新たな絆は抑止の鎖
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。口を尖らせて睨み、春蘭は先を促す。
チラと秋蘭を見やり、
――なんかこの説明じゃダメな気がする。
意を込めて目くばせをすると、ふるふると首を振っていた。
頭を抱えたくなったが、秋斗は簡略化した説明をしようと切り替える。
「……あー、分かった。じゃあさ、お前さんは何があっても戻ろうとするんだろ? 黒麒麟もそうかもしれないって事だ」
「黒麒麟に戻ったお前が劉備に忠義を示すと、そう言うのか?」
「かもしれないってだけだよ」
全ては不確定の話でしかない。だが、さすがに秋斗は名が売れすぎた。
集まる兵は其処に黒麒麟を見る。その黒麒麟がブレてしまっては、軍そのモノを脅かす毒となりかねない。
記憶を失う前の秋斗の狙いはそこであったのだ。曹操軍内部で兵士を掌握し、大局の場面で混乱を齎す……黒麒麟を従えたい覇王にしか効果の無い最悪の一手。
未来の知識を持っている自分が考えていた事など、手に取るように分かったからこそ、今の秋斗はそれを止める為に周りを使う。
自分が敵とは、なんとも笑える……と自嘲の笑みが零れた。
難しい顔で沈黙した春蘭。その何も言わない様子に、分かってくれたか、と秋斗はほっと息を付く。霞はもう、何も聞かずに喉を潤していた。
ただ、秋蘭だけが、姉がこの後に何を言うか分かっていたようで、ふっ、と小さな息を漏らした。
「むぅ……お前が昔に戻って裏切ろうとしても、私が叩き伏せてやればいいだけではないか。仕えても仕えなくともそれは変わらんのだから、やはり華琳様に仕えるべきだろう?」
瞬間、霞が吹き出す。そのまま、器官に酒が入ったのか、霞は身体を曲げて咳き込んでいた。
やれやれと苦笑を零す秋蘭と、呆れのため息を漏らした秋斗。
波状効果で広がる影響では無く、秋斗が此処に居さえすれば問題は無いだろうと考えている春蘭。それを読み取って、秋斗はこれ以上説明する事を諦めた。
「クク、まあ、曹操殿の考えだからさ、我慢してくれ。問題が無くなったら部隊も持たせてくれるだろうし、正式に仕えろと言って来るはずだ。元譲は曹操殿を信じているんだろう?」
「当たり前だ。華琳様が私を信じてくださっているように、私も華琳様を信じている」
厳めしい顔で返事をする春蘭を見てから、やっと落ち着いた霞を確認し、微笑んで酒を飲んでいる秋蘭を最後に見た。
秋斗も酒をまた一口飲んでほうと息をつく。忠義の欠片も持てない自分の本心が読まれずに上手く丸め込めたと、内心で安堵しながら。
「その時に俺の答えをちゃんと見せるよ。それとさ、徐晃隊や黒麒麟が掲げていた想いを否定してるんじゃないのだけは分かってくれ。その証に、俺は此処にいる」
「……分かった。まあ、もし華琳様のお誘いを断っても私が叩き伏せて従わせるから問
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