暁 〜小説投稿サイト〜
乱世の確率事象改変
新たな絆は抑止の鎖
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るその瞳は、誰を想っての事か。霞が難しい顔をして悩んでいるが、何を感じての事か。
 彼女達が優しいからこそ分かり易い。雛里の事があるから、朔夜との対応には多々問題があるのだ。
 今の秋斗の事を気遣って何も言わないのは分かっているのだが、こういうときはやはり居辛い。

「そういえば三人とも扉を叩いた意味を知っていたのか」

 すかさず、秋蘭が言葉を上げた。場の流れをずらしてくれた事に内心でほっと一息。秋斗はそのまま口を開くも――――

「ああ、あれはノックと言ってな――」
「来客を知らせるモノなのだぞ、秋蘭。こう、コンコン、と二回とか三回するのだがな、徐州で雛里に教えて貰ったこれは中々礼儀正しくていいと、華琳様も使い始めている」

 続きを繋げ……否、奪い取って誇らしげに身振り手振りで説明する春蘭は子供のような満足げな顔であった。
 春蘭に悪気はない。ただ、わざわざ雛里の名を出したのは……彼女なりに秋斗が思い出せるようにと考えての事もある。
 なるほど、と頷いている秋蘭は、内容を頭に留めながらも春蘭のその愛らしい仕草に満足げである。
 先程まで鋭い視線を向けていたというのに、となんとも言えない顔をした秋斗を見て、堪らず、霞が噴出した。

「くくっ、なんっちゅう顔しとんねんっ! あははっ!」
「……いや、さすがに不意打ちで話を取られたからさ」
「ふん、秋蘭には私という聡明な姉がいるのだから、お前が教えなくともよい」

 沈黙。
 先ほどとは違う、生温くどうしようもなく緩いその空間に、今度は春蘭が居辛くなってしまった。
 三人が三人とも、言葉を発した春蘭を……信じられないモノを見る目で見ていた。

「な、なんだその目は……って秋蘭まで……」

 隣を見て、本気で表情を哀しみに染めてがっくりと頭を垂れた春蘭。まあまあと肩を叩き宥める秋蘭。微笑ましげに見やる他二人。
 いつまでもこうしていたいような空気である。しかし、これ以上待てるわけ無い人が一人。

「ほな、つまみも揃った事やし……飲もうや!」

 ぱあっと顔を弾けさせ、すぐさま瓶の詮を開けたのはやはり霞であった。
 なみなみと、他よりも大きな杯を満たしていく。

「だな。ほら元譲、今日の勝負はお前の勝ちなんだから気分良く飲め」

 続いて秋斗が春蘭と秋蘭の杯に注いでいく。霞は秋斗の杯に。

「むぅ、しかしお前は華琳様の部下にならなかったじゃないか」
「そう言うな姉者。華琳様が客分と言ったのだ。何かお考えがあっての事だろう。なあ、徐晃?」

 それは柔らかい探りの言葉。華琳に直接聞く事は出来ないが、秋斗から話しを聞くのならば問題は無いと示す。
 秋斗が答えに迷い始める前に、霞が杯を掲げた。

「めんどい話は飲みながらでも出来るや
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