関西弁で懇願するその悩ましい声を聞けば、大抵の男であればコロリと落ちてしまうのではないかと、そんな感想が秋斗の頭に浮かぶ。
大人の女性ならではの起伏が目立つしなやかな身体を寝台の上に横たえて、そんな誘いを向けられたなら……据え膳を食わない、という選択肢を選ぶモノの方が少ないであろう。
しかし今の部屋の様子を見れば、欲望のままに襲い掛かる男など居はしない。
何故なら、彼女が求めているのは男では無く……
「ダメだ。ゆえゆえがつまみを持って来てくれるまで飲む事は許さん」
「徐晃のいけず! 一口飲むくらいええやんか!」
大量に用意された酒であったから。
寝台に寝そべって、ダダをこねる子供のように脚をバタバタさせて、紫藍の髪を揺らした霞。
「なぁ、ちょっとだけ先に飲んでもええやろー? なぁ、なぁ、ええやろー? なぁ――――痛っ!」
「私の寝台で暴れるな!」
「いちち……何も叩くことあらへんやんか……」
「ふん! 拳じゃなかっただけありがたく思え!」
尚も口を尖らせながら同じく懇願を繰り返す霞であったが、すっくと立ち上がった春蘭に頭を叩かれて、涙目で不足を露わにした。
大きくため息を吐いた秋斗は、目の前に座るもう一人に目を向ける。
「なぁ妙才、張遼はいつもこんなんなのか?」
「ふふ、まあ……こんな感じだ。
姉者も霞も喧嘩などするなよ? 酒を取り上げられてもいいのなら別だが……」
柔らかく上品な笑みを浮かべたのは秋蘭。春蘭と霞が口喧嘩を始め出す前に言い放った。
普段なら間違いなく、二人は――と言っても霞はからかっているだけなのだが――言い争いに発展してしまう為に。
「しかしな秋蘭。元はと言えばこいつが私の匂いがするー、とか言って寝台に寝そべったのが悪いんだぞ?」
「ウチ、春蘭の匂い結構好きなんやからしゃあないやん。くくっ、きっと華琳も好きなんちゃうかなぁ?」
「そ、それは偶に言って下さるが――――」
「へぇ! どんな感じで言われるんや?」
「そんなこと教えられるか!」
「ええやんかー、ウチと春蘭の仲やろ?」
「ダメなモノはダメだ!」
口喧嘩にはならず、しかし男の前でそのような会話を繰り広げるのは如何様なモノか。
繰り広げられる内容に行く先を考えて、秋蘭は苦い顔で額に手を当てため息を零した。秋斗も苦笑を一つ。
後に、断り続ける春蘭と、どうにか聞きだそう
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