新たな絆は抑止の鎖
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さな軋みを上げて開かれた扉。現れた月がペコリとお辞儀を一つ。その後ろでは……むすっとむくれている朔夜も倣って。
「お待たせ致しました。おつまみを、との事でしたので簡易なモノだけですが――」
「待っとったでー!」
ぴゃーっと駆けて、霞はすぐに台車の乗せてあるつまみを机に運んでいく。見る間に、三往復して。
これが神速の力か……と秋斗が冗談めかしていう声に、秋蘭は吹き出し、クスクスと笑った。
「あ……私が、秋兄様の所まで運びたかったのに……」
あっと言う間に仕事が奪われ、哀しそうに朔夜が零した。
霞の酒好きを知っている月は上品な微笑みを一つ。
「朔夜ちゃん。四人の時間を邪魔しちゃダメって言われたでしょう?」
柔らかく咎めた。
そのまま秋斗の膝の上に居座るつもりだった事を見抜かれて、また口を尖らせて不満をあらわにした朔夜は、秋斗に懇願の眼差しを向ける。
他の女と交流を深めているから嫉妬している、というのではない。
秋斗の話を聞きたかったのだ。まあ、酔った所も見てみたい、というのも少しあるようだが。
桂花が居ない為に仕事量は多く、風達と共にそれを消化している為に、最近の朔夜は秋斗とはあまり話す時間が無かった。秋斗も昼は警邏や事務仕事の手伝い、夜は店長の店や夜間巡回に行っているので余計に会えない。
その分、秋斗がどんなだったかを代わりに詠や月から教えて貰い、寝台で色々と煮詰めていた事を聞いてソレをしようと提案しても、それだけは出来ないと止められていた。雛里の場所を取るな、と暗に示されていたのも、彼女は理解している。
懇願の視線には寂しさと嫉妬が含まれている。
――早く、鳳雛が帰ってくるまでに沢山知っておかないと……追いつけません。
朔夜の嫉妬の対象は月でも無く、詠でも無く、曹操軍の他の誰かでも無く……雛里ただ一人。
彼の隣に並ぶ事が出来た存在が羨ましく、自分もそうなりたい。ずっとそれだけを願ってきたのだから……仕方のない事であった。居場所を奪いたい、とは違い、一刻も早く同列に追いつきたいのだ。
不満を見て取った秋斗は、すっと椅子から立ち上がって近付き――
「ふぇ? ぅあ……」
優しく、その頭を撫でた。
「ごめんな朔夜。近々時間を作るからその時にでもゆっくり話そうか」
「……うぅ、約束、です」
恥ずかしくてきゅむきゅむと小さな手を握りながら、朔夜はコクリと頷いた。
月がほんの少し眉を寄せたのを見て、秋斗は直ぐに手を離し、分かってるというように苦笑してまた自分の席に戻って行く。
その背を一寸見つめて、朔夜と月の二人はお辞儀をしてから扉を閉めた。
しん、と静まり返った室内の空気に、秋斗の心は少し沈む。
春蘭の視線が痛い。厳しく睨みつけ
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