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乱世の確率事象改変
新たな絆は抑止の鎖
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、誤魔化す為に苦笑を零した。

「いや、黒麒麟と鳳統ちゃんが追い詰められたって聞いて、ちょっとな」

 卑怯だとは思った。彼女達が気遣ってくれている事を利用してぼかしたのだから。
 秋蘭は表情に蔭を落とし、霞は言葉に詰まった。
 ただ……春蘭だけは違った。秋斗の逃げるような一言が気に入らなかった。

「……徐晃、今のお前に教えてやる。黒麒麟は……徐晃隊はなぁ、たった二千余りの部隊で二万近い軍勢の十面埋伏による包囲を抜けたのだ。詳細はさすがに聞いていないが、誰もが、死んでいた部隊の誰もが微笑んでいたんだ。それがどういう事か分かるか?」

 真っ直ぐ、秋斗に事実を叩きつけた。
 自分がどうして此処に立っていられるのか、何に生かされて来たのか。記憶にない事でも知っておけ、と。
 すっと目を細め、秋斗は眉を顰めた。
 分からないのが苦しい。どれだけの犠牲を払ったのか、どれだけの想いがあったのか、それを理解出来ないのがもどかしい。
 情報として与えられても、その中身にどのようなモノがあったのか分からず、ただもやもやと蟠りが増えて行く。
 そして……自分の間違いが何かを明確に理解している為に、黒麒麟に――――
 グイ、と春蘭は杯の酒を飲み干し、歯を噛みしめて秋斗を睨みつけた。

「お前が記憶を失っているのは分かっているがな……そんな顔だけはするな。まるで……黒麒麟を否定するようなそんな顔だけは絶対にするな!」

 春蘭は心底怒っていた。
 兵士を扱う彼女は将。誰かの命を使って主の願いを叶えんとするモノ。特に春蘭は、華琳への忠義を何よりも重んじているが為に、徐晃隊の想いが痛い程に分かっていた。
 だから彼女は秋斗が気に食わない。今の秋斗が過去の自分に否定の感情を向ける事が、何よりも一番苛立ちを生む。
 誇り高い者達の死を……無駄死にと断じているように見えるから。
 一触即発の様な空気に、霞はやれやれと大きなため息を一つ。

「まあ、そう噛みつかんとき。なぁ徐晃。話してくれへんか? なんであんたは華琳に仕えへんのや? 自分から華琳に押し通す事も出来るやろうに。黒麒麟に否定の感情向けるんやったら、それくらい説明せな春蘭の腹の虫は収まらんで」
「私からも頼む。華琳様の目指しているモノもその道筋も、理解しているから今も此処にいるのだろう?」

 重ねて言われて、じっと杯の酒を見据えた。後に、一気に飲み干して、熱い息を零す。
 同じように、三人も自身の杯を傾け、ただ秋斗の言葉を待った。

「曹操殿に……か」

 ぽつりと呟いた秋斗は覇王に仕えなかった理由に思考を向けていた。今の自分ではなく、前の、であったが。
 今の意識を持ってから、何度も、何度も秋斗は考えた。如何な理由があって“この世界の曹操”に従わなかったの
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