新たな絆は抑止の鎖
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ろ? ほら、はよやろやぁ!」
早く早くと急かす様子に、秋斗も、秋蘭も、春蘭でさえも苦笑を噛み殺した。
子供ばかりだ、と秋蘭は一人内心で呟き、一応まとめ役が出来そうな秋斗に目を向けるも……何か企んでいる笑みで、チラと目線を違う方向へと逸らされる。その方を追えば……やる気十分と言った春蘭の引き締まった顔。
また目を合わせて、秋蘭は秋斗に片目を瞑って合図を一つ。嬉しそうに秋斗は頷き返した。
「では! 私の今日の勝利と、新し――――」
「新しく、楽しい出会いに、乾杯っ!」
春蘭は秋斗に途中で役目を奪われ呆然とし、秋蘭と霞が楽しげに笑って杯を合わせた。
こうして、史実の魏を代表する名を持つ四人による、初めての酒宴が始まった。
秋斗と春蘭の試合は春蘭の勝利に終わった。
しかし、秋斗が華琳に跪くはずが無く、もう一度と言いだそうとした所を華琳に止められた。
華琳が客分でいいと示したのだから、春蘭にそれを覆す事など出来ない。よって……華琳はこんな事を言っていた。
「これから三日に一度、徐晃に春蘭の仕事を手伝わせるわ。徐晃も、それでいいわね?」
跪く、までは行かずとも客分故に雑用はさせられる。春蘭の仕事も捗るだろう。雑多な扱いにも文句を言わない秋斗を見てある程度呑み込み、しぶしぶではあるが春蘭はそれ以上何も言わなかった。
もちろん、華琳の狙いは言葉通り以外にもある。
秋斗が春蘭の仕事を手伝うという事は秋蘭に回っていた事務仕事が減る。さらには、春蘭にも事務関連を教えろ、と暗に伝えてもいる。秋蘭でさえ手を焼く春蘭の事務仕事の拙さを秋斗が改善させられるか測るのも忘れなかった。
まず、秋斗は断るはずも無い。それが客分、食と住、そして金銭を貰っているのだから与えられる仕事はこなすのみ。
しかして驚く事に、華琳は秋斗達の親交が深まるようにと酒も贈った。隠された意図は多々あるだろうが、悪いモノでは無いのだからと、皆は喜んで受け取った。それによって開かれたのが今回の酒宴である。
余談として一つ、一応形式張っていた為に秋斗はその時敬語で応対したのだが、華琳が去った後、春蘭と秋蘭、そして霞に「気持ち悪い」の一言を耳にグサリと突き刺さされ、さらには呼び捨てで構わないと許されている。
やっと酒にありつけて上機嫌な霞は、杯を傾けてぐびりと大きく喉を鳴らした。
「いやぁー、美味い! やっぱ身体動かした後の酒は最っ高やな!」
「そりゃあんだけ試合とか訓練とかすればな。……っ……あー、生き返る」
仕事疲れでビールを飲んだ現代人のように、秋斗も一口飲み込んでにやけ切った笑みを零した。喉を通る酒は熱く、疲れ切った身体に沁み渡っていく。
華琳が仕事に戻った後、霞は秋斗とも春蘭
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